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異端兄妹は日常に戻りたい  作者: 幽猫
second chapter アビリティ・ウォー

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70章 電離

 今の繭愛は身体に電子を纏った状態。これは繭愛の意志が無意識下で生成した電気の鎧でもある。もともとヒトの生体に発電器官なんてモノは存在しないのだから、使うもなにもあったものではない。与えられた能力の範囲内で、こうすれば使えるという()()()()で使っている。


 思い込みに近い話だが、ないものをあるとするのが"異能"なのだから仕方ない部分もある。違法薬物で見ることがある幻覚は脳に以上をきたしたために起きることだが、本質的にはあれとほぼ同じだと思っていい。


 「大丈夫、大丈夫……」


 火花を散らす電子の声に、繭愛はきゅっと胸に手を当てて自分に言い聞かせるように呟きながら、花壇の周囲を回りはじめる。


 前回のように岩を吹き飛ばす役割で電磁砲(レールガン)を作るという手もあるにはある。しかし、その択はあまりにリスキーかつ不安定。


 覚羅が離れてから撃つとしても、威力が高すぎて巻き込んでしまう可能性が高い。それに、金属等の伝導性の高い()()がなければ発射することができないという難点もある。


 それに、あのときは梶樹がありとあらゆる面でフォローしてくれたために上手くいったのであって、繭愛自身もひとりでレールガンを撃てるかどうか自分でもわからなかった。


 なら、逆に()()()()()()()()()()()()()()


 「……お兄さん!もう、ちょっと……がんばって!」


 聞こえたのかまでは分からなかったが、あまり悠長にはしていられない。繭愛はぐっと胸を張って、空へと向かって天を仰ぐと、大気と風の流れを掴もうとする。


 ーー感じる。穏やかではあるけれど、力強い自然の強さを。

 繭愛は流れる電子の糸を空中へ離散、放出した。そこから、ある一定の間隔をもって、両手を突き上げるしぐさをみせた。




 「天聖……?」


 なにかしようとしているのはわかったが、覚羅にそれに返答してやるだけの余裕はない。気を抜いてしまったら今にでも押し潰されそうだ。


 「そろそろ限界かしらーん?」


 岩の巨人が嘲笑うように目の前で顔らしき部分を上下させてきた。未だ拮抗しているのは確かだが、これ以上の力を出すことができないのか、はたまた覚羅との組合いを楽しんでいるのかは定かではない。


 しかし、《武闘王》の使用限界を頭に入れておかなくてはならない覚羅はその分だけ不利がつく。無理に性能を引き上げた機械はオーバーヒートで壊れてオチとなるのがお約束。寿命を差し出してスーパーマンになっているようなものだ。現に昨日の二回戦目で炎を檻を吹き飛ばした拳圧にしても、あのあとかなり肉体に疲労が残っている。


 元の身体がある程度鍛えられていたとしても、このリスクは避けられない。


 それに、体幹を支えている足が震脚の連続もあってか限界に近い。もういっそ制限を外して叩いてしまおうかと考え始めていた。


 (天聖……何かするのはいいが、効くのか?)


 電撃が通じない相手なのは承知の上だとしたら、いったい何をするつもりなのか。振り向くことができないのが歯がゆかったが、その前にこの岩人間をどうにかしなくては。


 鉄アレイを握る感覚で、覚羅が追加で倍率を上げようと覚悟を決めかけた一瞬。繭愛があらんかぎりの声で叫んだ。


 「離れて!」


 「……っ、おう!」


 ぐん、と拮抗していた力が解かれ、身体が必然と巨人が押す力に流されてのけぞった。瞬時に左手で地面を跳ね上げ、ステップが効かないことを利用し思い切り右へ転がる。


 「わっ!?」


 急にバランスが崩れた岩の巨人は、前のめりに倒れかけた。大勢を直すために手をついたことを確認した覚羅は、後方へバックステップを踏んで距離をとる。


 見ると、繭愛が天に突き出した手の先に、渦を巻く気流のようなものがごうごうと唸りをあげて旋回している。まるでそこだけハサミで切り取ったみたいに、ぽっかりと色彩が消し飛んで穴が空いていた。


 「天聖、こいつは……」


 その有様に、覚羅はこれはなにかと尋ねようとした。だが、それよりも先に胸のあたりがなにやら息苦しいことに気がついた。


 (なんだ……?上手く、息が、吸えねぇ……)


 全力でダッシュをしたときと同じか、それ以上の苦しさを感じる。ひゅー、ひゅー、と過呼吸気味に肺から擦れた音が響く。こんなことは喧嘩にあけくれている覚羅にも、経験がなかった。


 いや、違う。吸えないのではなく、()()()()()()()。この感触からして、呼吸を必要としているほうに問題があるのではない。高い山頂へ立ったときのように、周りの空気が異常なほど酸素が薄かった。


 「お兄さん、ふせてーー」


 そう繭愛が覚羅を抑え、天へと伸ばした手をぐっと握り締めたときだった。


 空中にぼっかりと空いた穴、いや、バスケットボールほどの()がめちゃくちゃな軌道で回転をはじめたのだ。周囲から風を糸に巻き取るように、歪な音を奏でながら速度を増していく。


 それほど時間もかからず、やがてぎちぎちに凝縮されピンポン球よりも小さくコンパクトになった空気の球は、立ち上がり追いかけてこようとする岩の巨人の眼前へと落とされた。


 刹那。音と空気と匂いが弾けるように爆ぜた。


 


 

 

 

 


 

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