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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第7章:最強の狩人との決着
161/300

第161話 やるせなく終わる旅

 エルフの姫、レドアン大陸にて確保。


 そのニュースは全世界に知れ渡ることとなる。ニンゲンのニュースが拡がるのは風より速い。


 今、オルスではどのように報道されているのか。私はどうなってしまうのか。


 全く分からない。


「エルル」

「……ルフ」


 1ヶ月の療養の後。

 最低限、杖を使って歩けるようになった私は、今日レドアンを出発する。ノルンはリハビリ期間が足りないと怒っていたけど、オルスからの要請がしつこいらしい。


「またね。生きてさえいれば、いつか会えると思うから」

「エルル」


 私達は多くを語らなかった。分かっていたからだ。

 このニュースはエデンにも伝わっている筈。ならルフは、元ヒューザーズの皆が助けてくれる筈。

 私は違う。アーテルフェイスとオルスはゲンの時に揉めている。今度は全面戦争になってもおかしくない。

 あの『賢者』である大長老(ルエフ)が、そんな愚かな選択をすることは無い。彼には既に、新たな子供が産まれている。私が死んでも、血は途絶えない。寧ろ、ニンゲンの血が混じった私の方が、邪魔者……かもしれない。

 私に助けは来ない。


「最後に抱き締めて良いかしら」

「……どうぞ」


 私達の旅は終わった。






◇◇◇






 船。

 客船ではなく、国際警察の専用機。魔法で動く小型の高速船だという。マストも帆も無い。原理は分からないけれど。


 個室を与えられた。魔封具もされていない。

 けれど、部屋の外は常に警官隊の人が3人程度巡回している。一番奥の部屋だから、袋の鼠でもある。


「……まるで要人警護ね」

「まるでじゃねえ。そのものだ。脱走や攻撃の意思が無い限り。俺達に従う限りは自由だ」

「…………不自由に他ならないけれど。私が逆らえば私とルフが殺されるのでしょう? それくらい分かっているわ」

「……まあな。俺としてもそれは望まない。生活や介助の為の多少の魔法は認められてるから、それで我慢してくれ」

「………………随分優しいのね」


 エルドレッドは本当にオルスまで付いてくるみたいだ。

 ……この、安心感。彼が私を守るという……事実。


 不快だ。


「エルフ種族の姫だからな。何かあったら呼べ」

「…………」


 今更。

 あなたにエルフの姫と扱われても、困る。


 彼が退室してから、ベッドに座る。

 ころりと倒れる。


 ……ルフの居ない生活が始まる。


「エルル! 入るわよ!」

「ノルン……」


 ノルンがノックをしながらドアを開けた。私はなんとか上体を起こして、座り直す。


「次の生理は1週間後くらいだったわね? エルドに言っておかないと」

「…………彼、分かるの?」

「エルドの元妻はニンゲンよ」

「えっ」


 ノルンは私に付くことになった。まだ完治していないのと、エルゲンのフォローがルフ以外では彼女にしかできないからだ。魔界には、私のようなエルゲンの子孫は一定数居るらしい。

 少し、希望のある話だ。


「ああ、病気で亡くなったから今は独身よ。最強の狩人。皆狙ってるわね。『強い』というのは問答無用で本能に働きかける『モテ』要素だもの」

「…………そう」

「確か、故郷での幼馴染みだったらしいわ。最初の女って訳。だから忘れられなくて再婚する気ゼロ」

「…………」


 別に。

 エルドレッドの私生活に興味がある訳じゃない。けれど、知っておいて悪いことは無い。


「……惚れてる訳じゃないのね」

「それは無い……とは、言い切れないわね。あなたの言う通り、有無を言わさない絶対的な『強さ』はそれだけで他の要素がどうでもよくなるくらいに魅力的だもの」

「あら、あっさり認めるのね。他に良い人居るんだ」

「ええ。既に決めたオスが居るわ。私にとっては、その彼は別に強くなくたって良いの」


 ジン。


 あなたは今、どこで何をしてるのかしら。

 すぐ会えると思っていたから、尚更、やるせない。


 5年の約束、果たせそうに無いわ。

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