第233話 絶対に蘇る鮮烈な記憶
※過激かつショッキングな描写があります。ご注意ください。
◆◆◆
「良いですか。今から、ジンのズボンを下ろします。……良いですか? 何度も確認します」
「………………ジンはそれで良いの?」
とっとっとっと。
鼓動が聴こえる。段々、速くなっていくのが分かる。汗が冷たい。身体が硬直する。
「…………一番は、エル姉ちゃんだ。任せるよ。死ぬほど恥ずかしいけど。姉ちゃんに従う。俺は、自分からは絶対動かないから」
ドクン。
鼓動の波が強くなる。ジンはもう覚悟を決めていた。ベッドに仰向けになって、顔を両手で覆って。まな板の上の鯉のよう。
今から。
私の視界に男性器が映ることになる。
キーン。
謎の音。頭の奥から。耳の内側に響く。
汗が止まらない。
「エルル。一度目を瞑ってください」
「………………」
喉が乾く。唾を飲み込もうとするけれど、カラカラで何も飲み込めない。
目を閉じる。
「深呼吸」
ルフの言いなり。
すぅ。
はぁ。
すぅー。
「…………ジン」
「……うん?」
今から私が見るのは。
「……好きよ。本心」
「…………分かってる。ありがとう」
好きな人の性器。
怖がる必要は無い。
「……私は、ジンに抱き着ける。キスもできる」
「はい」
はぁー。
すぅー。
「男性を、克服、できる筈」
「はい」
どうにか、落ち着け。
「うっ」
「エルル!?」
ドクン!
横隔膜がせり上がる。一瞬だけ、フラッシュバックしてしまった。
あの男性の。顔と臭いと。
くそ。
違うんだ。ジンは。ジンはあれとはっ。
「…………ぅ」
いつの間にか、壁までずり下がっていた。そのまましゃがみ込む。口を抑える。
深呼吸。
深呼吸。
「…………止めておくことはいつでもできます。エルルはいつでもこの部屋から出ることができます。誰も止めません。いつでも逃げられます」
「………………そうよ。その通り」
「止めておきますか?」
「………………」
ここまでしてくれて。
私が、頑張らなくては。いけないのだ。
「…………いいえ。私はジンの妻となるのよ」
「深呼吸」
すぅーっ。
「げほっ。ごほ」
「水を飲んでください」
ルフからグラスを手渡される。彼女の魔法によって出現した水。私が、彼女との旅路で、幾度となく口にした水。世界一信頼できる水。
震えていた手が、少し治まる。
「…………ぷは」
喉を鳴らす。何もかもを、飲み込む。押し込む。
「…………いいわ」
立ち上がる。
まだ、耳鳴りは止まない。平衡感覚が少し狂っている。
けど。
乗り越えるために、必要な試練。
「お願いルフ」
「分かりました。ではジン。下ろしますよ」
「…………うん」
ベルトを取る。
ズボンのボタンを外す。
そのまま、膝まで下ろす。
ぶるん。
引っ掛かる。下着が露わになる。先端が少し濡れている。
あと1枚。
ドクン。
ドクン。
ドッドッドッドッ。
「………………大き過ぎない……?」
6〜7年前の記憶を探る。何度か一緒にお風呂に入ったり、川で水浴びをしたりした。ジンの男性器は、男性器ではなかった。少なくとも、こんな――
「いきますよ。良いですね」
「…………ええ」
ルフは答えない。私は、そう応えるしかない。
この目に。
「――!」
ずるり。
まず、毛が見えて。
「あっ」
ドクン!
鮮烈に――
「待っ」
ぶるん。
蘇る。10年前の記憶。いきなりアレを出されて。グロテスクで。何かの生き物かと思うほど。色と形と。臭いと。
それを。
私の――――
「ぅ…………おぇぇええっ!!」
「エルル!?」
「――ル姉……ゃん!?」
「あな……は……いで――さい!」
「――エ……!」
「…………!」




