表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第9章:太古から連なる愛情
214/300

第214話 ようやく辿り着いた太古の社

 キャスタールとは、キャスタリア中部大山脈付近の諸国の文明の根幹であるらしい。蒸気機関の発明まで、元々は光源や熱源として利用されていたのだ。


 ほんわかと、黄と橙の灯りが幻想的で。どの家屋からも漏れている。

 麓の街だからなだらかな坂道になっていて、街の入口からは全体がよく見える。


「綺麗な街ね」

「エル姉ちゃんアルニア来てずっとそれ言ってる」

「そうだったかしら」


 サクサクと雪道を進む。


「あれ、ジンじゃねえか。もう帰ってきたのか」

「!」


 通りすがりの男性に話し掛けられた。ジンは、笑って手を振った。


「うん。ただいま。用事が終わったから、また修行だよ」

「そっか。んでそっちの別嬪さんは……。エルフか」

「うん。俺のパーティメンバー」


 ジンの紹介で、私達も名乗る。

 彼は、私達がエルフだと知ってもあまり驚いたり、怪訝そうにしたりはしなかった。


 他にも何度か住人に声を掛けられた。ジンはこの街に馴染んでいるようだった。そして、やはり私達はエルフでも差別的な感情を受けなかった。


「アルニアってこうなの?」

「うーん。いや、ウリスマだけかな。この街には、エルフはひとり居るから」


 とのことだった。


「まあ、そもそもジンと一緒に入ればあまり差別されませんよ」

「ずっとジンに引っ付いているのも嫌よ私」


 ジンの案内で、街を突っ切る。近くの小高い丘を目指しているようだ。石造りの古そうな階段に差し掛かる。その入口。階段を挟むように大きな丸い柱が立っていた。


「柱……? いえ、上で繋がっているわね」

「これは、なんですか?」


 ルフも知らないようだった。明らかに、他の街やこの街の意匠とは異なる雰囲気。丸い柱は赤く塗られていて、先の方では垂直に取り付けられた梁のような柱で、扉の無い門のように上部で繋がっている。形も不思議だ。


「えっと、これは『鳥居』。大昔の宗教施設だよ。師匠はそう言ってた」

「トリイ、ね。神正教ではないのね」

「うん。アルニア自体は他のキャスタリアと同じく神正教が国教だけどね。まあ、今は師匠しか信徒は居ないみたい。よく知らないんだ。さあ登ろう」


 大昔、とは。どれくらいの時代を指すのだろう。少なくとも、私がオルスで学んだニンゲン界やオルス大陸の歴史では出てこなかった。

 九種紀だろうか。それとも……。


 考え事をしながら登る。長い階段だけれど、今の私達にとっては苦も無く登れる。ここを走り込むのなら、良い訓練になりそうだけど。






◇◇◇






 頂上に着いた。雪の積もっている平らな広場だ。ここにも、大きな鳥居があった。その奥に、建物がある。木造に見えるけれど、やはりアルニアの建築様式ではない。


「確かカナカナって言ったわね。ジンの師匠って、どういう人なの?」

「まあ、ひと言で言えば変な人かな――――」


 ジンに尋ねて、応えを聞きながら振り向いた時には。


 そこにあった筈のジンの頭は、私の視界から消し飛んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ