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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第8章:約束を果たす儀式
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第189話 エルフの姫の社会的評価

【アバル王国にて拘束中の元冒険者エルフ女性、魔物退治成功により釈放】


 まず一番に、ルフのことが気掛かりだった。その見出しを見て、食い付くように読む。


「……アバル王国。詳しくないのよね」

「キャスタリア中西部の小国っす。ヒューザーズは以前ここで冒険者してた時に国軍と一悶着あったっぽいっすね」

「魔物退治、ね」

「あの辺の地方は危険な魔物が多くて、退治専門の冒険者も多いんすよ」

「では、国と冒険者は協力関係にあるのね」

「全然。王国にもお抱えのハンターが居るっす。冒険者に活躍されると困るんすよ。基本的に仲は最悪っす」


 リーリンは流石、情報屋(忍者)と言うだけあって物知りだ。


「けど実際、今のところはハンターより亜人の冒険者の方が実力は上っす。魔法使いは状況に応じて複数の魔法を使い分けるっすが、ニンゲンの武器は銃と大砲だけなんす。鱗で防がれたら手も足も出ないっすね。まあそれでも、別にニンゲンだけで倒せない訳じゃないっすけど。効率を考えると冒険者に依頼した方が良いのが、王国としては気に食わなくて」

「……そう。で、今回ヒューザーズが倒したのが」

「『マンティコア』っすね。尾に毒針を持った巨大な獅子の魔物っす。デカい癖に素早く、皮膚も分厚い。おまけに魔法を使う。まあ割りとどうしようもないクラスの魔物っす」

「……マンティコア」


 紙面にはそのマンティコアの絵も描かれていた。恐ろしい外見だ。獅子の身体に、顔は老人のようだった。それが、人の数倍も大きいのだ。


「顔は、人に似ているの?」

「そうっすね。けど、ヒト種じゃないっすよ。知能は高いっすけど、ヒトのとは別種の知能っす。コミュニケーションは取れないっすね」


 そんなマンティコアは、アバル王国で数年に渡って被害を出していたらしい。軍もハンターも頭を悩ませていた所に、ヒューザーズが解決。その恩賞で、ルフが解放されたと。


「なんにせよ良かったわ。ルフも、もう亜人狩りから追われないのね。私は…………」

「…………エルルさんは、表向きはオルスからの国外追放っすね。女王様とオルス政府とのやり取り次第で、また追われる可能性はあるっす……」

「………………そう、よね」






◆◆◆






 続いて、私の記事に移る。出てきたのは、私への評価だ。ここでは、多方面に訊いたという回答をそのまま載せているようだった。


【国の税金使ってわざわざ港から警護してたのに判決が不服だからって逃亡とかふざけんな金返せ/40代ニンゲン男性】


【辛かったと思う。性被害は一生の傷。まず心のケアをしっかりしてあげてほしい/30代エルフ女性】


【犯罪者はやっぱりどこまでいっても犯罪者。とっとと再逮捕して処刑しろ/20代ニンゲン男性】


【殺人は罪。罪は罪。事情はあるかもしれないがルールには従うべき/20代ニンゲン女性】


【ホテルが破壊されている。怪我人も出た。女王も責任を取るべき/70代エルフ男性】


【そもそも魔界とは外交で対応するためエーデルワイスの魔法的防衛力など要らない。寧ろ魔界を刺激するだけ。即刻武力を放棄すべき/60代ニンゲン男性】


【ほら見ろ。女だらけの歪な社会で育った子供など異常者にしかならない。エルフェミは責任取って全員オルスから出ていけ/30代ニンゲン男性】


【たった1回レイプされただけで被害者ぶってイキんなカス/30代エルフ男性】


【お得意の王族特権。亜人無罪。被害者ビジネス。オルスはどこまでも亜人種に優しくオルス国民に厳しい利敵国家で利敵政府。首相は早く辞任しろ/20代ニンゲン男性】


【どうして性暴力被害者に寄り添えないのか。世界一遅れているジェンダー差別国家オルス/60代エルフ女性】


【傍聴席で見たけど普通に美人で笑った。良いよなエルフってだけで美形が約束された種族は。これはレイプされても仕方無い。寧ろ誘っていた可能性もある。所詮エルフは元娼婦/50代ニンゲン男性】






◆◆◆






「…………今日はもう休むわね」

「えっ。あ……。お休みっす」

「姫様」


 疲れた。文字を読むだけで。


 とにかく。

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