天邪鬼
「あの人のこと嫌いだわ」
得意顔で少女が言う。彼氏をボロカスに貶し続ける。彼女はいつも天邪鬼。本当は不安でしょうがない。
「難儀なもんだね」
「まあね、女の子だから」
前の彼氏と別れてきたんだって。それで俺の家に来た彼女。ねえそれって、どういうつもり。友達としての信頼? それがどれだけ俺を傷つけてるか分かってる? 俺だって我慢くらいはするっつーの。
関係が壊れることが怖い。けれど平気な顔して彼女は新幹線で数駅かかる距離を渡ってきた。期待していいのか。それはまるで分からない。
「やっぱ金田くんしか勝たないわ」
「……でしょ? 男として格が違うんだよね」
薄っぺらい言葉の応酬。とんでもなく嘘つきな彼女と、取り繕ってしまう僕は、会話の流れこそスムーズではあっても、とんでもない精神的負荷をかけられている。
声が震えそうだ。今日泊まりなんだって。へえ、俺の家に。それってさ。手を出して良いってこと。そんなつもりはなかった。信頼してたのに。なんて、後から言われたらたまったもんじゃない。死にたい。
あんなに仲良くしていたのに、振られてしまった可哀想な女の八つ当たり。自己肯定感を高めるだけの着火剤。次の彼氏ができるまでの当て馬。
「今日はとことん夜を満喫しよう!」
「うるせぇ寝ろ」
「ひ〜ん、優しくして欲しい……」
「……昨晩寝てなくて、食べ物も喉を通らない奴と遊ぶことなんて一つもないよ。時間は毎日平等にある。今日寝たら、その分明日遊べるだろ」
「かしこじゃん、ママか?」
ほんとに最悪の女だった。乳とケツがでかいのがよりムカつく。なんでこれに手を出せないんですかね。せめて健康な状態で来いや。容赦なく泣かせてやるわ。くたばりやがれ〜。まずは健康になってからだろうが。




