掃除(現代)
ぴりり、べりっ、こるこる、じゃー、べこべこ。
ペットボトルを処理する音が響く。剥がして、蓋を取って、洗って、潰す。
一人暮らしの部屋に、小さすぎず、大きすぎない程度の音が絶えず響く。
雨足も絶えず、ゴミ捨てのライブ会場が出来上がっていた。
「助かる、一人じゃなかなか、処理する時間が、ね」
「お駄賃、くれるし、これくらいなら、いつでも」
リビング、寝室、台所。
特に台所がひどい。ちょっとしたゴミ箱になっていた。
「これで、自炊くらい、できるかもね」
「ああ、これが原因、だったんだ?」
リズミカルに。しかし時折変調する。
お茶と書かれたラベルを剥がし、蓋を取る時に反発する。
「これ酷いよ。アク抜きしてないコンニャクの臭いがする」
「うわっ、精子やん」
「なんで言うんだよ」
処理しても処理しても終わらない。
一体、何ヶ月ためこめばこうなるのだろう。
もうウォーターサーバーと契約しろよと思う。それかやかん買え。
蓋の凸凹の摩擦で、小さな内出血が出来たのを境に休憩をはさむ。
「ゴミ袋、追加で買ってくるよ。鍵閉めるの面倒くさいから、待っててくれる?」
「へい〜」
手を振り回して、軽く冷ます。
ベッドに軽く腰をかけると、ベッドが湿気ていた。
……ファブリーズって言ってたよね。ま、まあ梅雨だし。カビとか、どうなってんだろうなぁ。
人をダメにするソファに移動すると、乾いていることに安心してしまった。
あー、肩甲骨まわりがすごい。ずっと猫背で前屈みだったからなぁ。巻き肩になる。ストレッチだけでも。それすら面倒くさい。
ぼんやりすごして、時間の感覚がなくなってくると、ドアが開く音がする。
「ただいま〜」
「はやいな」
「よゆうよー」
言いながら、おにぎりの封を切っていた。
「え、私のは?」
「あ。……半分食べる?」
「いや、別にいいけど」
「来来亭いかない? お腹空いてる?」
「あーまぁ、どっちでもーかな」