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異端兄妹は日常に戻りたい  作者: 幽猫
third chapter 運命の歯車

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101/118

101章 脅迫

 あの事件のあと、ハジメはさらに全治三ヶ月の重症。病院での暴力沙汰となった堺は懲戒免職となった。


 一時期は世間から騒がれるなど大きな話題となった事件ではあったが、その後は病院側の警備強化と学校及び教育委員会の会見を経て時と共に忘れ去られた。




 今でも、剛と堺に殴られたときの傷が目の下あたりに残っている。繭愛の言葉が、その傷をいやに刺激した。


 「ふざ……っけるんじゃねぇ!」


 ハジメは繭愛の腕を掴みあげると、そのまま床に押し倒し、獣が餌を狩るような眼で吼えた。


 「……つ、ぁ………」


 「おかしいのはボクを否定する方だっ!いつもいつもいつもいつも、うんざりなんだよ!いいから黙って命令聞きやがれ!この奴隷如きがぁ!!」


 あまりの迫力に繭愛の体がびくっ、と縮んだ。反射的に目を瞑ってしまったのだがそれをなんと受け取ったかハジメの表情に再び余裕が生まれた。


 眼鏡の奥の瞳に鈍い光が灯る。じゅるり、と舌舐めずりをしてから繭愛の耳元で呪言のように囁いた。


 「……そうか、言葉なんて無駄なんだよな。理解できる(モノ)を持ってないんだから」


 ハジメがぐん、と繭愛を引っ張り起こす。そのままもう片方の手にも力を込めた。


 「…………っ!?」


 ーーーブラウスに手をかけて、ボタンごと引きちぎった。留め具が弾け飛ぶ鈍い音、言葉にならない細い悲鳴が静かな地下に微かな響音をもたらすーーー。


 「え……?」


 繭愛が状況を飲み込むのに少し時がかかった。ボタンのいくつかが周りに転がり、淡い色白の肌を自分が晒していることに気づくと、途端に羞恥の心が湧いてきた。


 「へー、お前結構着痩せするほうなのな。服の上からだとそこまであるようには見えないのに」


 「や……!い、いや…………!」


 まじまじと見られた反抗か、周囲に電気の糸が唸りを上げ始める。


 …………が、すぐに鋭い痛みが繭愛を襲ってきてそれ以上の抵抗は許されない。


 「ふふ……あいつら(奴隷)にしたのと同じようにしてやるよ。終わったら逆らおうなんて気は起きないでしょ」


 それを聞いて、繭愛の肩がこわばる。それから数メートル先で動けなくなっている三人に視線を向けた。もちろん、彼女らがどんな扱いを受けてきたのか正確なものは分からない。けれど、言動から考えてそれがどんなものなのかは想像にかたくなかった。


 一旦離れて昂る気持ちを抑えるように、すー、はー。と、わざとらしく大きく深呼吸をしてから、ハジメは満面の笑みで言い放つ。


 「脱いでよ、全部。撮っちゃうから」


 「……!」


 手慣れた手つきでスマホを操作すると、押し付けるようにして繭愛に画面を見せた。


 そこには彼女らと思われる動画がいくつもストックしてあった。停止画像を見るからに普通の内容ではない。繭愛もまだ見たことのない過激なものだった。


 「あいつらもこうして陵辱動画ネタにしてんの。まぁどっちみち逆らえないけどさ(笑)」


 「ひどい…………なんで、なんで……こんなことするの?」

 

 「決まってるだろ、しつけだよ。()()()。覚え悪いヤツに何を言ったって無駄でしょ?だったらカラダで覚えてもらわなきゃ」


 ぴらぴら手を振りながら、そんなことを呟く。


 「それに……自らやらせるってのがいいんだよ。なんていうの?屈服させたカンジがしてさぁ、負けましたっていうのがよく分かるじゃない」


 ハジメの言葉ひとつひとつが針のようで、繭愛はちくちくと痛みで行動が強制される。ハジメの意に沿わないような動きだとさらに強くなる。


 「いや……そん、なの…………いや……!」


 なおも最後の気力を振り絞り、耐えて抵抗しているとハジメは繭愛の顎を掴み上げた。


 瞳から溢れた涙で湿った頬に、白銀の髪が張り付いていて、破られたブラウスからちらりと覗くアンダーウェアを隠すため我が身をかき抱く。……が、何より大きなショックの連続で完全に萎れてしまっている。


 「強情だなぁ。…………それとも、ボクがやろうか?」


 「ーーっ!?」


 絡まるようにねっとりとした声。張り付いた笑みは、どんなにホラーな絵画よりも不気味に感じられた。


 繭愛の悪寒に呼応するように、稲妻の光が外敵を排除しようと踊りだす。意思を持っているのか疑うほど正確にハジメ目掛けて電撃の帯が走るーーー!


 「と、止めろっ!」


 「……ぁ……!」


 いち早く命令したことで、繭愛の体に痛みが生じる。それがどういう効果を生んだから分からないが、光の帯に急ブレーキがかかり、あと僅かというところで露と消えた。

 

 「ち…………!もういい、お前動くな。ボクがやる」


 ひや汗をかいたハジメは悪態を吐きながら再び近づいてくる。文字通り動きを封じられた繭愛はせめてもの抵抗としてかたく目を瞑った。


 


 

 


 


 


 


 


 

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