フードを被った彼女を見つけて2
王都から離れた街『ミナスギ』。ただ離れているからといって廃れた街ではない。のどかで平和な街だ。
ここに来た理由を言えと言われても大した理由は出てこない。何せ目的なんてない旅をしているからだ。強いて言うなら少しゆっくりしたいなと思ったからぐらいだろう。
(道中であんな事故に巻き込まれるとは思わなかったけど……)
まあ愚痴をこぼしても仕方ない。まずは宿を取ることが優先だ。近くに宿屋はないものか。
「あっ……」
そう考えていると噴水がある広場に出た。ここにいる人に聞いたら宿屋くらい教えてくれるだろう。しかし私の目を引いたのはそんな事ではなく、謎の人だかりだ。
少し近づいてみる。
「まさかアリス王女が行方不明だなんてな」
「心配よねー」
「もしかして攫われたのかも」
「おいおい、変なこと言うなよ!」
口々にそう呟く。どうやら謎の人だかりは広場の掲示板を見ていたもののようだ。話を聞く限りだと、王女が行方不明になったという話らしい。
人だかりをすり抜け、掲示板に張り出された紙を見る。内容はみんなが言う通り王女が行方不明になっているという内容。一週間前から行方を眩ませており、現在王国側が捜索中。見かけた者がいればすぐに連絡してほしいというものだ。
それと同時に張り出された王女の似顔絵。金髪の長い髪で身長は私と同じくらいで160センチ前後ほどらしい。そういえば歳は私の一つ上の18だったか。
(まあ、この街には当分来ないだろうけどな……)
なんせこの街『ミナスギ』は王都からは結構離れている。一週間でたどり着くのは難しいだろう。
私には関係ない。そんな事より宿を探さねば。そう思って私は人だかりを離れた。
「うん……?」
その直後、私の視界には裏路地に消える人影を見た。紺色のローブを羽織り、フードをかぶっていたため顔は全く見えなかったが、身長は私と同じくらい。
(まさかな……)
そう思いながら宿を探そうと視線を逸らすが、気になってしまうのも事実だ。さっきの張り紙を見てしまっては仕方がない。
勘違いを祈りつつ、そして悪い気持ちを抑えながら、私はその裏路地へ足を向けた。