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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第7章:最強の狩人との決着
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第159話 終わった後の会話の機会

「……護、衛?」

「俺達は国際機関だ。オルスの要請で動いてる。だから罪状の詳細は知らねえのさ。このままオルスまで護送することになってる。その間。そんで、オルスに着いてからの期間。まあ恐らく裁判と実刑だろうが……その間。誰にも、お前達を傷付けさせねえよ。ああ、ルフは別だ。お前の罪状と依頼はヒューザーズ時代、キャスタリアのアバル王国からだな。そこでも恐らく裁判だが、そっちにはワフィともうひとり俺の同僚を付ける。筋は通すぜ」

「………………」


 訊く。

 その間、エルドレッドと目を合せ続ける。


 彼が、私達を騙すつもりが無いことはもう分かっていた。


「……エルル」

「………………」


 上を見る。空を。小屋の天井は、エルドレッドが豪快に吹き飛ばした。


 …………敗けだ。


「……分かったわ。投降、する」

「ああ。賢明な判断だ」


 こんなことで、賢いと言われたく無かった。


 私達は敗けた。


「ルフ……」


 どさり。

 私が宣言すると同時に、ルフが倒れた。剣は手から離れて落ちた。

 呼び掛けに応えが無い。気絶したのだ。


「ちょっと待てノルン」

「駄目よ! 何のためにワタシを連れてきたの!? 治療するわ! 担架を早く!」


 それから。


「…………」


 あまり、覚えていない。私も気を張っていたのだ。すぐに意識を手放したんだと思う。






◇◇◇






 私達は国際警察機関亜人犯罪対策部、捜査官エルドレッド・ギドーと捜査官ワフィ・フォルジュロンによって逮捕された。


 ケルス国でそのまま、ノルン率いる医療チームによる集中治療の後、それぞれ依頼国に移送されることになった。ルフは、キャスタリア大陸アバル王国へ。私は、オルス大陸オルスへ。


 ルフの罪状は暴行と窃盗、器物損壊、その他多数。

 私の罪状は殺人と器物損壊、魔法使用、脱走。


「リハビリが要るわよ。最低でも2ヶ月!」

「………………」


 ミノタウロスのノルンは、凄まじい技術で私達を治療していった。縫合と輸血の魔術は私には真似できそうにない。これは、4年前にウラクトで会ったドラゴニュート、ユラスの魔術に似た感覚がした。魔界の医療魔術なのだ。


「エルド! まだ駄目だって!」

「もう目ぇ覚ましたんだろ」

「ちょっと! ……もう!」


 清潔な部屋。亜人狩り達の組織は人材も資金も潤沢であるようだ。ホテルひとつ、貸し切っているらしい。それも、高級な。


「…………エルドレッド」

「よう。気分はどうだ」


 ベッドをふたつ並べて、私とルフが使っている。一緒に治療した方が効率が良いらしいのだ。それと、私達が気を失っても手を繋いでいたから、そのままにしておいてくれていたのだとか。


 今はルフは眠っている。彼女の右手を、布団の中で握る。


 エルドレッドが部屋に入ってきた。


「……良くは無いわよ。絶望してる」

「そうか」

「…………?」


 彼は椅子を引いて、どかりと座った。重そうな音だ。体重は、私の3倍はありそうだ。


「……話を。してぇと思った」

「…………あなたの仲間を殺したこと?」


 そう言うと、彼は苦笑した。


「違えよ。アレはもう良い。フルエートの家族は俺が守ってる。お前が心配することじゃねえ」

「……そう。あの3人のことは?」

「ああ。亜人狩りってのは公式機関の非公式部署だ。候補生も危険性を分かって入隊してる。アレもお前達の罪にはならねえ」

「そう……」

「あそこまでして、お前が捕まりたくなかった理由だよ。何故だ? 投獄されても精々数年か十数年だろ。エルフとしちゃ、大した問題にならねえ年数だ」

「…………」


 私も。


「……あなたはどうして、私を捕まえたの? 殺すのではなく」

「…………はっ。そんなことか」


 私も、話してみたかった。

 どうして、ニンゲンの言いなりになって働いているのか。ワフィには以前訊いたけれど。彼も同じ理由とは限らない。


 殺し合う仲だった私達が、奇しくも対話の機会を得た。

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