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愛し合う二人

完結話です。

 気がついたのは、王宮の主賓室のベッドの上だった。


 重い瞼をあけると、まずオウカのかっこかわいい顔がみえた。それから、カッツとナミの顔もみえた。

 

 部屋の外には五人兄弟が控えていて、わたしが目覚めたとナミが伝えると歓声がきこえてきた。


 わたしは、あのあとずっと眠っていたらしい。


 気が遠くなるまえ、妹と義弟はわたしがふっ飛ばしてしまった。


 もちろん、わたしが投げ飛ばしたりなんていう物理的にではない。


 ふっ飛ばされて気をうしなった彼女らは、異常を察して部屋に飛び込んできたカッツと五人兄弟、それから王宮の衛兵たちによって捕まった。


 いまは二人とも病院にいるらしいけど、裁判で裁かれた後、牢に繋がれることになるらしい。


 身内がそんなことになってしまったけど、妹とはもともとうまくいっていなかったし、なにより両親を殺したんですもの。


 オウカからその話をきいても、正直他人ごとにしか感じられない。


 国王となるマグナと国賓のオウカを殺害しようとしたんだもの、自業自得かもしれない。


 その報いは、しっかり償うべきだわ。


 上半身を起こすと、オウカがすぐに背に腕をまわして支えてくれた。


「マイ、無理をしないで」


 かっこかわいい顔が、心配でいっぱいって感じになっている。


 それがまたキュンとくるほどかわいい。


 カッツとナミは、気を利かせてか主賓室からでていった。

 

 でも、二人がでていった瞬間、部屋の外でまだ歓声をあげつづけている五人兄弟に、ナミが「静かになさい」と叱りつけた。


 ナミったら……。


 いまの叱声は、戴冠式がおこなわれている式場まで届いたかもしれないわ。


「マイ、わたしを許してほしい。マグナ殿の助けになりたいというのもあったが、なにより、きみのご両親のことをはっきりさせたかったんだ。ハルたち五人兄弟に、第三皇子が潜ませている部下を排除するとともに、ききださせたんだ。どうせ、かれから命じられて手を下したのは、どうせおなじ部下たちにちがいないからね。それがまさか、あのような暴挙にでるとは……。わたしの読み違いだった。人間ひとがいざというときに、どんなことをしでかしたり力を発揮したりするか……。人間(ひと)ではないわたしにはわからないから。しかし、そのおかげできみの声がきけて、すごい力を感じることができた」


 かれは、わたしと視線をあわせたまま語った。


 やはり、わたしは声をだしたんだ。いいえ、だせたんだ。


 無我夢中だった。だから、まったく実感はなかった。


「きみの力は、聖女の力。しかも、大聖女の力だ。ふふっ、マグナ殿が口惜しがっていたよ。きみなら、王宮付きの大聖女にふさわしい。だから、新しき王となる自分に祝儀として口添えしてくれないかと。『大聖女として加護を授けてやってほしい』、とね』


 かれのかっこかわいい顔に、今度は茶目っ気たっぷりの表情が浮かんだ。


「即座に断ったよ。たとえドラン国がわが国に宣戦布告しようが、侵略してこようが、きみはぜったいに渡さないとね。マグナ殿を落胆させてしまったが、かれはきみを王宮付きの大聖女と同様の待遇をすると約束してくれた。きみは、わたしとかれの命の恩人でもあるから。かれがきみにいっていたとおり、かれのものだった領地は、エンドー公爵家のものになる」


 かれはいったん言葉をきってから、「かれは、本当にいい男だ」とつぶやいた。


 それはそうよね。だって、オウカが認めている男なんですもの。悪い男のはずはないわ。


「いいんだよ、マイ。言葉も力も、あのときはなにかの拍子に覚醒し、いっきに放出されただけなんだろう。だからこそ、きみは力尽きて倒れてしまった。どちらも、これからゆっくり使えるようにしていけばいい。それをわたしにも手伝わせてくれたらうれしい」


 かれの穏やかでやさしい声をきいていると、また眠くなってきた。


 無理する必要はない。かれのいうとおり、一度はでたんですもの。時間をかければまたでてくるはず。


「あ、忘れていた。ラリーだったかな?かれとかれの婚約者も、この件に関わっているらしい。そのことについては調査中らしいから、まもなくあきらかになるだろう」


 さすがはおバカなラリーね。どのように関わっていたのかはわからないけど、妹たち同様犯した罪は償うべきだわ。


「さぁ、ゆっくりお休み。体が元に戻ったら、わたしたちの場所にもどろう」


 かれは、わたしをぎゅっと、それでいてやさしく抱きしめてくれた。


「マイ、心から愛しているよ」


 そして、さりげなく右頬にキスをしてくれた。


「わたしはもっと強くなる。そして、きみが心安らからにすごせるよう、いつも笑顔で暮らせるよう、わたしは全身全霊をもってきみを守り抜く」


 かれはわたしの頬から唇をはなすと、わたしの瞳をのぞきこんできた。


 かれの蒼色の瞳に映っている。


 短い髪の女が……。


 そのきれいな蒼色の瞳の中にいるのは、言葉だけでなくたくさんのものをうしない、不愛想で不器量な「氷の女」ではない。


 愛する男性を含めてたくさんの大切なものに巡り合えた、幸福で前途ある「しあわせの女」である。


「オウカ、愛しています」


 わたしは精一杯笑顔にして、びっくり顔のオウカの唇に自分のそれをさっと重ねた。




                                 (了)


つたない拙作に最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

まったくのジャンルちがいに戸惑うことばかりでしたが、短編のつもりで書きはじめて気がつけば四万文字近くになっていました。


マイとオウカのお付き合いや苦労はこれからです。

機会がありましたら、その後もなどと思っております。


あらためまして、拙作をお読みいただきましたすべての方に心より感謝申し上げます。

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