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異端兄妹は日常に戻りたい  作者: 幽猫
second chapter アビリティ・ウォー

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74章 精神光線

 辺り一面を熱と光が蹂躙し、文字通り焼き払う。ぴんとものさしで線を引くように伸びた直線上全てを砲撃が襲った。


 梶樹が真っ先に退避しなければ巻き込まれていたところだ。


 「なになに!?なんなのあの人!手からビームっぽいの出してない?」


 爆炎と土煙ではっきりとは見えないが、うっすら人影が仁王立ちしているのは分かる。かの銃口からはあれだけ凄まじい爆発を起こしたにも関わらず、さらに追い討ち、ダメ押しとばかりにまるでバーナーのように炎が吹き出していた。


 焼きカマキリといったが、どちらかというとこれは炙りに近いのではなかろうか。だがなにより特筆すべきなのは、それだけの火力がある武器を扱える異能、"能力"についてである。


 それに、自分たち以外の人間ということは、すなわち敵チームのはずなのだ。にも関わらず梶樹が行動を共にしている。これは明らかに今までのゲームとは異なった流れだ。すぐには受け入れ難い。


 「あとで説明するんで、今は我慢しててくださいよ」


 「いや我慢って……カゲっちだったら逃げるの超ヨユーでしょ!?なんで待つ必要があるの!?」


 「まぁ……ちょっと約束しちゃって。あの人は見た目も中身もアレなとこあるけど、これまでに会った相手と比べたら全然まともですよ」


 「思いっきり爆撃してる人間のどこがまともなんですかねぇカゲっちい!」


 ばしばし背中を叩く魅緒を抑えつつ、梶樹は苦笑いを浮かべた。


 「……でも、手に入れたものは大きいですよ。()()()()は特に」


 「へ……?」


 言っている意味が理解できず、魅緒の頭にクエスチョンマークが昇った。なんのことかさっぱりだったけれど、梶樹の瞳にはやけに力が入っている。暗い部屋に灯りが差したような安心感がある。


 「なんか……変わった?カゲっち」


 「ん?いや、なにも変わってはないと思いますけど。ただ少しだけ……新しいことに気づいただけ」


 「ふぇ?」


 ……ますます意味が分からない。


 いったいどうしたというのだろうか。


 「ちょっとちょっとミカゲちゅあん!!」


 そのとき、例の人の声が聞こえた。なにやら焦っているようで、悲鳴混じりにまくしたてる。


 「カマキリ全然焼けないんだけど!?ホントにコレちゃんと生き物なの!?あちし、そろそろエネルギーカラッポになっちゃうわ!」


 見ると、爆炎の余波からか視界を遮る炎のシャッターの向こうに、踊るようにして近づいてくる怪蟲の姿があった。完全に燃え尽きたと思ったが、実のところ全く効いているようには見えない。


 外骨格、つまり人間を含めた哺乳類とは違い身体構造の核となる()の部分を外側に持つ昆虫類は、カブトムシやクワガタムシのような甲虫でなくとも堅牢な鎧を纏っているのと同じ状態にある。


 これは内臓を含めた中身を守るためのものなのだが、それだけに巨大化しづらいというデメリットを抱えている。外側の骨が大きければ大きいほどそれだけ動くために強力な筋肉を必要とするためだ。


 しかし、その自然の摂理を完璧に無視してヒトの二倍も三倍も巨大化した虫たちは、もはや指で摘んで潰れるようなか弱い生き物ではない。いや、むしろ人間をも超えた遥か高みへと進化している。


 「マジか……。海老蔵さんのサイコガンで倒せないのはまるっきり予想外だったぞ」


 「サイコガン!?なにそれ、どっかの極道界の(ドン)が持ってるやつじゃん。ズルくない!?」


 「だいたいはそれであってますよ。あの人……海老蔵さんの能力は手を砲身にして火力に変える《精神光線》なんで」


 サイコガンというのは心のエネルギー、つまりは感情を素体として弾丸を生成し放射する兵器なのだが、そもそもそんなものは原理的に開発されていない。


 能力(アビリティ)の中には咲の《万有引力》のような物体や力に直接作用するものがあるため、サイコガンというのは要するに精神操作の一種に分類されるはずだ。しかし、魅緒の例を見て分かる通りメンタルに関与する能力は軒並み戦闘に直接役立つとは限らない。


 「うぅ……アタシもああいうドッカーン!みたいな派手な力だったら良かった……」


 泣き目な魅緒ががっくし肩を落とすと、梶樹はぐんと立ち上がって手を差し出した。


 「落ち込むのは後で。今はなんとかここを抜けないと」


 ひとこと告げてから呼吸を置き、梶樹は十数メートル先にいる大男に向かって声を張り上げた。


 「海老蔵さん!プラン変更で!!」


 「ラジャー!」


 短い確認の返答。そして素早くサイコガンによる攻撃を中止して猛烈な勢いでダッシュする。この切り替えの速さ、退避までに僅か五秒とかかっていない。


 だがそれを待ち望んでいたのか、緑の身体を火炙りで黒コゲにした巨蟲が動き出した。


 

 


 


 

 


 

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