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ミーナ・ファロン物語  作者: オサ
9歳頃からの話
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34 貴族

34 貴族


 イシュア国の貴族は、フェレール国とドミニオン国とは確かに違うけれど。それは、貴族と庶民の間の差が少ないからよ。

イシュア国の貴族達が寛大な人が多いという訳ではなくて、国が置かれている環境が違うのよ。それぞれの国の事情に応じて、貴族の在り方が違うの。

 歴史の授業みたいになってしまうけど。


 イシュア国は、最も歴史の浅い国で、フェレール国の最下層の人間が移住して始まった国よ。

言うまでもなく、魔獣が跋扈する土地で、フェレール国やドミニオン国では、死刑の代わりに、地獄送りと称する追放刑を行う土地でもあったから、移住と言う表現は正しくないわね。

何らかの理由でフェレール国から追放処分を受けた一族が、武勇に優れた人間を先頭に魔獣を駆逐しながら可住地域を広げていったのだから、開拓者というのが正しいわね。

この魔獣の巣が点在する大地を開拓するにあたり、魔獣討伐が必須である以上、魔獣討伐した強者が、国の指導者になり、貴族階級を作る。武功を上げた人間が貴族になると言うのは、3つの国とも同じだけれど、イシュア国だけは、貴族であり続けるために試練を乗り越え続ける必要があるわ。

魔獣の巣は一度討伐すれば終わりではなく、毎日魔獣を産み続けるのだから、イシュア国の貴族は、毎日魔獣討伐をしなければならないし、子孫たちが貴族階級を維持するためには、強者であり続けなければならない。

魔獣討伐ができなくなった一族が貴族籍を失う事は、イシュア国では普通の事ではないわ。魔獣討伐をしない貴族もいるから。ただし、魔獣の巣を管理する資格を失うから、莫大な財産を失う事になるわ。魔獣の額に付いている魔石には価値があるから。そして、イシュア国の貴族の考え方を決めているのは、庶民の中で武力に優れた人間がいれば、すぐに騎士爵を受けて、貴族の仲間入りを果たすことよ。要するに、武力があれば、誰でも貴族になれるの。全ての国民が貴族候補だと言えるわ。

古き貴族の血が絶えて、新しき庶民の血が貴族の血に加わり続けるのが、イシュア国の貴族の定めであって、貴族と庶民の間にある制度上の差は、武力で簡単に覆すことができるの。


 フェレール国やドミニオン国であれば、自分の地位を奪いそうな庶民を迫害する事はできるけど、イシュア国ではそれはできないわ。優れた庶民を排除したら、魔獣に勝てなくなってしまう。勝てなくなれば、自分の領地で生活できなくなってしまう。

 だから、イシュア国の貴族は、庶民を大切にする傾向が強い。それは、心優しい人間が多い訳ではなくて、生き残るための最善の選択をしているだけなのよ。

 私が褒め称えられるのは、武勲に優れたからであって、人格が優れている訳ではないのよ。まあ、それだと、お話にならないから、私は心優しい女傑という事になるのだけれどね。


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