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異端兄妹は日常に戻りたい  作者: 幽猫
third chapter 運命の歯車

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95章 発端

 黒鉄元(くろがねはじめ)は生まれつき、あるものを持っていた。

 

 自閉スペクトラム症(ASD)、発達障害の一種でコミュニケーション能力の発達において壁となる存在。


 先天性だけでなく後天的に現れることもあるこの精神病にはいくつかの特徴があるが、ハジメの場合はそれが悪い方向に噛み合ってしまっていた。


 それが、他方への思慮の欠如と感情の受容難。


 顕著に表れたのは中年二年生のときだった。



 「そこ、やめなさい!」


 先生の鶴の一声が教室に走る。


 騒がしかった教室は一斉にしんと静まり返り、誰もが何があったのかと先生の方へ視線を向ける。


 昼休みの間で次の授業の準備をしていた先生が呼び出されたのは、担任を受け持つクラスの学級委員長だった。どうも聞くところによると、別のクラスの何人かが一人に集団で暴力を振るっているとのことで、急いで職員室を飛び出してきたところだった。

 

 そこで目にしたのは何人にも蹴られてぼろぼろになった男の子と、それを取り巻く男の子達数名。さらには奥で泣いている女の子らしき姿が見受けられた。


 そのうちのほとんどが先生の声で硬直したが、周囲が静まってなお馬乗りに殴り続ける男の子が一人、いた。

 

 「こらっ!!それ以上は許さんぞ!」


 「っせーな!黙ってろ、ザコが!」


 先生が悪態をついて無視するそいつの手首を掴んだとき、その顔に見覚えがあることに気づいた。


 「……笹井(ささい)!?なんでお前が………………!?」


 驚いたのも無理はない。その暴力犯は二年前に担任を受け持ったことのある三年生の笹井剛(ささいたける)だった。さらに驚いたのは、タケルが()()()()()()()()()()()()()という事実である。


 タケルは実直的な性格で、授業態度も生活態度も誰もが模範にできるような誇らしい児童であった。もともと正義感の強いところからいじめなどは真っ先に否定するようなタイプなはず。


 それが、何故他の教室に無断で入り、しかも殴る蹴るの暴力を振るっていたのか。


 「……とにかく、職員室に来い!それに……誰か、保健室まで手伝ってくれ!ええと……誰だったっけ……」


 まだ新学期が始まって一週間、顔と名前が一致していないこともあって、誰が殴られていたのか理解するのに時間がかかってしまった。


 「先生、私連れていきます」


 「すまん、助かる」


 先生がその子の元へ駆け寄ったときには顔は大きく腫れ上がり、ところどころ血が滲んでいて、ときおりひゅー、ひゅーと空気が掠れるような呼吸音が流れていた。


 ついてきた委員長と他数名と共にぼろぼろの彼を連れていってから、タケルを校内放送で呼び出して職員室の別室へ向かった。




 「ストーカー?」


 「……そうだよ。夢花(ゆめか)が怖がってて、それで止めるために行ったんだ」


 職員室外れにある準備室でタケルに何があったのかを問い詰めていると、気になる内容がいくつも浮かんできた。


 ユメカ、というのはタケルの二つ違いの妹で、その繋がりもあって新しく受け持った二年生の中では一際早くから目をかけていた。


 このクラスにタケルが来るとすれば、それは妹関連なのではないかと思って尋ねてみたが、どうやらそれは当たっていたらしい。


 「始業式の日に告白されて、断ったみたいなんだけどさ。なんでか知らないけど付きまとわれてるって話だったんだ」


 この学校は中高一貫なので、進級してもクラス変えは起こらないシステムを採用していた。そのため以前から仲が良いというのはよくあることだが、このような事態は聞いたことがない。


 「でも、何故こんな喧嘩になんかなったんだ?お前らしくもない。普段ならそんなこと絶対にしない。そうだろう?」


 タケルが暴行をした、それだけは確かだった。だがその事実が受け入れ難いものであり、そのため原因はタケルだけではないのではないかと尋ねた。


 ……いや、実際のところは信じたくなかったのだ。信じていたものに裏切られた衝撃を味わいたくなくて、なにかと理由づけしようとしているのは分かっていた。それでも、偽善だとしても


 「理由があるならいってみろ。俺が聞いてやる」


 タケルはしばし俯きがちに目を閉じて、それが数分続くと意を決したかのような顔で話し始めた。


 


 


 


 


 

 

 

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