いざゆかん東の京都
「こんど会いに行くよ」
と発言したことから迫る日付。
ついでにいろいろと期日が迫ってした。
そんな中で仕事中に届いたメッセージが一つ。
『どこで飲む?』
(なんで知らない土地でまで飲む場所を俺が決めてんだろうか)
若者の怠慢許すまじ。
20歳になりたてで酒に興味を持つのは大変結構だが、誘っておいて人任せとは何事か。
「って説教もな。相手依存にしちゃうのも気持ち悪いし」
不満はもちろん感じているが、理解もできる。
かつて母親が言うたびに怒っていた魔法の呪文。
『なにか食べたいものある? どこで食べよっか?』
これに答えるのがなかなか面倒だった。
不機嫌になると法定速度を大幅に超えるときは、更年期を心配するべきだったと後悔している。
結局、男は格好つけるものだから。
行き先は自分が決めるし、会計は自分が払う。
対価としてかは分からないが、女は常に差し出す側であるのも概ね事実だ。
男に必要なものを女は差し出せる。
それはある意味、最終手段ともいえる訳だから、安売りはできない。
「出し惜しみしても腐るだけだけどな。おまえもそろそろ出さないと、刀身が錆び付いてんじゃね?」
とは、同居人の婚活女子の言葉。
帰ってきては大体脱いでいるので、この女からはありがたみをまるで感じない。
「婚活女子って矛盾してないすか? もう女子を名乗るのもおこがましいというか」
「てめぇ」
沸点の低さから男が離れていくのだろう。
庇護欲どころか、傷つけられる危機感しか芽生えない。
「女はいつだって女子だと義務教育で習わなかったらしいな坊や」
「女子の座にいつまでも胡座をかいてることに、警鐘をならしてるんですよ」
「言ったな!? サシ飲みだかなんだか知らねえが調子に乗りやがって!」
「べ、べつに調子に乗ってなんか……!」
「彼氏でもない男を飲みに誘える女は8割ビッチに見える呪いをかけてやる。女ってのは誘われるのを待ってるくらいがちょうど良いんだよ!!」
「偏見が過ぎる! 待ってばかりだから相手を選べないんじゃないんですか!?」
「ほーん……」
畳を這って近づいてきた。妖怪かな。
「自分が選ばれるような男とでも言いたげじゃないか」
「実際、こうしてデートできるわけだし……」
「東京までわざわざ飛行機で出向くことがか?」
「うっ」
それが不満ではないとは言わない。
ただ、こちらも年上である以上、別の場所で合流というのも変な話に……ならないだろうか。
「旅行ってほどおおげさにするのも変な話じゃないですか」
「だったらせめて、迎え入れる側が店選びくらいするもんだろうよ」
「ぐ、そういうところばかり的確なのが嫌だな……」
「まー男が店選びってのは義務みたいなもんだ。ホテルへのルートとか下調べできるしな?」
もしかしてアドバイスのつもりだったりするのだろうか。
感謝をするべきかと思ったが、拒否感が強い。入りが悪いよ、入りが。
「ちなみに女は呼ばれた店の近くにホテルがあるかで下着を選びます」
「せ、清純な子だから……。あんたとは違うから」
「そんなにイキたいならあの世に逝かせてやるよ。……女はいつだって女子扱いされたいんじゃああああ!!!」
俺は近くにあったティッシュの空箱を手に、丸めた雑誌を手に飛びかかる女に応戦した。