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ミーナ・ファロン物語  作者: オサ
23歳の話
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96 王家

96 王家


ドミニオン国の王家アイヒベルガーは、1000年程前にフェレール国の貴族だったと言われているけど、その辺は誰にも分からないわね。王家の歴史書には何も書いていないわ。書いていないというか、後世に残さなかったというのであれば、あまり褒められたような出自ではなかったと思う。

フェレール国から逃げ出した犯罪者集団の末裔が、王家であるという俗説が存在しているけど、案外それが正しいのかもしれないわね。

そんなに気にする必要はないと思うわ。1000年も前の事実がどうであっても、今の王家の権威には変化はないのだから。どうでもいい事よ。


 そもそも1000年前から、ドミニオン国は統一国家だった訳ではないのよ。一都市から始まって、100年後には複数の都市が作られていて、次の100年間で、フェレール国からの移民で人口が10倍に、都市の数が45に増えたの。

 この時のアイヒベルガー家は、複数都市の盟主と言う立場であって、統一国家の国王と言えるような存在ではなかったわ。

この時期、フェレール国との道が大地震による断層で絶たれて、両国はそれ以降直接交流する事はなくなったのよ。この断絶によって、ドミニオン国のヴェグラ教は、フェレール国から独立して、精霊主義とも呼ばれる5精霊を祀る宗教へと移行するのよ。もちろん、主神ヴェグラの地位は変わらないけどね。ヴェグラ教教会勢力は、都市間の争いを調停する組織として、各都市からの庇護を受けると同時に、政治的勢力に変質していくわ。

国内での紛争は勿論あったけど、大戦争は発生しなかったの。比較的平穏な時代が続いたのよ。その中で、最初に作られた都市の支配者であるアイヒベルガー家は、ドミニオン国王を名乗るようになるわ。理由は調停者である教会勢力が分裂を始めたからよ。

5精霊のそれぞれを祀る派閥が、ヴェグラ教の主導権を握るための戦いを始めたの。最初は司祭たちの口喧嘩である争論で、どちらが上位になるのかを決めていたみたいだけど。その内に都市の力を借りた司祭たちが、武力闘争を煽り出したのよ。この争いを嫌ったいくつかの都市が話し合って、統一国家を作ろうという事になり、都市国家の始祖であるアイヒベルガー家を王家にしたのよ。各都市は国王から爵位を賜り、臣下の礼を取る事で、無用な戦争を避ける事に成功するわ。

要は、教会内の争いは口喧嘩で終わらせろって事ね。都市間での戦争を煽るなと警告を発したとも言えるわ。

それが目的だったから、この時点では国王が徴税をする事もなく、都市の独立性は守られていたから、ほとんどの都市がドミニオン国の傘下に入り、この時をもって、統一国家ドミニオンが誕生したのよ。


実質的に言えば、700年前ぐらいにドミニオン国が誕生したの。ただ、アイヒベルガー家がこの地に来たのは1000年前だから、国の生誕はそこまで遡る事になったのよ。


まあ、これで平和な時代が到来したって事にならないのよ。この辺は皆も知っているとは思うけど、度々発生した冷害が食糧不足を招き、食糧問題を解決するために戦争で奪い合うようになった。アイヒベルガー王家を打倒する声を上げた者も歴史上存在しているけど、教会勢力と王家が協力体制を作る事によって、王家を維持し続けた。

このくらいの時代の話は、かなり正確な資料が残っているから、興味があるなら、しっかりと勉強する方が良いと思うわ。


ただ、歴史なんていい加減なものよ。書物に残っている出来事だって、真実とは限らないし、誰かの創作物だって可能性だってあるわ。ただ、真実かどうかに関わらず、昔から伝わる歴史という物語からは、いくつもの事、中には大切な事を学ぶ事もできるわ。だから、歴史を残す事は大切な事だとは思うけれども。真実かどうかはあまり気にしなくてもいいと思うわ。

後世の人々がこの本を読んで、真実かどうかを悩むとは思うから、できるだけ真実を書き残してあげるべきだとは思うけれども、後世の賢者たちでも、確認しようもない事もあるから、それなりに脚色して書いても問題はないと思うわよ。


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