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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第5章:誇り高き戦士達
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第104話 異種族恋愛の遥かな障害

 エルフは本来不老長寿だという。

 そのエルフが死ぬ為に必要なストレスの量は個人差があるけれど、決まっており。

 それを超えると死ぬ。


 ストレスへの耐性はエルフよりニンゲンの方が強いけれど、ニンゲンは他の原因ですぐに死ぬ。


 エルフとニンゲンのハーフである私の寿命は、果たしてどれくらいなのか。


「エルルさん。このまま森へ帰って、静かに暮らすことが一番エルルさんの長生きに繋がるよ」

「それは分かっているわ」

「…………あくまで冒険か」

「ええ。あとどれだけ冒険していられるか。それが知りたいのよ」

「……ふむ」


 ルフは普通のエルフだから、それに当てはまる。ジンも普通のニンゲンだから、基準は判明している。

 私は。

 ジンより長生きできるのか。それとも誰よりも早く死ぬのか。


「分からないね」

「えっ……」


 モークス先生は、肩を竦めた。


「何しろ前例が無い。亜人とニンゲンのハーフはすぐに死んでしまうことは知っているね」

「ええ。最長でも3ヶ月ほどで、と」

「その原因は、魔力侵蝕だ。体内で正常に作られた魔力が、基本的に身体に害を及ぼすという矛盾。エルルさんも例外じゃない」

「……なら私は」

「才能だね」

「!」

「魔力をコントロールする技術が高い。恐らく生まれつき、感覚で分かっていたんだろう。だから、死ななかった」

「…………!」


 母だ。

 私の母が、大魔法使い、エルフの賢者である、女王エルフィナ・エーデルワイスだから。退いてはエルフの王、大長老ルエフ・アーテルフェイスの直系だから。

 それを受け継いだからだ。


「産まれて間もない赤ん坊が、自身の魔力をコントロールする。…………才能とか奇跡としか言えないな」

「………………じゃあ」

「うん?」


 ここで。

 私は自分のことより、気になったことができた。

 そうだ。どうするのか。そもそも。


「……私は、子供を、産めないのかしら」

「…………」


 私は奇跡の存在で、異例尽くしの存在。まだまだ分からないことだらけ。

 もう16歳なのに、思春期が来ていない。月経は毎月来るのに、私は未だに『エロい』ということを理解できない。男性を見ても性的興奮というのをしない。分からない。

 けど。

 私はいずれ産むつもりだ。それは昔から、あのクレイドリを見てから考えていた。いずれ、オスと出会って。恋に落ちて。子を授かると。産むと。

 メスとして。メスを全うしたいと。


「……意中の相手が?」

「………………」

「ああ、いや、すまない。プライベートなことだったね。ふむ。全く不可能とまでは言わない。けれど、エルルさんの例を前例とすなら。……言いにくいけど、言っておかなくちゃな」


 私達は結婚するつもりだ。子も当然欲しいと思っている。特にルフが望んでいる。


「エルルさんと亜人男性との間なら、エルルさんが産まれてきたことと同じだけの奇跡が必要だ」

「!!」


 私の人生に。私達の運命に。


「そして、エルルさんがニンゲン男性との間に子を授かりたいなら。エルルさんの時よりも遥かに大きな奇跡が必要だよ」


 どれだけの障害があるのだろう。


「さらに言えば、産まれてからが問題だ。魔力侵蝕で死なない保障なんて無いんだ。そこを乗り越えられるかどうかは、誰にも分からないんだ」


 ジン。

 私はできるならあなたと恋仲になりたいし、あなたの子を産みたいのに。ルフにも。あなたの子を産んで欲しいのに。

 今更あなた以外の男性は考えられないのに。

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