第192話 無事の再会と最初の帰還
「んじゃ、これでジンとは解散っすね」
「ああ。ありがとうリーリン。助かったよ」
「アホジンはウチが居なきゃ乗る船間違えてレドアンに向かってたっすもんね」
「そっ。それ今言うなよ……」
それから。
しばらくルフと抱き合っていて。
「リーリン。町へは来ないの?」
「んー……。ウチ、魔族っすからね。ニンゲンの町はやめとくっす。ここで休暇取って、また仕事っすよ」
「そう。分かったわ。助けに来てくれてありがとう。今度は、あなたに困ったことがあれば私が助けに行くから」
「はは。姫に助けられるってのも面白いっすね」
リーリンとも抱き合った。
「また、会いましょう」
「そうっすね。また」
◆◆◆
「……で。ルルゥを連れて来たのですね」
「ええ。ルルゥ、覚えてる?」
「勿論です。ルフ殿……いえ。ルフ様」
トヒアとキノの待つ家までの道。ルフとルルゥも、久々の再会となる。
「…………」
「…………」
ふたりは、どういう関係なんだろう。そういえばふたりが話している所は見たことが無いかもしれない。
「良かったですね」
「はい。ありがとうございます」
「?」
少し見つめ合ってから、ルフが笑い掛けて。ルルゥもはにかんだ。
◆◆◆
「おにいちゃんおかえりなさーい!」
「うおっ」
勢いよく開かれたドアから、少女が飛び出してきた。そのままジンの胸に飛び込む。
「まてお前、兄ちゃん今汚いぞ」
「あははー! くさいっ!」
ジンに抱えられて手足をバタバタさせている少女。彼と同じ黒髪。整えられ、結われたツインテール。柔らかい綿のワンピース。
「キノね。大きくなったわね」
「!」
名を呼ぶと、ぐるりと私の方へ頭を向けた。それから、ようやくジンから飛び降りた。
「だれ?」
「覚えてないか。取り敢えず中入ろう。母さんは?」
「いるよー。お母さーん!」
キノは嬉しそうに跳ねてツインテールをピコピコと揺らしながら、家の中へ入っていった。
「……さあ、俺達も入ろう。泥は後で良いよ。俺が掃除するから」
「………………」
私達も、彼らの後に続いた。
◆◆◆
「さて。取り敢えずお風呂、入っておいで。皆仲良く。洗濯物はこっち。服はいっぱいあるから。場所分かるよね、ルフちゃん」
トヒアにも再会して、一頻り喜びあった後。私達と抱き合ってドロドロになったキノとトヒアから言われた。
そりゃそうだ。
「お風呂、大きくなったわね」
「トヒア殿は計画していたようです。ジンの成長に合せて。また、私達が『増える』ことを見越して」
家の裏にある湯船が、3倍ほどの大きさになっていた。家は町の端にあって、向こうはもう崖だ。解放的なお風呂。
「エルねえちゃん! ルフねえちゃんとおにいちゃんが言ってたエルフだ!」
「あら、思い出した?」
「ぜんぜん!」
「ふふっ」
ジン以外の4人で、湯船に浸かる。キノは私の胸を揉みしだいている。
「わ、私も一緒でよろしいのでしょうか……」
「良いわよ。というか、この島で新しく家を持つお金は無いのよ? ルルゥもここに住むのよ?」
「そうなのですか?」
「ほらもっと寄って? こっち」
ルフは最初は仕事で私の護衛になっただけだけど、ルルゥは生粋のメイドだ。私が生まれた時から、私に仕えている。この島に来れば、私と彼女に身分の違いなど無いのに。
それがルルゥだ。
「そうですね。トヒア殿も拒否しない……どころか。大歓迎だと思います。まあその辺りも、後で話しましょう。今は疲れを癒やさないと」
「良かったわ。ルフも無事に帰って来られて」
「……はい。私の場合はそこまで苦労はしませんでした。アバル王国の王子が私に執心していただけで。エルルの方が、大変ですよ」
「それでも。会いたかった。ずっと、あなたを案じていたのよ」
「…………私もですよ」
ルフだ。ああルフだ。また泣きそうになった。良かった。元気だ。無事だ。
「………………」
私達の、『最初の冒険』が、終わった。




