第214話 ようやく辿り着いた太古の社
キャスタールとは、キャスタリア中部大山脈付近の諸国の文明の根幹であるらしい。蒸気機関の発明まで、元々は光源や熱源として利用されていたのだ。
ほんわかと、黄と橙の灯りが幻想的で。どの家屋からも漏れている。
麓の街だからなだらかな坂道になっていて、街の入口からは全体がよく見える。
「綺麗な街ね」
「エル姉ちゃんアルニア来てずっとそれ言ってる」
「そうだったかしら」
サクサクと雪道を進む。
「あれ、ジンじゃねえか。もう帰ってきたのか」
「!」
通りすがりの男性に話し掛けられた。ジンは、笑って手を振った。
「うん。ただいま。用事が終わったから、また修行だよ」
「そっか。んでそっちの別嬪さんは……。エルフか」
「うん。俺のパーティメンバー」
ジンの紹介で、私達も名乗る。
彼は、私達がエルフだと知ってもあまり驚いたり、怪訝そうにしたりはしなかった。
他にも何度か住人に声を掛けられた。ジンはこの街に馴染んでいるようだった。そして、やはり私達はエルフでも差別的な感情を受けなかった。
「アルニアってこうなの?」
「うーん。いや、ウリスマだけかな。この街には、エルフはひとり居るから」
とのことだった。
「まあ、そもそもジンと一緒に入ればあまり差別されませんよ」
「ずっとジンに引っ付いているのも嫌よ私」
ジンの案内で、街を突っ切る。近くの小高い丘を目指しているようだ。石造りの古そうな階段に差し掛かる。その入口。階段を挟むように大きな丸い柱が立っていた。
「柱……? いえ、上で繋がっているわね」
「これは、なんですか?」
ルフも知らないようだった。明らかに、他の街やこの街の意匠とは異なる雰囲気。丸い柱は赤く塗られていて、先の方では垂直に取り付けられた梁のような柱で、扉の無い門のように上部で繋がっている。形も不思議だ。
「えっと、これは『鳥居』。大昔の宗教施設だよ。師匠はそう言ってた」
「トリイ、ね。神正教ではないのね」
「うん。アルニア自体は他のキャスタリアと同じく神正教が国教だけどね。まあ、今は師匠しか信徒は居ないみたい。よく知らないんだ。さあ登ろう」
大昔、とは。どれくらいの時代を指すのだろう。少なくとも、私がオルスで学んだニンゲン界やオルス大陸の歴史では出てこなかった。
九種紀だろうか。それとも……。
考え事をしながら登る。長い階段だけれど、今の私達にとっては苦も無く登れる。ここを走り込むのなら、良い訓練になりそうだけど。
◇◇◇
頂上に着いた。雪の積もっている平らな広場だ。ここにも、大きな鳥居があった。その奥に、建物がある。木造に見えるけれど、やはりアルニアの建築様式ではない。
「確かカナカナって言ったわね。ジンの師匠って、どういう人なの?」
「まあ、ひと言で言えば変な人かな――――」
ジンに尋ねて、応えを聞きながら振り向いた時には。
そこにあった筈のジンの頭は、私の視界から消し飛んでいた。




