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僕の物語  作者: ままごと
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僕の初期装備

「つまりマサトは、異世界から召喚されたってこと。」

「じゃぁ、ここはどこなんですか?」

「敬語やめてくれる?苦手なの。ヴァルハイト王国。神の山の祠の中。でも、おかしいんだよね。こんな場所に召喚されるなんて。」

「どういうことですか?」

「普通召喚は、神の山の頂上にある祭壇で行われるの。ていうか、今その儀式の真っ最中なはずなんだけど。…敬語やめてね。」

「じゃあ、こんなところで何してるんですか?」


そういったところで、レナさんが大きくため息をついた。

レオナ=アドニール=シュバイツ=クルム


略して、レナさん。


たった今お互いの自己紹介を終え、この一つ年上の美女に自分の置かれている状況を説明してもらっていたところなのだ。

しかし、なにやらご立腹の様子。

その理由に気がついて、質問しなおす。


「あの、じゃあ、なんでレナさんは、こんなところにいるの?」

「さん。はいらない。勇者召喚の儀式は大きなものだから、周りにもすごく影響を与えるの。それで、この神の山に封じられている魔物とかの封印が弱まったりしちゃうことがあるわけ。」

「へぇ。」


勇者召喚の儀式ねぇ…正直、王道まっしぐらなかんじだ。

何故異世界から召喚するのかといった理由も、また同様に身体能力の向上や、膨大な魔力を持つ。といったものらしい。


身体能力上がってるのかな?


と思い自分の体を見る。そして、気づく。

パジャマで召喚されるのはかなりかっこ悪いなぁ。

高校生にもなってパジャマってのも問題なんだけど。やっぱジャージとかスウェットとかのほうが、まだましだよな。


「この山には、いくつかそういうところがあるんだけど、封印を破って魔物が出てきちゃわないように、各場所に選ばれた巫女が配置されるの。それ以外の巫女と大巫女様が勇者召喚の儀式を行うわけ。」

「じゃあ、レナさん優秀なんですね。」

「まあねぇ。さん。は、いらないって!喧嘩売ってるの?」

「いや、さすがに初対面の人を呼び捨てにするのはちょっと…」


と言ったところで、とても不吉な予想が脳裏をよぎる。


「あの、レナさん。そのレナさんがやるはずだった儀式って、もう終わってるんですよね?」


一瞬の沈黙。そして、あっ。と小さく声を漏らすレナさん。


予想が確信に変わる瞬間。


まるで、このときを待っていたかのように洞窟内に響く、耳をつんざくような咆哮。


確信が現実になる。


「しまった!」


と言って、走り出したレナさんを追いかけて行くと、広い空間があらわれて。

見上げれば、吹き抜けになっていて、満月が大きな顔を覗かせている。

そして、月明かりに照らされてその姿をはっきりと現す巨大な


イモムシ。


イモムシ。芋虫。いもむし。

それが、人なんて一飲みしてしまいそうな、大きな牙のついた口を広げ天に向かって咆えている。


イモムシって鳴くんだっけ?いや、これは魔物か。


しかし、こんなものを見てしまうと、本当に自分が異世界に来たんだと実感する。

なんて、言っている場合ではない。


「どうするんですか!?」

「どうしよう。破られちゃった封印を強化したって意味ないし。」

「外の人たちに助けを求めましょう。」

「無理だよ。ここから、外に出るまで3時間はかかるよ。その間にあれのお腹の中に入っちゃうよ。」


それでも、イチかバチかで逃げるか…


「ねぇ。本当に異世界から来たんだよね。」

「いや、そうですよ。だから、何だって言うんですか。今そんなこと言ってる場合じゃ…」


なんとなくレナさんの言いたいことが分かった気がした。

青い瞳が月明かりに照らされて、うるうるしながら、こっちを見てる。


「いやいやいや、無理ですよ!いくら、身体能力が上がったっていっても。あんな化け物いきなり相手にできませんよ!それに魔法だって使えないし…」

「いいじゃんか!ケチ!戦ってよ。異世界人だろ!このままじゃあたし、罰則くらっちゃうよ。昇進が消えちゃうよー!てか、敬語使うな!」

「いや、その前に生きて帰れるかわかんないでしょ!そして、あんたに二度と敬語は使わない!」

「あんたじゃない!レ・ナ!」


なんて、不毛な言い争いだ。


と、思ったところで自分が物凄い手汗をかいていることに気づく。


落ち着け。こんなところで死にたかないぞ。


パジャマのズボンに手汗を擦りつけると、ポケットに違和感があった。


叔父さんからもらったオイルライター。と鼻をかんだティッシュ。


なんでこんなものが、ポケットに…


「マサト!」


名前を呼ばれるが早いか否か。体が宙に舞った。

さっきの言い争いで大きな声を出し過ぎたようだ。

イモムシに突き上げるように飛ばされた。


痛みが走るものの、それほど痛くない。動ける。


本当に身体能力が上がってるんだな。


と宙に舞いながらしみじみ感じる。

えらく飛ばされたおかげで、吹き抜けのてっぺんの縁にしがみつくことができた。

そのままよじ登り、てっぺんに立つ。

さすがの巨大イモムシもここまでは、届かない。

壁に突進して、自分を落とそうとしている。

だが、こっちは思ったより足場がいい。落ちそうには無かった。

イモムシはこっちに夢中で、レナさん…レナは眼中に無いようだ。


ふと、自分から異臭がしていることに気づく。


なんだこれ、イモムシの体液か?


パジャマにこれでもかというほど、べっとり付いている。というか、ぐちょぐちょ。

でも、その臭いに覚えがあった。


もしかしたら…


ポケットから、ティッシュを取り出した。

初期装備は、パジャマにオイルライター、それに使用済みティッシュ。

これで、巨大イモムシに戦いを挑む!


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