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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第10章:克服する心と身体
233/300

第233話 絶対に蘇る鮮烈な記憶

※過激かつショッキングな描写があります。ご注意ください。






◆◆◆






「良いですか。今から、ジンのズボンを下ろします。……良いですか? 何度も確認します」

「………………ジンはそれで良いの?」


 とっとっとっと。

 鼓動が聴こえる。段々、速くなっていくのが分かる。汗が冷たい。身体が硬直する。


「…………一番は、エル姉ちゃんだ。任せるよ。死ぬほど恥ずかしいけど。姉ちゃんに従う。俺は、自分からは絶対動かないから」


 ドクン。

 鼓動の波が強くなる。ジンはもう覚悟を決めていた。ベッドに仰向けになって、顔を両手で覆って。まな板の上の鯉のよう。


 今から。

 私の視界に男性器が映ることになる。


 キーン。

 謎の音。頭の奥から。耳の内側に響く。

 汗が止まらない。


「エルル。一度目を瞑ってください」

「………………」


 喉が乾く。唾を飲み込もうとするけれど、カラカラで何も飲み込めない。


 目を閉じる。


「深呼吸」


 ルフの言いなり。

 すぅ。

 はぁ。


 すぅー。


「…………ジン」

「……うん?」


 今から私が見るのは。


「……好きよ。本心」

「…………分かってる。ありがとう」


 好きな人の性器。

 怖がる必要は無い。


「……私は、ジンに抱き着ける。キスもできる」

「はい」


 はぁー。


 すぅー。


「男性を、克服、できる筈」

「はい」


 どうにか、落ち着け。


「うっ」

「エルル!?」


 ドクン!

 横隔膜がせり上がる。一瞬だけ、フラッシュバックしてしまった。


 あの男性の。顔と臭いと。


 くそ。

 違うんだ。ジンは。ジンはあれとはっ。


「…………ぅ」


 いつの間にか、壁までずり下がっていた。そのまましゃがみ込む。口を抑える。

 深呼吸。

 深呼吸。


「…………止めておくことはいつでもできます。エルルはいつでもこの部屋から出ることができます。誰も止めません。いつでも逃げられます」

「………………そうよ。その通り」

「止めておきますか?」

「………………」


 ここまでしてくれて。

 私が、頑張らなくては。いけないのだ。


「…………いいえ。私はジンの妻となるのよ」

「深呼吸」


 すぅーっ。


「げほっ。ごほ」

「水を飲んでください」


 ルフからグラスを手渡される。彼女の魔法によって出現した水。私が、彼女との旅路で、幾度となく口にした水。世界一信頼できる水。

 震えていた手が、少し治まる。


「…………ぷは」


 喉を鳴らす。何もかもを、飲み込む。押し込む。


「…………いいわ」


 立ち上がる。


 まだ、耳鳴りは止まない。平衡感覚が少し狂っている。

 けど。


 乗り越えるために、必要な試練。


「お願いルフ」

「分かりました。ではジン。下ろしますよ」

「…………うん」


 ベルトを取る。

 ズボンのボタンを外す。

 そのまま、膝まで下ろす。


 ぶるん。

 引っ掛かる。下着が露わになる。先端が少し濡れている。


 あと1枚。


 ドクン。

 ドクン。

 ドッドッドッドッ。


「………………大き過ぎない……?」


 6〜7年前の記憶を探る。何度か一緒にお風呂に入ったり、川で水浴びをしたりした。ジンの男性器は、()()()()()()()()()。少なくとも、こんな――


「いきますよ。良いですね」

「…………ええ」


 ルフは答えない。私は、そう応えるしかない。

 この目に。


「――!」


 ずるり。


 まず、毛が見えて。


「あっ」


 ドクン!

 鮮烈に――


「待っ」


 ぶるん。


 蘇る。10年前の記憶。いきなりアレを出されて。グロテスクで。何かの生き物かと思うほど。色と形と。臭いと。


 それを。

 私の――――


「ぅ…………おぇぇええっ!!」

「エルル!?」


「――ル姉……ゃん!?」


「あな……は……いで――さい!」


「――エ……!」


「…………!」

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