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僕の物語  作者: ままごと
17/22

僕の仕事

 「ランク?」


何となくは予想していたが、やはりハンターにも格付けがあるらしい。

ギルドにはお決まりの酒場で、ロイとジンに説明を受けているとことだ。


「ええ。EランクからSランクまであります。ちなみにごく稀にそれ以上の称号であるマスターハンターと呼ばれる者もいますが今のあなたにはほとんど関係の無い話です」

「それで、そのランクに応じて依頼が受けられるわけだ。ランクが高ければ難しい依頼も受けられるってことだろ」


どこまでもお決まりって感じだな。


「違います」


ロイが間髪入れずに答えた。なんだかすいませんでした。


「確かにランクに応じて受けられる依頼が変わるのは事実ですが、難易度ではありません。報酬の高さです。依頼には二つのランクが付けられています。一つはマサトの想像通り難易度。もう一つは報酬額の高さです。難易度はいくら高くても誰でも受けることができます。しかし、ランクが低いと報酬額の高い依頼はうけられません」


なんとも世知辛い。しかし、それなら難易度のランクなんてつけなくてもいいのではないだろうか。

そう、思っているのがわかったのか、ロイが灰皿でまだ吸えそうな煙草を潰して説明する態勢に入った。


「難易度が設定されているのはハンターのランクを決めるためのものです。ランクは報酬額ではなく難易度によって随時上がっていきます」


なるほどそういうことか。自分のポケットから煙草を取り出して吸おうとすると、ロイの視線が刺さる。

自分がわざわざ煙草を潰したのだからもう少し質問して来い、といった感じだ。

仕方が無いのでリクエストに応えることにした。


「それで、そのランクってのを上げるのは結構大変なのかな」


ロイがよしよしといった感じで頷いた。


「Cランクまでいけば一人前ですね。実際そこまでいくのは今のあなたなら一切苦労しないレベルです。でもそこからはそこそこ大変ですかね。今はSランクのハンターは指で数えるほどしかいないですし、マスターに関してはもう歴史上の話になってますからね」


そこまで言うと満足したのかロイは新しい煙草に火をつけた。

どうやら、上と下では実力にかなりの差がありそうだ。まぁ、マスターハンターを目指すわけでもないし、そこまで気にする必要もなさそうだが。

煙草に火をつけようとして、また手を止める。


「そういえば、ジンってランクは何なの?」


自分の隣ですでに酔いつぶれて寝ているこのヒゲ。かなりの迫力を感じたはずだったが、今はただのおっさんだ。その姿が何となく叔父さんとダブる。

今頃何をしているのだろうか、自分がいなくなったことで困りはしていないとしても驚いたには違いない。でも、そういえば自分は今まで元の世界に帰りたいとか、そのために何かしようとか思わなかった。

普通、一般的に、真っ先にそれを考えるのではないだろうか。

なぜ、そう思ったところで考えるのを辞めることにした。きっと、元の世界にろくな思い出が無いからだ。


「Sランクですよ」


ロイの発した音が耳に入る。でも考え事をしていたせいでそれを言葉として認識できなかった。


「ごめん。よく聞こえなかった」


無性に吸いたくなって煙草に手を置く。


「だから、Sランクですって」


隣のヒゲは気持ちよさそうに寝ていた。


「あと、言い忘れていたんですがこれからしばらく私はあなたに同行します」


ジンのことをまじまじと見つめる自分に向ってロイが話し出す。


「なんで…って聞くまでも無いか。サポートという名の監視ってことだろ」

「物分かりが早くて結構。いくらあなたを歴史から消したとはいえ、今この国でもう一人の異世界人であるあなたを知らない者はいません。あなたかこちらに来てすぐに起こした事件のことでね」

「…なんかすいませんでした」

「あなたが、思っていることも確かに歴史上始めての珍事件でしたが、それと共に封印の魔物を魔法も使えないような状態で倒したことも広まっています。あなたは何やら運が良かっただけだと言いますが、世間はそうはいかない。国はまかり間違って革命家たちに加われたりしたら厄介だと考えているのですよ」

「それで、副隊長様直々にってことか、ありがたいね」

「残念ですが、今扱っている要件が片付き次第ギルもあなたにつきます」


副隊長だけじゃなく隊長までか。自分に起きていることとして少し実感しずらいな。


「大丈夫なのか、隊は。上二人がいない状態で」


それは、もはや隊として機能しないのではないだろうか。


「大丈夫ですよ。皆ソロ活動が基本ですから」


そう言って、ロイは二本目の煙草を潰した。


「それと、よさそうな依頼があったので、受けてきました。村の近くに居付いている盗賊達を始末してほしいとのことです。最近急激に勢力を伸ばしてきた『火鼠』という盗賊団です。難易度はS。これでマサトもすぐにランクが上がりますよ」


またこの男は無茶なことを…


「いや、いきなりSは無理だろ戻してこいよ」

「駄目ですよ。依頼の破棄は死刑です。大丈夫ですよ、私も一緒に行きますから。というか2人までみたいなんですよ」


もう少し前にその話が聞きたかった。聞いていたところで状況が変わったかどうかはわからないが。というより、盗賊団潰すのに2人までって、無理が無いだろか。いや、だからSランクなのか。


「でも、それだけ難易度が高ければ報酬もそれなりにいいんじゃないのか」


Eランクは最高でもDランクまでの報酬しか受けられない。ロイはハンターではないから受けた名義は自分のはずだ。


「それが、報酬がまたユニークで気に入ってしまったんですよ。まぁ、Eランクなんですけど」


そう言って、ロイが依頼用紙をこちらに渡した。Sランクの難易度にEランクの報酬という依頼が存在することに理不尽さを感じながら、報酬欄に目を通すと確かにユニークでロイが気に入りそうなことが書いてあった。


   


アップルパイ食べ放題






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