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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第8章:約束を果たす儀式
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第181話 無自覚な魔人の手先

 女性だから味方かと思ったけど、やっぱり亜人は魔物ね。

 亜人メスさんオス冒険者に媚び媚びじゃんダサ。

 ほんと無理。ああいうのほんと消えてくれないかな。

 そもそも姫って時点で特権階級だからね。護衛付きで安全に旅して冒険者だーって。カス過ぎ。何調子乗ってんのって感じ。

 あー早くシャワー浴びたい。なんか臭いしここ。エルフの臭いする。生理的に無理。

 耳長ヒトモドキの癖に何を女性側みたいなスタンスでホモソーシャル肯定してんだっつの。あーマジでウザい。






◆◆◆






「………………」

「エルルさん?」


 多分。

 彼女達は私がエルフであるから、聴覚に優れていることを知っているだろう。だから、これらは私に聞かせるつもりの中傷なのだ。


 疲れた。

 その場にしゃがみ込んでしまった。


「エル姉ちゃん? どうした」

「…………大丈夫よ。ちょっと、疲れただけ。ふぅ……」


 長い息が出る。

 初めて、まともに対面して会話をしたかもしれない。私を姫と崇めないフェミニストと。ニンゲンの女性の、フェミニストと。


「…………なんか言ってるんすね。今からでも」

「駄目、よ。リーリン。ごめんさいね。あなたを巻き込んでしまって」

「……もう良いっすよウチのことなんて」


 背に手を置いてくれた。暖かい。

 もし今、ルフが居たら。

 泣き出して、縋りついてしまっていたかもしれない。

 完全に、敵対した。彼女達は私を嫌いになった。


 それがたまらなく辛い。怖い。悲しい。


「…………『あれ』がミサンドリスト。反出生デーモンの手先……」

「えっ。なんすかそれ?」


 オルスは、冒険者もフェミニストが多いのだろうか。彼女達の考え方は少数派なのか、多数派なのか。


「…………ふぅ。いえ、大丈夫。行きましょう」

「…………」


 そして。


 私達は今から、そのフェミニストの総本山へ向かっているのだ。

 何かの冗談であって欲しいけれど、そうもいかない。


「……いや待って。『耳長ヒトモドキ』って相当酷くないかしら。よくそんな言葉を思い付けるわね」

「エルルさん。もう無視するっす。ちょっと休憩しましょ。ね?」


 なんだったのだ。これは。

 私達は、結果的に彼女達をエルフの手から助けた……と、思うのだけど。


 嫌な気持ちだ。






◆◆◆






 それから。

 追手を警戒しつつスピードを上げていく。ジンが本当に逞しくて、思ったよりも速度は出た。


 1ヶ月後に、ここまでやってきた。


 巨大森に程近い都市。

 イール市が見えた。


「街へ入りたいけれど、やはり無理そうね」

「ルフ姉ちゃんの、母ちゃんだっけ」

「そう。ルーフェがここで亜人向けのカウンセラーをしているわ。もう一度会いたかったけれど、難しいわね」


 街へは入らない。ニンゲンのニュースは早い。もう伝わっているだろう。早く巨大森へ行かなければ。あそこへ入れればもう、オルスのニンゲンは手出しできない筈。


「リーリン。どう?」

「……んー……。案の定、っすね」


 偵察に行っていたリーリンが戻ってくる。彼女の遠視の魔法はまだ私には使えない。


「巨大森周辺は全部兵隊が囲んでるっす。人っ子ひとり通れないっすよ」

「魔法使いは?」

「見た感じ居ないっす。国際警察はやっぱりこの件に絡んでないっすね」

「……そう。エルドレッドも律儀ね」

「あと、全員『銃』で武装してるっす。下手な魔法より危険っすよ」

「…………分かったわ。少し、考えてみる」

「了解っす。ウチも休憩貰うっす」


 見晴らしの良さそうな高台があった。そこへ登り、巨大森の方角を見る。

 巨大樹の宮殿がある。あそこに母が居る。


「………………」


 フェミニストの、巣窟に。

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