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視野角

「あなた、感覚はすばらしいのだけどね」


 一つため息を吐かれる。

 ばばあに追加で皺が刻まれた。なんども折っては直した折り紙のような顔だ。


 原因が自分であるとでもいいたげにしている。この目が嫌いで、このばばあは普通に嫌いだ。

 それでもばばあが先生として続いてるのが、指導者と生徒という相性が、無駄にいいということもある。


 首根っこが引っ張られる。

 私は犬猫じゃないんだが。首に嵌められた鉄の輪っかがジャラリと不快な金属音を耳に響かせる。


 喉が閉まることは諦めた。そうなると思ってしまえばそこまで苦痛でもない。

 そもそも、前に治るからという理由で指先から腕へと順番に切り落とされた時の方がよっぽど虐待だった。


 最初に指を断たれた時点で、ああ右腕はここから使い物にならなくなるのかと思ったくらい。

 あとはひたすらに痛みが続くのが苦痛だったくらいか。最初だけなんだよ不快なのは。


 とかく礼儀作法だ歩きだ踊りだ、淑女ってのがどれだけ大変かを身につまされた。

 いずれアイアンメイデンにぶち込んでやろうとは計画している。


「おえ〜……」


 些細な抵抗として舌を出して不快感を示した。

 こんなことして効くのかといえば、意外と効果的。

 やってることの自覚はあるという、素晴らしくムカつく精神を持っているようで、露骨な反感を見せると少しだけ手が緩む。


 その思考の隙をつこうものなら次回がやりすぎだろってくらい冷酷になるのだが。


「で、なんですかババア」

「……回転軸はまず、合ってます。表情もまあ合格点。ただし自分がどこへ行こうとしているのかが見えておりません」


 として、一呼吸を溜めた。


「あなた、怒られるポイントを極力消してるだけに過ぎないのよ」


 てめーがアホみたいな怒り方するからだろうがよぉ!!!!!!!!

 怯え切ったような表現をされたのは腹立たしい。

 元凶がなにを言ってやがると舌打ちを我慢した。


「視野が狭いのね、もう少し失敗してもいいからのびのび動けないものなの?」

「コロスゾババア」

「いいじゃない。間違えれば矯正するだけだから。しっかり間違えなさい」

「テメェが矯正したいだけの言いがかりじゃねえかよぶち殺すぞババア」


 とはいえ、意味もなく言ってるわけではないことも私は分かる。

 そうでなければとっくにこのババアは殺してる。

 まだ死んでないということは、教わることがあるからだった。


「私の我慢強さに感謝するんだなババア」


 そうして顔を地面より離す。

 スケートでも乗馬でも、危険なことをする時は前を見ろとはよく言うものだ。

 そのせいで死にかけたのは一度や二度ではない。教え方が雑なんだよコロスゾと思ったのはその百倍である。


 自分の感覚を否定されることほど鬱陶しいこともそうないが。

 外国語の授業で特殊な巻き舌をやらされた時と同様の不快感が込み上げてきた。


 無論吐くのと吐きそうでは大きく異なる。空振りの吐き気とでもいうべきか、そういう気持ち悪さが全振りとなって遅いくるのだから。


 自らを見直すのに慎重になることの何が悪い。

 巨乳が大体首が埋まってて、貧乳が首元スッキリしてるのと理由は同じことだ。


 身軽さと、周囲との接触を気をつけた結果だろう。

 AVで可愛い顔の巨乳を見つける難しさは異常。

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