表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第7章:最強の狩人との決着
169/300

第169話 母と魔界との距離

 形式だけの裁判を終えて、私の周りの役人達はすぐに刑務所へ向かう準備に取り掛かった。


「急いでいるのね」

「!」


 部屋のドアを開けるとロン氏が見えたので声を掛けた。彼も頻繁にホテルにやってきているようだ。


「エルル姫……。申し訳ありませんな。余計な期待をさせてしまい。……私が港へ出向いている間に判決は変わったようで」

「良いわよ別にそれは。……東オルスのイシア女子刑務所と言ったかしら。そこに、何かあるのね」

「…………はい。事情は私も先程把握しました。そこでのエルル姫の刑務が、『国防』に関わるそうで」

「……は?」

「申し訳ありませんな。これにて失礼いたします」


 そう言ってまた、彼は慌ててどこかへ去っていった。


「国防? オルスを攻める国があって、例えば私の魔法でそれを解決しようと……?」


 部屋に戻り、ソファに座る。ルルゥがお茶を淹れてくれる。

 マーズ茶だ。今はもう何とも思わないけれど。私が強姦された時の、印象の作物。ルフは意識的にこれを避けてくれていた。ルルゥは知らないのだ。彼女は悪くない。マーズの実はオルスの特産品なのだから。


「魔界だろ。オルス東端の海は魔海に繋がってる」

「!」


 部屋には何故かエルドレッドが居た。彼本当に、デリカシーの欠片も無いのだけど。


「……人魔境界線の話? 確か、オルスの防衛は母の任務だったわよね」

「違うな。正確には『エーデルワイス一族』だ。人魔大戦末期に古い盟約がある。キャスタリア大陸のレイゼンガルド一族と国際国境騎士団。レドアン大陸のバルバロス一族とウラクト軍事同盟軍。ミーグ大陸……はちょっと事情が違うが。んで、オルス大陸のエーデルワイスとオルス自警軍。そこは最前線なんだよ。大戦が終わって境界線が引かれて、500年しか経ってねえ。『そろそろまた』なんて噂が出てる」

「!」

「まあ、あんたを急いで捕まえる決定を下すくらいには、現地で『何か』動きがあったんだろうな」

「そんな……」


 魔界。ニンゲン界と魔界は、『近い』。魔族と関わりが殆ど無いのは、お互いに近付かないだけだ。魔物を無視すれば、オルスから例えば船を進めればひと月も経たずに魔界へ到達する。

 そこからいつ、魔族が軍を率いてニンゲン界へ攻めてくるか分からない。そんな緊張状態が500年続いている。

 その境界の要として、大魔法使いやニンゲンの大軍勢が各境界に配置されている。


 エーデルワイスに、その『義務』があるのだとしたら。


 私は。


「……実際、どうなんだ?」

「えっ?」


 エルドレッドが、私を見た。


「冒険者ギルドは確か、『魔界入り』って基準があるんだろ。エルル、あんたは『それ』なのか? 魔族相手に、『生存』できるのか?」

「…………」


 私は。

 何故、母に魔法を教わって来なかったのだろう。


「……魔界入りの基準に満たしてはいないわ。そもそも、女性だけのパーティにはその資格が無いの。それに、あなたに敗けたばかりだし。魔術を使えるようになったと言っても、この程度よ」


 私は弱い。もし強ければ、好きにできたはずだ。誰にも強制されずに、好きにどこでも冒険ができた筈。だけど、捕まり、ルフと離れ離れになり、こんなところまで連れて来られている。

 私は弱い。

 今はまだ。


「姫様……」

「…………」


 その回答を聞いて。

 エルドレッドはどうしてか、黙って部屋を出ていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ