フードを被った彼女を見つけて1
「さっきは助かったよ姉ちゃん!ありがとな!」
荷馬車を運転していたおじさんが笑いながらそう言った。
「護衛も兼ねて乗せてもらってたんだし、気にしなくていいよ。こっちはタダで乗せてもらったわけだしね」
「そりゃあんなバケモノ現れたら運賃もタダになるさ。姉ちゃんがいなかったら今頃死んでたぜ。むしろ金貨を上げたいくらいだよ!」
「大げさだよ」
と謙遜はしてみたが、実際は危なかった。あんな大きな魔物が出てくるとは思わなかった。高火力の一撃が出せる人間がいなかったら今頃全滅だっただろう。
元々強い魔物もいない場所を移動、そして護衛する簡単なものだった。本来ならお金を払って移動するものだったのだが、この展開はおじさんも全く予想していなかっただろう。払うはずの賃金がタダになるのも頷ける。あのレベルの魔物はギルドに討伐依頼をして、報酬を貰うほどのものだ。
「そういえば姉ちゃんはこの街に何しに来たんだ?」
「特に目的はないよ。フラっと寄っただけ」
「そうか……。しかし姉ちゃん一体何者なんだ?俺はてっきり王国の騎士様かと思ったぜ」
「本当に大げさだな」
「いや本気で思ったぜ!で、実際のところどうなんだよ」
どうと言われても別に名乗るほどの者でもない。ただ世界を一人で自由気ままに旅しているだけだ。王国の騎士なんてものになった覚えもなるつもりもない。まあ、王国の騎士と間違えられるほどの強さだったと思えば嬉しい限りだが。
困った私は少し考え、とりあえずこう答えた。
「まあ、しがない旅人ってとこかな」




