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僕の物語  作者: ままごと
2/22

僕の叔父さん

今日は早く帰るから、飯作っとけ!


メールの内容は簡潔だった。ホストの仕事をしている叔父が早くに帰宅するのは珍しい。

自分には両親がいない。自分が小学校の5年の時に事故で他界した。

残った自分を誰が引き取るかで、親戚中が揉めた。醜いものを見るような眼で見る人もいた。

そうでなくても、言葉では優しさをだしながら、なるべくなら関わりたくないという雰囲気がでていた。


そんな中で当時から既にホストをしていて、親戚の中でも浮いていた叔父が業を煮やして自分を引き取ると言った。最後に親戚一同に向かって

 

「クソくらえ!」


と暴言を吐きながら、中指を立てた叔父の姿をまだ鮮明に思い出すことができた。

それから、5,6年共に暮らしてきたが、叔父は自分に家事全般を任せた。

元々母親に家事はある程度手伝わされていたものの最初は慣れなくて失敗も多かった。


しかしもう今では、お手の物である。帰ってきたときに出来上がっていないと、何を言われるかわからないので、帰ることにし、図書室を後にした。

 

「お前今日、誕生日だろ」


とんかつを口にほうばりながら、不意に叔父が口を開いた。


「そういえば、そうだね」


ちなみに誕生日などここ最近まともに祝ってもらっていない。故にあまり気にしていなかったのだ。


「いくつになったんだ?」

「十七」

「そうか…よし!今年は特別にプレゼントをやろう。」


そう言うと寝室に行き、なにやら木箱のような物を持ってきた。


「開けてみろ」


中を開けると銀色に輝く手のひらサイズの四角いものが…オイルライターだった。


「どうだ?いいもんだろ。ん?なんだ。微妙な顔してるな。お前まさか、十七にもなって煙草吸わないのか?かーっ!これだから陰気な童貞君は。まぁお前にはもったいないが、一度くれたもんだからな、ありがたくもらっておけ。」


自分自身、陰気なのは認めるが聞き捨てならないセリフがあった。


「童貞は関係ないだろうが!」

「おっ。なんだその態度は、この仏のような俺様に歯向かうのか?」

「仏じゃなくて、色ボケだろうが!三十すぎても未だにホストなんかしやがって」

「ほほう。口だけ達者になったな。陰気少年。しかし、どうやら甘やかし過ぎたようだ。躾しなおさなければな」

「何が躾だ!未成年に煙草吸わせようとして。他人を躾ける前に、あんたが、モラルを学べ!このど変態!熟女好き!そんなんだからいつまでたっても一人身なんだよ!」


と言ったところで、叔父のこめかみに、青筋が立っていることに気がついた。    


「本当にお口が達者になったな。雅人。そうだな久しぶりに腕っぷしのほうも上達したか見てあげるとするかねぇ。」


まずい…殺される…

叔父が自分のことを名前で呼ぶ時は、かなり頭にきてる証拠である。

しかし、ここまできたらもうやるしかない。低く構えると戦闘態勢をとった。

瞬間。顎を鈍痛が襲った。

叔父のアッパーが顎を正確に捕えたことに気づいた時にはもう天井を仰いでいた。


数え切れないほどの挑戦。そして全敗。


拳が叔父に届いたことは一度もない。そう体格も変わらないし、体も鍛えている。フィジカルで劣っているとも思えない。

しかし、圧倒的な差があった。何か、そう絶対的な経験の差のようなものが。

 

顎を冷やしながら部屋に戻った。ベッドに座り、結局もらったライターを見る。見たことのないブランドだった。叔父の口ぶりでは、高い物らしい。

まぁ、何にせよ正直うれしかった。

ライターを枕もとに置き、床に就いた。

寝てる途中、鼻がむず痒くなったので、仰向けのままティッシュで鼻をかんだ。


これが、この世界での最後の記憶になる。



異世界ものなのになかなか、異世界に行かなくてすいません。


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