素材の味
玉ねぎと人参とソーセージをぶつ切りに。
水と一緒に鍋に入れる。
コンソメを一欠片。塩コショウを適当に。
「素材の味ねぇ……」
味の素が嫌いだと、常々文句を言っていた。濃い味が嫌いだとも。
人前では絶対に言わない。車の中のような、裏でいうことがほとんどだった。僕らはいつも、誘われていたから。
なら行かなければいいのだけど、そういう訳にもいかない相手であったのだ。
僕は正直、味なんて分からない。
だから、人の言葉を聞いて味を理解する。これは不味くて、あれは美味いらしい。
どちらかといえば、食感や匂いだろうか。生牡蠣やレバーが苦手だ。そもそも、食べていいのかを疑問に思う味なのが、どうかと思う。
誰かが、これなら食べていいよと言われれば問題なく食べることが出来る。と思いきや、あそこのお店では腹を壊した人間が出たと、ニュースを知って怯えてしまう。
一つの恐怖症だった。たまごかけごはんですら、少し怪しい。白身が特に気持ち悪い。
それはともかく、身内に素材の味にうるさいのがいると、食べ物にもそれなりに気を使う。
やれ、出汁がどうだとか、味付けがどうだとか、いろいろ言われるようになる。
じゃあもう、自分で作れよって話なんだけど。
僕の作る料理が嬉しいと言われれば、それまでだった。褒め言葉ではない。これ以上に何か言おうものなら怒るぞ、という最終通告であり、脅迫だった。
僕は自分の作る野菜スープが嫌いだ。
コンソメを入れて、塩も胡椒も入れる。
上手な人は、塩だけで甘味を引き出せるとかなんとか。
なんどかやって、一度も美味いと感じなかった。
どうやら僕は味音痴で、料理も下手なようだ。
だから、出来損ないのスープを美味いと感じながら、罪悪感に苛まれている。
……もう水でよくね。生野菜でも飾ってろよ。
そんな言葉を、スープと共に飲み込んだ。
FGOのイベントストーリー良かったですね。
ドラコーのための物語というか。
気付いたら1日が過ぎていました。すみません。