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ミーナ・ファロン物語  作者: オサ
19歳から20歳への話
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66 神託

66 神託


神様はいるとは思うわよ。

ああ、唯一神ヴェグラを信じている訳ではないわ。ヴェグラという神はいるかもしれないけど、他の神様もいるんじゃないかって考えているの。

魔獣という存在は、当たり前に思われているけど、人間とも他の動物とも違うわ。何かを食べる訳ではないのに、魔石を外さない限り生き続けている。

どう考えても、特別な存在として、誰かが生み出した存在にしか私には思えないのよ。人間ではなくて、魔獣を作り出せる存在がいると考えると、それを神と呼ぶのではないの。

ヴェグラが魔獣を作ったかもしれないけど、ヴェグラ教の教義では、魔獣は神でも倒すことができない悪魔だとされているわ。唯一神で、創造神であるなら、そんなの可笑しいでしょ。自分が作り出した存在を倒せないなんて。

神の試練?

神がどうして、人間を苦しめるためだけの存在を大地に放つのよ。意味がないでしょ。

神の意思は誰にも分からないって、それはそうよ。誰もヴェグラ神に会った人間なんていないのだから。

要するに、ヴェグラ神は、人間が作り上げた存在なのよ。本当にいたのかもしれないけど、神の言葉を偽って、人々に教義なる物を広めたのは、教会の主である歴代の教皇なのよ。教皇たちは自分たちの利益や権限を求めて、教義を広めて、ヴェグラ教という宗教を作ったのよ。

フェレール国では天使、ドミニオン国では精霊と、神の使いの数も種類も異なるわ。これは、当時の教皇が勝手に決めた証でもあるわ。唯一神ヴェグラという名前以外、確かなものは何も存在しないのよ。

そんな不確かなものを信じても救われないわ。

現に、イシュア国は魔獣が闊歩する神に見捨てられた大地のはずだけど、国が豊かになっている大きな要因に、魔獣から取り出した魔石がある以上、その教義も虚偽だと言い切れるわ。

だから、イシュア国の誕生と共にヴェグラ教は衰退したのだけどね。


再びヴェグラ教が力を持った訳ではないわ。イシュア国の魔獣討伐と共に絶対的な権威は失われたけれども、2つの国に根付いた習慣として、ヴェグラ教は一定の権威を持っていたのよ。

その権威を上手に利用する人間が現れて、ヴェグラ教が復興したように、上手に見せかけただけなのよ。

宗教は、人間の欲望みたいな感情を操る事ができる力でもあるから、この世界からなくなる事はないのよ。上手に扱っていくしかないわ。私達人間は、人間から生まれたのに、神と言う人間が操作できないと思われる存在と、この先ずっと付き合っていくしかないのよ。



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