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第五話 ジョブってなんなの?

今回はジョブの説明がほとんどです。

 再びギルド中の注目を集めたエリスの発言の後、俺はマチルダにパーティー結成の申請を頼むとダンジョンへと挑む際の詳細を簡単にだが詰めることにした。

 エリスは以前、敵の攻撃を受け止めるパーティーの盾、タンク役をしていたと言っていた。ならば、彼女にはそのまま前衛を担当してもらうのがいいだろう。

 ならば問題なのは俺のポジションだろう。

 中遠距離の攻撃手段を持っているとはいえ、どちらかというと近距離の戦闘の方に自信がある。

 しかし、今はまだ頭数が二人と少ないのだ、冒険の危険度は平均的なパーティーよりも高い。

 ならば生存率を高めるために少しでも連携を取りやすくするべきだろうと考えた俺は、再び兜を被りその特徴的な外見を隠したエリスにも意見を求めることにした。



「エリスには経験のある前衛を担当してもらおうと思ってるんだが、困った事に俺は自分が前衛をやるか後衛をやるかこれと決まっていないんだ。君からなにか要望があればその助けになるんだが…何かないか?」



 水を向けられたエリスは、唸るような声を出すと頭を傾げながら逆に質問をしてきた。


「わたし、ミロヤのジョブについてよく知らないのよね〜。オリエンタルって言うくらいだから東方の国でよく見られるジョブなんだろうけど、具体的にどんな事ができるの?」



 どうやらエリスは俺のジョブについて詳しくないらしかった。大陸ではめずらしいジョブであるのは以前のパーティー経験からその質問を予想していた俺は鞄から一枚の紙を取り出してエリスに手渡す。


「具体的に…か。一口で説明するのは難しいからまずは俺のステータスの写しを見て欲しい。それで、なんとなくはわかるはずだ」



「そう、じゃあ見せてもらうわね」、そう言って俺の手渡した紙を読み始めるエリス。



 いまエリスが読んでいるのは看破の魔道具ディテクタルによって測られて数値として可視化された俺自身の能力値、それと保持スキルが書き写されたステータスカードだ。

 このステータスカードが今日の冒険者、いや、ジョブを持つ全ての人間に大きな革新をもたらしたのだ。

 本人の気づいていない才能さえ測ってしまうこの魔道具は、それまで曖昧になんとなくこのジョブはコレが得意、大体これくらい強ければこのスキルが使える。

 といった感覚に依存し、遅々として進まなかったジョブに関する研究を一気に推し進めた。

 このジョブは○○レベルでこのスキルを覚える、この魔力値であればあの魔法を覚えられる、スキルの使い方はこうである、といった事実が次々に解明されていった。

 そして起こったのがジョブの立場逆転現象「春の嵐」だった。


 それは今まで弱いとされていたジョブやスキルに新たな使い道が見つかり、それが非常に有用であると評価が逆転した一種の技術革命の通称である。

 例を挙げるならば弱体化系魔法を多く有するジョブ付与魔術師だ。今まではその魔法がどれくらい敵を弱くしているのかがわからず活躍度合いの評価が難しかったものが数値化された事でその性能が決して軽んじていいものではないことがわかったり、有用であるとわかり奮起した該当するジョブに就いている者が必死に研鑽を重ねた事で「多重詠唱」や、「重ね掛け」などのスキルによらない新たな技術が生まれたりもした。

 こういった技術を体得するのは非常に多大な努力と才能を要求されるが、先に挙げた二つの技術を扱える付与魔術師は文字通り戦局をひっくり返すものとなった。

 なにせ味方へのバフ魔法を重ねて掛け戦力を底上げして、弱体化によって敵はその力を半分にまで落とす。それを多重詠唱によって僅かな時間で終えてしまうのだ。

 それがどんな結果をもたらすのかは戦闘などしたこともない街の子供にでもわかる事だろう。


 その他にもさまざまなジョブで他種多様な技術が開発されたことで、もはやジョブによる格差は絶対的なものではなくなったのだ。



 ならば俺の持つオリエンタルのジョブは一体どんな事が出来るのか?

 ひとことで言うのであればオリエンタルは戦闘においては()()()()()()()といえる。

 俺の故郷。東洋の国「ヤモト」では古くから武芸百般と言われてきたジョブであり、武器であれば刀剣や弓、槍と広く扱いに長けている。

 また符術という大陸の魔法とは違う、魔力と触媒を使った特殊な魔法を用いて遠近物魔両方に対応できるジョブである。


 これだけだと非常にインチキ臭い性能をしている恵まれたジョブに聞こえるが、反面そのステータスの伸びは悪く、一芸を極める黒魔導士や剣士系のジョブと比べると一歩劣るという器用貧乏なジョブなのだ。

 だからこそ俺は色んな穴を埋めるのには便利だということもあり66回もパーティーを組むことができたし、こうしてエリスの意見を参考にポジションを変えようと思っているのだ。



 そうして思考の海に沈んでいると、ステータスカードを読み終えたエリスから声がかけられる。



「ステータス、全部読ませてもらったわ。言っちゃなんだけど…前衛をやるにも後衛をやるにも微妙な感じよね。前衛としては武器の適正が最適と言える評価のものがないし、後衛をやるには手数が少ないし…決定打となるような強力そうなふじゅつ?もないもの」

「中々手厳しいな…だからこそ、エリスにとって連携がとりやすいような立ち位置につきたいんだ。どちらかといえば、程度でいいから何かないだろうか」



 エリスからの至極当然な意見に対して、俺の返答は情けないものだった。

 なにをやるにも半端で自分で決めれないから決めてくれ、と言っているのだから。

 それでもエリスはそれを笑うようなことは無く真剣みを帯びた声でこう言った。



「わたしとしては私の少し後ろに位置して遊撃をやった方がいいと思うわ。二人で遊撃もなにもないかもしれないけど、私が敵を受け止めている間に有効な手札を選んで柔軟に対応するのが良い…と思う」



 エリスの意見には一理あるだろう。物魔両刀の俺なら敵の弱点も比較的突きやすいだろうし、俺よりも堅いエリスが攻撃を受け止めている間にそれ見極めることができる。

 その代わりエリスには少なくない苦労をかけてしまうだろうが。



「遊撃か、エリスが良いと言うならその作戦で行きたいと思う。その、君の負担は大きいと思うが…よろしく頼む」

「まかせておきなさいって!あんたは大船に乗ったつもりで守られてればいいの、敵の攻撃はこのエリス様が絶対に止めてみせるから!」



 自信たっぷりに言い放つ彼女の声に俺は頼もしさと共に、「こいつやっぱりうるさいな…」という二つの感想を抱くのだった。



はい、これで次回はダンジョン探索に出かけられると思います。

正直自分でも2人で行くのは無理じゃね?と思っていますがそれはそれ。

彼らは成長過程ですが決して弱いわけではないので低難度であればうまいことこなせるんじゃないかと信じています。


では次回、「第六話 迷宮を駆ける」ご期待ください。


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