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うつろ
なにもない。
ただぼんやりとしている。何も出来ず、頭がからっぽで、しかしフラットともまた違う。
体調がとても悪い。動きが鈍くて、お腹がいたくて、深く眠い。
それでも動けなくはない。はず。たぶん。
だるい日だった。
定期的に訪れる。上手くいかない感覚。
時折、そんな状態から抜け出せたと思っていたら、後ろから足跡を響かせながら迫ってくる。
(もうだめか。やはり駄目か。ヒーロータイム終了のおしらせです)
黒いスーツに身を包んだペストマスク。じっと見つめる様が不気味だった。攻撃してくるわけでもなく、触って確かめるわけでもなく。這いつくばって、声も出せない僕を見下ろしている。
診察のつもりなのかもしれない。彼はどんどん小さくなったり、大きくなったりを繰り返す。
鉛となった身体を動かしてほしい。かれは寄り添うようにそばにいるだけだった。そこにある主張は一つ。
やあ、また会えた。相変わらずのようだね。
ああ、逃げ出したい。まずは力を貯めることから始めなくちゃ。