第六話 迷宮を駆ける
今回は7000文字を超えました。
ガチャリ、ガチャリと響く音と共に俺はローグランドの大通りを抜けて目的のダンジョンの入り口へと向かっていく。
音の出所はもちろん俺の隣を歩く人物、エリスの纏う重そうな甲冑からだ。
時刻はもうすぐお昼時といったところで、天から降り注ぐ日差しは肌を差すように感じる程だというのに、エリスはその暑そうなフルフェイスの兜をかぶったままだった。
「なぁ、エリス。そんな格好で暑くないか?ここは街中だし兜は外しても良いんじゃないのか?俺が持ってやってもいいんだぞ」
このままだと鎧に篭った熱で体調を崩すんじゃないかと心配した俺はエリスにそう聞いてみるものの彼女は
「ヘーキよヘーキ!常在戦場!さぁ、早く行くわよ!」
と言うと歩く速度を速めて先へと進んでいってしまう。
エリスを追いかける道すがら、昼飯を食べていないことに気がついて屋台で串焼肉を数本購入する。
胡椒の効いた塩っけの強い串焼きはこれから冒険に行く俺たちには丁度いい軽食になるだろう。
そう思ってエリスの分も買ったというのに、ようやく追いついた彼女は「ありがとう、あとで食べるわね!」と腰につけたポーチへとしまってしまう。
その彼女の様子に覚えた僅かな引っ掛かりを、それだけ早くダンジョンへと行きたいのだろう、と無理矢理納得させて共に歩いていくこと数分。
目的のダンジョン「スタット平原」の入り口に辿り着く。
このダンジョンはその名の通り10km四方の平原が5層に渡って広がっており、見晴らしが良く出てくる魔物もゴブリンやウルフドッグなどの弱いものがほとんどなので、冒険者になったなら先ずはココという一種の登竜門的なダンジョンなのだ。
強者を引き寄せる英雄の加護とはいえ流石にこんな初心者向けのダンジョンで中級冒険者の俺たちが手に負えないような相手は出てくるはずもない為、お互いの連携確認には丁度いいだろうと二人で相談して決めたのだ。
新しいスキルを試したりするのに1人で良く来ることもあり、入り口に立つ衛兵は馴染みの顔が多い。
軽く腕ならしだ、と衛兵に告げるとすぐにさしたる検査もなく入場許可証をくれた。
初級ダンジョンに挑むには必ず貰わなければならないこの許可証は位置情報がわかる発信器の役割も兼ねており、ダンジョン帰りがあまりにも遅ければ捜索依頼が冒険者ギルドに出されるシステムになっている。
それによって新米冒険者の保護を図っているのだ。
俺は受け取った許可証の内一枚をエリスに渡し、装備している革鎧を確認してから改めてダンジョンの入り口を下っていく。
「死にたがりの英雄」初のダンジョンアタックのはじまりだ。
カツン、カツン、とブーツが鳴らす足音は前後に分かれており後方にいるのが俺の足音だ。
このまま1分ほど降っていくと空間が平原へと切り替わるから、階段で隊列をあらかじめ組んでおく、そうする事で切り替わりと同時に戦闘になった際に混乱を起こさずにすむという冒険者の知恵だ。
歩いているうちに目の前のエリスの姿がふっと消える。ダンジョン一層についたのだろう。
俺も後に続くと少しの浮遊感の後、平原へと景色が切り替わった。
まずは周囲の索敵だ、ここからはもういつ敵が襲ってきても不思議ではないのだ。
一通り辺りを見回しても魔物の影はなく、ひとまず奇襲、という事態は避けられたようでホッとする。
その様子を見たエリスから「一層からビビりすぎなのよ!」なんて剛毅すぎる言葉が飛んできたが俺はこの警戒をする行為を止める気はない。
英雄の加護はいつだって俺の命を削り、尖らせようとしてくるのだ。
とはいえ安全なことは安全なので、エリスに先は進むように促すと彼女はポーチから盾を取り出して装備をし、二層の階段のある方角へと進んでいく。
エリスの後をついていくこと十数分、進行方向の視界ギリギリに魔物の集団の影が見えた。
目に魔力を流し少しだけ視力を強化すると人型の魔物が6匹だということがわかった。
「エリス、前方このまま3分ほどのところにヒトガタ6体発見。たぶん、ゴブリンだ。どうする?」
と、自分の見たことを伝える。
すると
「ええ、見えてるわ。このまま直進して素直に当たりましょう、肩慣らしにはなるはずよ」
と答えると共に走り出していく、その速度はかけ足よりも速い。
俺も負けじと走り彼女を追うと、あれだけあった距離が数十秒で縮まった。
こちらに気づいたゴブリン達だったがエリスは勢いを落とさず突っ込んでいき、その左手に持つ金属盾で先頭のゴブリンを思いきり殴りつける。
中位ジョブの冒険者の一撃は女性のものであったとしても強力で、顔を殴られたゴブリンは
ボゴン!
という音共にその顔を陥没させ1m以上吹き飛ばされる。
縦を振り抜いたエリスは手を休めることなく、今度はその右手に持った幅広のロングソードで仲間のあっけない末路に茫然とするゴブリン達を斬りつける。
ブゥン!ブゥン!
と風を斬る音が4度聞こえると、音の数だけゴブリンの首が宙を舞う。
未だ立ったままの首より下の身体から鮮血が舞い上がるとエリスは左手に持った半身を覆えるサイズの盾を器用に使い、傘のように血を避けている。
だが、そんなエリスの背後で最後の一匹が棍棒を手に襲い掛かる。
気づいているはずなのに、彼女はゴブリンに対して一瞥もくれない。
代わりにこちらへと顔を向ける、なんとかしてみろということだろう。
俺はすぐにデバイスを操作して弓を装備すると、ゴブリンに向かって矢を放つ。
放たれた矢はエリスの脇を抜けゴブリンの眉間に綺麗に吸い込まれる。
そうしてゴブリンを全滅させたのだが、そこに勝利の余韻はなく、感情の赴くままにエリスへと詰め寄る。
「エリスッ!何を考えてるんだ!!なぜ、最後動こうとしなかった!?」
「何故?って、別に動かなくてもいいと思ったから動かなかったのよ。ゴブリンの攻撃なんかじゃこの鎧はビクともしないし、あんたが中距離でどれだけやれるか見たかったのよ」
エリスの言う通りゴブリン程度の攻撃を受けたところで彼女にダメージなど殆どないだろう、だが万が一ということもある。
ああいった行為は決して褒められたものではない。
俺の実力が見たいのならばただ、その場から離れる。それだけでいいのだから。
「とにかく、今後はこういった事はやめてくれ。俺たちは死地に飛び込むことを良しとするだけで死のうとしてるわけじゃないだろう?」
「はいはい、英雄サンは心配性ね〜」
今後は改めるように釘を刺す俺に対してふざけた態度をとるエリスに、これからの事を思うと頭が痛くなってしまった。
俺の心配をよそに、それからの探索は何事もなく進行していった。
最初の一戦以降エリスは油断する事もふざける事もなく、盾を使い攻撃を受け流すことに徹していて、それを俺が刀や弓を使って倒していくというパターンを繰り返していった。
どうやら本当に一度見てみたかっただけのようで探索そのものを舐めているわけではないのがわかり、俺はそっと胸を撫で下ろした。
第4層に降りる頃には俺も冷静にエリスの動きを観察することができた。
彼女の前衛としての働きは俺から見ても見事なものだと思う。
道中一度だけゴブリンの戦闘時に死角からはぐれ魔物のウルフドッグがゴブリンに対応しているエリスに対して奇襲を仕掛けてきて、「これは一撃もらうな」と思ったのだが、彼女は目の前のゴブリンをウルフドッグに向けて盾で弾き飛ばし結局その鎧に傷をつける事はなかった。
そんな一芸を見せた彼女は戦闘終了後盾の汚れを拭き取りながら
「英雄の加護があってもこれだけ弱いと何も変わらないものなのね」
とひとり呟いていた。
だからこそこのスタット平原を選んだ訳なのだがもう忘れてしまったのだろうか。
この頼もしい前衛には抜けたところがあるのを再認識する、という一幕があったものの俺たちは滞りなく第五層フロアボスのいる扉へと辿り着いたのだった。
平原にポツンと存在するその扉の前で、一応エリスに状況の説明をする。
「エリス、本来ここのフロアボスはゴブリンナイト三体の編成だっていうのは知っているよな?」
「もちろん知っているわ!それがどうかしたの?」
エリスは俺の言わんとすることがわかっていないみたいなので、それを補足していく。
「英雄の加護はその深さに応じて、試練を与える。フロアボスはその影響を受けやすいんだ。だから、中にいるのはただのゴブリンナイトじゃないかもしれない」
「あぁ!そういうことね!でも大丈夫よ。ゴブリンパラディンくらいなら1人で三体は相手に出来るもの」
エリスの言うゴブリンパラディンは初級冒険者には手に余る相手だが、中級の冒険者の俺たちであれば余裕を持って対処できる相手だ。
だが、英雄の試練はその程度じゃない事は身をもって知っているために俺は更に言葉を足す。
「それ以上かもしれないんだ。最悪ホブゴブリン種が魔法の武器を使って10体と出てくるかもしれない」
「うぇ!?ミロヤの加護ってそんなに深いの!?道中たいした事なかったから実はそんなにすごくないんじゃないかって思ってたのよね」
「そうだ、だから攻撃は俺に任せてエリスには出来るだけ防御に徹して欲しい」
「う〜、わかったわ…確かにホブゴブリン種が10体もいたら攻撃を捌くだけで手が空かないもの」
「わかってくれたならよし!それじゃあフロアボス戦行ってみよう」
俺のこの今までの過剰とも言える心配の理由をエリスにもようやくわかってもらえたようだ。
程よい緊張感は安定した攻略を産む、これで憂いは無くなったので小休止の後フロアボスへ挑む事にした。
その際エリスは俺の渡した串焼きをおいしそうに頬張っていた。
あれから時間が経っているというのに湯気が経ち温かさを保っている串焼きを見るに、エリスのマジックポーチは保全の魔法が付与されている高級品だろう。
中級の冒険者でもあの若さで持っている者は少ないだろう値段のついている品だ。
意外といいところのお嬢様だったりしてな、なんて思いながら、俺はデバイスの最終チェックをする。
このデバイスというものはここ十年で普及し始めたもので、錬金術と高度な魔導科学によって作られた冒険者であればまず手に入れるべき魔道具の一つだ。
どんな原理かわからないがこの腕輪型の魔道具はマジックポーチに紐づける事によって、中にある武具を登録して、登録した武具を瞬時に呼び出せるとんでもアイテムだ。
俺のような適正のある武器がたくさんあるジョブどころか武器を一種類しか持たないジョブであっても重宝する。
さすがに俺のような使い分けをしない限り、ダンジョン内では装備を外したりなどしないが、ダンジョン外で特に便利だ。
日常生活や室内などの狭い空間で長い槍や斧などを持ち歩くのは結構大変だ、武器というものはとにかく嵩張るのだ。
だから両手をフリーに使えて、空間拡張されたマジックポーチに入る分ならなんだって携行できるこのデバイスは正にかゆいところに手が届く世紀の発明なのだ。
爆発的に普及したこれは値段も高くなく、中級冒険者で持っていないものなどいないほどだ。
そんなデバイスの最終確認を終えた俺は、何かトラブルがあった時のために一番攻撃力の高いスキルが使える刀を装備するとエリスに準備が終わった旨を伝える。
「エリス、俺のほうは準備万端だ。そっちは大丈夫か?」
「だいじょーーぶ!もう待ちきれないわ。早くいきましょう!」
「気合い十分って感じだな、それじゃあ…頼むぞ」
俺の言葉を最後にエリスはボス部屋の扉を開けていく。
周りは平原だというのに扉の先は部屋になっているのに、新人の頃は驚いていたなと懐かしい気分になりながら、ボス部屋のなかを注意深く見つめる。
すると、石造りの壁に囲まれた部屋の中央に大きな影が一つ。
その影は目算で大人三人分程ある体高にオーガのような筋肉に覆われた巨体、極め付けは子供の胴体ほどの太い腕に握られた大きな大剣だろう。
その怪物の名前はゴブリンチャンピオン。
武器なしでDランク上位の怪力を持つ魔物だが、その危険度は武器を持つ事で跳ね上がっていく。
見たところただの鉄の塊のような大剣だが、その腕力で振るわれる攻撃をまともに喰らえば俺の身体など引きちぎれてしまうだろう。
それは重装備のエリスだって変わらない、当初の予想を上回る怪物の登場に怯えていないかと様子を見やるとただ真っ直ぐにチャンピオンを見据えていた。
豪胆な彼女に関心しつつ、俺も武器を構える。
エリスが動くのと巨体が動くのは、ほとんど同時だった。
駆け出す彼女に向かって振り下ろされた大剣を彼女は左手の盾に右手も添えて受け止める。
ガゴン!
と金属同士が激しくぶつかる音が響きわたる。
一撃を受け止めた彼女の体は一瞬浮き上がりかけたがすぐに持ち直した。
俺はなんとか敵の攻撃は受け切れるようだと安心する。
続け様に放たれた横薙ぎの一閃を更に受け止めるエリスだったが、数瞬前と違い彼女は片手で受け止めていた。
きっと騎士系の盾スキル[要塞]を使用したのだろう。
これは本人が受け止め切れる攻撃であれば地に脚つけ続ける不動の防御を行えるものだ。
最初の一撃は耐えられるか分からなかったからだろう。
もし耐えられなければ、スキルの性質上空間に固定されたまま胴体を叩き斬られていたはずだから。
彼女がタンクとしての仕事を果たすならば俺も遊撃として仕事をしなければならない。
子供と大人のような体格差の攻撃を受け止め続けるエリスの為に、こちらに意識を向けていないチャンピオンのガラ空きの背中に向かって刀のスキルを叩き込む。
「いくぞ、不細工!次元流抜刀術[孤鷲三爪撃]!」
攻撃を当てる確信を得るのと同時に意識をこちらに向けさせる為雄叫びをあげる。
意味は分からないまでもその言葉の挑発を感じ取ったのか一瞬、エリスに対する攻撃の手が緩みその隙に彼女はチャンピオンの間合いから離脱する。
その直後俺の放った斬撃はチャンピオンの背中を袈裟掛けに斬り付ける。
一度に3度斬りつけるそのスキルはチャンピオンの体に深手とは至らないが確かな傷を三箇所に負わせることができた。
「グ…ガアァアァァァァア!!!」
斬り付けられたチャンピオンの叫びに気を取られるわけにはいかずすぐにその場を離れる。
すると痛みから無茶苦茶に振り回された腕がブォンという風切り音と共に先程まで俺のいた場所を通過する。
直撃すればただではすまない一撃が、ただ痛みに悶えるているだけという事実に冷や汗が伝う。
やがて立ち直ったチャンピオンは下手人である俺に狙いを定めたらしく執拗に俺をその大剣を振るいはじめる。
それを必死にかわしていると少し離れた位置から
ガンッ!ガンッ!
と金属同士を叩きつける音が聞こえた。
エリスが盾と剣を打ち鳴らしているのだ。
「こっちよ!デカブツ!あんたの相手はわたしじゃない!!」
魔力の乗ったその音は挑発効果があるようで先程の猛攻が嘘のように魔物はその矛先をエリスへと向けた。
「エリス!もういいのか!?」
そう問いかける俺に対して
「ええ、もう十分溜まったわ」
とだけ返し、青白く刀身が光るロングソードを正眼に構えると真っ直ぐにチャンピオンを見据える。
「グオオォォォオ!」
「そろそろくたばりなさい![反攻アァァァァア!」
尚も叫びながらエリスへと突撃するチャンピオンに対して、彼女は裂帛の気合いと共にその閃光迸る刀身を振り抜いた。
エリスのロングソードは怪物の首を文字通り消しとばし、残された身体を力なく横たえさせた。
[反抗]は盾で受けたダメージをエネルギーとして攻撃に転化する騎士職特有のスキルだ。
その威力はダメージを負えば負うほど跳ね上がっていく。
強力なスキルな反面扱いが難しく、スキルを刀身に纏わせるのに時間が必要だとエリスは言っていた。
だが、そのデメリットを無視しても圧巻の威力だ。
俺の攻撃など要らなかったんじゃないかと思う程に。
そんな俺の気を知ってか知らずかエリスはあっけらかんとしている。
「ミロヤ、時間稼ぎお疲れ様。私たちって結構相性いいんじゃない?」
なんてことを言ってくるのだ。
この頼もしい仲間を得られた幸運に感謝しながら
俺はボス討伐の報酬である宝箱を探す。
ボスを倒すと必ず部屋の中央に何が入っているかわからない宝箱が出現するのだ。
ここは初級のダンジョンだから良くて弱い魔法効果の付与されたアクセサリー程度だろうが、難しいダンジョンであればある程価値のあるものが入っているらしい。エリスの探す至天の覚書が良い例だろう。
宝箱はチャンピオンの死体から少し離れたところに出現していた。
二人の一番はじめの戦果だ、出来るなら二人で一緒に確認したい。そう思いエリスに声をかける。
「エリス!宝箱を確認しよう、こっちに来てくれないか?」
「ごめーん!一人で開けちゃって〜。わたししばらく動けないわー!」
とひらひらとこちらへ手を振ってきた。
スキルの反動により動けないのだろう。
残念だが仕方ない、俺は装飾の施された蓋を開ける。
「中身は…ミスリルのインゴッドか」
これは中々の当たりといえる。
D級ダンジョンでたまに出てきたが、金貨にして50枚の価値がありその日はパーティーメンバーと朝まで酔い潰れるまで呑んだ記憶がある。
望外の臨時収入をマジックポーチに突っ込んでエリスに向き直った俺は、今日一番の声を張り上げた。
「エリスーーーーーーー!!!よけろっ!!!
」
ブォン!
俺の叫びに得心がいかない表情を浮かべたエリスは、その下半身を残して俺の後方、はるか壁まで吹き飛んだ。
俺が見つめる視線の先にはその手に持つ鉄の塊を振り抜いた姿勢の首無しの怪物がいた。
だが、それで力を使い果たしたのか。
死体はついに、ダンジョンへと霧散していく。
「[今際の一撃]かクソッたれ!!」
油断した!英雄の試練を難なく突破した気になって、その結果がこれか!!
後悔もそこそこに俺はエリスに向かって走り出す。
飛ばされた衝撃で兜が脱げたのか、そこから見える顔はまるで死人のよう。
分たれた上半身の出血を止めるべく、千切れとんだ断面に治癒促進の符術を行使すると脈を測る。
「脈が…ない…」
次いで呼吸を確認するが、反応はない。
「死なせて…たまるかよ!!」
やっと見つけた仲間なのだ。
これからもやっていけるとたった今証明出来たはずなのだ!
諦めきれない俺はいつか聞いた僅かな期間に死んでしまった肉体を完全に再生すると息を吹き返すこともある、という噂話を思い出すと驚き目を見開いたままの少女の目を閉じ、軽くなってしまった血塗れの身体を抱えて走り出す。
あの時は仲間の死を受け入れられない冒険者の妄想じみた与太話だと思っていたが、今はその様を笑えない。
死んでも良いと思っているやつを集めたくせに、いざ仲間だと思い始めたらこれだ。
肉体の欠損を治せる回復魔術師を呼ぶには大金が必要で、ミスリルのインゴッドと合わせた二年の間に貯めた貯金でも足りるかはわからない。
それでも、助かる可能性があるのなら!
身体を限界まで強化して道中の魔物を全て振り払いダンジョンの出口を目指して駆け抜ける。
すれ違う初級冒険者たちが驚いていたが、気にする余裕はない。
「頼む、間に合ってくれよ…!」
ダンジョンの出口はもうすぐそこだ。
表現も甘く書きたいと思った出来には程遠いのですが、我慢できず掲載しました。
そのうち加筆されると思います。
いつもより長めの駄文失礼いたしました。
そして本編ですが、ようやく仲間を見つけたミロヤくん。
しかしその仲間は物理的にお別れしてしまいました。
もし、エリスが死んだとわかれば仲間を失った少年はどうなってしまうのでしょう。
さて、次回 「第七話 呆れるほど 大きな声で」
お楽しみに!
感想好評化お待ちしております。