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プロフィールと暗黒(ファンタジー)

【あなたの情報を記入してください】


名前【【あなたの情報を記入してください】



 というアナウンスに顔を上げる。なんならテロップが視界に浮かんでいる。

 メガネに文字を書いたらこんな感じだろうか。視界情報をさえぎるので、まあまあ鬱陶しい。目を閉じても浮かび上がってくるので、このまま寝ようにもストレスがかかる。


 ……とはいえ、慣れてきた。

 最初こそ戸惑ったものの、時間経つとそういうものというか、文字の羅列をぼんやりと認識してしまえばそこまででもない。慣れってすごいな。


 ええ、というかなに? 役所ですか?

 だだっぴろい空間もなにも真っ黒ですけど。自分の姿だけはやた鮮明に見えるのが気持ち悪いんですけど。

 こういうところ、運営がさぼっちゃあかんよ。設計ミスだろ。


 まあ黒いだけましか。白いと目がチカチカしそう。ちょっと落ち着く。

 よく考えたら空腹感も眠気も感じないんだわ。え、疲労も? わりといい場所だな。

 何もないことだけが不便だけど、どれくらい待機してられるのか気になるな。尿意とか便意とかもないんですか? それって完全体やん。死ぬこともない。これが不老不死か。

 あーでも、おかしくはなるのかも。かな。でもストレスをそこまで感じない。そういう作りになってる。極論だけど、思考を停止したまま、むこう百年くらい過ごせそうじゃないか?


 やってみるか。まあものは試し。

 どうしても暇になったら、いちおう体は動かせるし、なんか記入形式だからか、メモ書きは出来る。

 さすがに出たくなったら出るけど。どこまで我慢できるかな。それって辛い目にあったりするよりも選ぶべきかなぁ。ここが人間力の分水嶺だ。


*****


 そうして、百年が経った。しらんけど。

 太陽がないんだよな。酸素もない。呼吸も必要ない。生きる要素がない代わりに、死ぬ要素も排除されてる。がんばれば自傷で死ねるかもしれないけど、治るんだよね。

 一度、爪がひっかかって傷が出来たけど、秒で元通りだもん。試してないけど死んでも生き返りそう。まさに生き地獄ではあるなぁ。なお痛みはある。しかしそれも最近ではぼんやりしてきた。


 私はだれ? みたいに思うかもしれないけど、そうなったとてなのよ。

 あ、あなたの情報を記入しろってそういうこと? 自我が薄くなる系? でも俺しかおらん世界で俺を記入しても差別化もなにもないのよ。どうしろってんだ。

 【決定】を押せば変わるんだろうけどね。ちょっと暇つぶしにノートがわりに使っちゃったから、名前の項目がじゅげむどころじゃなくなってるんだよな。こんな裏目があるとは。上限つけときなよ流石に。ピカソがここに来たらまあ困りそう。そうでもないか。ピカソで通じるだろ。


*****


 ありとあらゆる動きをしてみた。

 というか年単位のフルマラソンですらできる。俺すごい。

 四歩で一秒だと換算するなら、一万年を超えた。その間ずっと走ってた。頭の中が流石に歩数カウントで埋まってたけど、やれるもんだね。

 寝てても走ってても変わらんし、重力もそこまで感じない。むしろ自分の動きを止めるのが一番面倒まである。そうなるともう、走ってる感覚ですらないんよね。自転車よ。


 外の世界はどうなってるのかな。

 そもそも外なんてあるのかな。

 黒一色の世界が快適すぎて、苦労をした年月を優に越してしまった。


 そろそろいいかもな。十分引きこもったし。苦労しても死んでもいい。ていうかこの世界でなんかいか死んでみた。多分死のうと思ったらいける。嫌な決意だな。我ながら。

 このままだと外に出た瞬間、呼吸するストレスで死にかねんけども。無呼吸最高なんだが。

 えーと、走り続けられる限界が、49.195キロだっけ。うわぁ人間て脆いなぁ。ごみじゃん。】


「まずはこれを消す作業から入るのか」


 おおよそ一万年と二千年分のメモ。一括で消させてくれよ。なんでそこだけちょっと不便なのさ。

 今に限ったことではないけど。UXが終わってるんだよね。

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