シャンチー
「シャンチーで賭けをしてたんだよ」
「ちょっと」
さも、面白い話かのように持ってきた話題は、知り合いの女の子の話。
「へえ」
年頃の男女で賭けとは、碌でもないことだろう。
眠いが、眠れないため半分の頭で話を聞く。
(どーでもいい、というと盛り下がるんだろうな)
「その内容ってのがーー」
「もう」
案の定というか、あまりよろしくないものだ。
それを面白半分で語ってくるのは、信頼しているつもりなのか。
話題に上がった女は、降参とばかりに苦笑いしている。
「普通の恋愛をしたいんだけどね」
「お前には無理だよ」
と言い合う彼らに、なんだか眩しいものが見える。
特別言いたいことも浮かばず、自分はこの会話から立ち去りたくて仕方がない。
とにかく居心地が悪い。
「ねえ、あなたはどう思う?」
「こいつは優しいから、なんとかなるって言ってくれるよ」
「……なんとかなるんじゃないかな?」
とだけ言葉を返して、席を外す。
手洗いの方向へと向かうので、特に引き止められることはなかった。
そのまま外に出て、軽くため息をつく。
のたっとした黒い墨のような錘が、全身を覆うように重たく感じる。
と、別の友人が同じく席を外して合流した。
「おす、えぐい話よな」
隣で煙草に火をつけるので、並んで煙草を取り出した。
肺に入れないように、口に溜めて煙を吐く。
この動作をしているだけで気が紛れる。
「あいつはあの子が好きだし、あの子はお前に懐いてるからな。……盛り上がると思ったんだろ」
一応、フォローに来たらしい。
目敏いというか、よく気がつく性格だ。
あの男の尻ぬぐいを買ってでてるのは気に食わないが、八つ当たりをしても仕方ない。
「うん。いや、面白かったんじゃないかな」
「気にしてる?」
「あー……」
煙を友人へと吐いて、ついでに口臭もぶつけてやる。
「いや子供か」
「わはは」
少し気が晴れた。
「恋愛をしたいならすればいい。やりたいならやればいい。過去のことを今更聞いたとしても、俺には何もできないよ」
こいつらシャンチーしたんだ