LINE名「全肯定」(現代)
「社会に居場所なんてねえよ」
拗ねた声は震えている。
よほど私が怖いのか。拒絶されることに怯えているのか。
ああそうか。居場所がなくなるのが怖いのか。
「おびえててえらいじゃん」
安心させたくて、肯定した。
不思議なものだ。私はこいつが少し嫌いだった。自分を不幸だと信じて疑わない。私に甘えてくるくせに、ひとつとして言葉は響かない。
舐められているのかとさえ感じていたが。どちらにせよ、否定を積み重ねるのは違うと考えた。
「まずは自分への肯定だよね」
なんどもえらいえらいと伝えていく。
おずおずと、野良猫がひとの暖かさに触れるような表情を浮かべていた。
そんなに私に信用がなかったのか。ここのところは怒ってばかりだったのは自覚している。
こんな顔をさせていたとは。もしかして自分はサイコパスなのだろうか。
心ない言葉をかけ続けると、信用は失われる。ひとつ学んだ。
「俺はえらいのか?」
「慎重でえらいよ。疑っていこう」
鼻で笑いそうになるのを我慢する。えらいわけねーだろ馬鹿がこの野郎。
油断すると溢れそうになる。
……LINEの名前も変えとくか。
褒める。積み重ねる。マニュアルが名前になるとは。
というか他もそんな感じだったことにぎょっとする。
むしろみんな、距離感とかどうやって覚えているのか。
分からないから、ミラーで返していた。
好きだというなら私も同じ。嫌いというなら私も同じ。しあわせなことじゃないか。