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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第6章:魔の道を往く姫君
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第147話 会話による真の魔法交換会

「『ワフィ・フォルジュロン』とは、聞く限りレドアンのドワーフではありませんわね。たとえニンゲンの国で生まれ育ったとしても、髭を剃るドワーフはこの大陸にはおりませんわ」


 髭。ドワーフの特徴だ。男女共に子供の頃から生えるらしい。勿論フーナにも立派に蓄えられている。


「随分、大きく出るわね」

「勿論ですわ。ドワーフの髭は、誇り! 特にこの地方では、先祖の魔力が宿ると言い伝えられておりますの。それを剃るなど。正気の沙汰ではありませんわね」


 言いながら、さらりと撫でる。髪と同じで、赤茶色の髭。


「……そんなに大事なものを、焦がしてしまったわね」

「それはそれですわ。試し合いでしたし。また伸ばすだけですわよ。魔力だって快復するでしょう?」

「……なるほど」


 魔力が宿る。魔臓(エーテル)とは別の器官ということだろうか。


「まあ、亜人狩りになったということはニンゲンに尻尾を振ったということ。ドワーフの誇りなど、とうに捨てているのでしょうね」


 やはり亜人狩りは、亜人達には良く思われていないらしい。これは世界中どこでもそうなのだろうか。

 ニンゲンと亜人の対立構造は、世界中。


「基本は、土の魔法と探知魔法を訓練すると考えて良いのね」

「そうですわね。それが基本ですわ。わたくしの氷魔法はわたくしの努力の賜物ですわよ。けれど、お話を聞く限りは、気を付けるべきはそのワフィでは無いのではなくて?」

「…………ええそうね。一番の問題は、エルドレッド――オスのエルフが、ドワーフの探知能力を加えて運用されるということ」


 ワフィは、彼自体が戦うという姿勢は見せなかった。そんな言葉をエルドレッドに対して発していた。それ自体がブラフの可能性もあるけれど、あの緊急時だ。信憑性は高いと思っている。


「ふむ。オスとの戦闘シミュレーションなら、同族はやりやすいですわね」

「そうなの?」

「だって、()()()()()()()()()()()()()()()()と考えるだけですもの。異種族よりはやりやすいですわ」

「…………」

「あなたなら、どうやって『超エルルさん』を倒しますの? と、そういうことですわ」

「……! なるほど」


 私より大きな体躯。強い肉体。長い手足。多い魔力。強い魔法。

 そんな人を、倒す手段を考える。


「それと。策を練るのも勿論ですが、自力の成長も重要ですわよ」

「それは、勿論そうね」

「ですから。ドワーフの魔法。全て手取り足取り教えて差し上げますわぁ」

「…………」


 フーナが、恍惚の表情になった。ああ、魔法を撃ちたくてたまらないのだ。

 魔法愛好家(マジック・マニア)ではなく、魔法中毒者(マジック・ジャンキー)ではないだろうか。


「……あの、射撃(シュート)魔術。あの原理を知りたいわ」

「ああ、魔力圧縮と指向性照射による射出の急加速ですわ。大丈夫。それもお教えいたしますわよ。その代わり、あの消える魔法、教えてくださいましね」

「……ええ。あれは自然体時の魔力放出を極度に抑えて体内と体表近くで滞留させているのよ。それが魔力ステルス。消えるのは、光の屈折ね。要領は水浸し(アクアドロウン)とほぼ同じで、あの時私は――」


 …………ああ。


 こういうのが、魔法交換会、というのではないだろうか。


 どうして戦ったのだろう。


「素晴らしいですわ! ちょ、試してきても良くてっ!?」

「……え、ええ。私も明日には快復すると思うから、実際に色々とやってみましょう」

「それと風魔法ですわよ! お約束ですわよ!?」

「も、勿論よ。私も全てを教えるわ。ねえルフ?」

「はい。……まあ、適性があるかどうかはまた別の話ですけれど」


 魔法の話をすると、目をキラキラとさせるフーナ。自分の知らない魔力の使い方を知って、さらに興奮する彼女。


「ふっ。ふふふっ。ふふふふふ……。素晴らしいですわぁ……。ニンゲンの商人なんかと比べて、何倍もの、ふふ、わたくしの知らなかった魔法の知識が……!」


 私も、新しい土地へ行って、知らなかったことを知る時。ルフに、こんな表情を見せているのだろうか。

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