死との出会い 佐藤side 3
遂に佐藤sideが終わります
目の前の少女から発せられた「精霊」という言葉に私はとても信じれそうになかった、あの容姿から感じる雰囲気からはとても精霊という二文字は余りにも似つかわしくなくしかもその姿を見れば見る程自分が吸い込まれそうになる感覚のおかげで頭がおかしくなりそうになるが力を振り絞って言葉をつづる。
「闇の精霊ジール・・・お名前をお聞きしたからにはこちらもお答えしないわけにはいきません。私の名は佐藤鑑載、愚か者だと思っていただければと」
そういった瞬間少女から放たれていたオーラが消えうせ、ようやく心が解放され私は片膝をつきはぁ、はぁと呼吸する。
少女は私を試していたのか?
私は私の目の前にいる少女が何がしたいのか訳が分からなかった、先ほどの私に掛けていた圧力といいまるで私と言う存在を見極めようとしているのかもしれない。少なくとも敵対はしていないとは思いたいが自分の今の存在を思うがままに出来るのは少女だろう、なんとか働きかければこの状況を打開出来る筈だろう。
「愚か者ね?確かに君は目標の為には何でも利用し満たしようもない向上心を持ちその利己心でのし上がってきた本能に忠実で衝動的な男だ、だけどそれは本当かな?」
その言葉を聞いた瞬間私の中で何かが燃え上がるのを感じた、だが憤怒によるものか悔恨によるものなのかわかりようはなかった。なぜなら三途の川に来てから永らく感情がほぼ無いに等しい時間を送り今まで理性に支配されていた私に再び感情が戻ったからだ、蓋をしていた色々な感情が胸の内から湧き出り発狂と言う形で出そうになるが私は立ち上がりそれを言葉に変えて叫ぶように言った。
「私は国の為に尽くしたがそれは‘限界まで自分を試したい‘という衝動によるものだ、しかしそれは問題ではない私はあの死ぬ前に暗殺者に対して手を抜いたことが許せないのだ!私は今まで些細なミスを犯す人間ではないのにッ!私と言う存在が無ければあの国は延命のみならず崩壊の一途を辿っていたというのは周りからの周知の事実であったがゆえに私はその事実に甘え政治を独裁するようになった。そう、私は自分の才能に酔っていた所為で死んだのだ!確かに国を変える行動力や知恵はあっただろうが自分の才能に溺れるという最悪愚か者はいないだろう」
溜まっていた感情を吐き出した私にジールは不敵な笑みを浮かべこういった。
「じゃあボクはそんな君に聞くけどもしその政治手腕をもう一度振るえるきっかけがあるとしたら君はそれに乗るかな?」
そういわれたらこう答えるしかないではないか、私はこの体になってもあの時に経験した自分の実行した行動が国を民を左右してしまうというスリルに名首相として称えられて心の満たされた感覚・・・もっとほかの経験が私を政治の世界へと戻させるのだ。私はジールに対して欲望をむき出しにして答える。
「ああ、どんな形であっても誰かをサポートする立場であっても自分に教えたり実行の意志があるのなら乗るだろう」
「さすが大国を翻弄した男だ、ボクはそんな君に大事な契約を求めよう。もちろんさっき君が言った意志は守られるけどその代わりに肉体の行動権は肉体の魂の者だがね?」
「契約の詳細は」
「ボクと契約しているヒューマンの一族の長の青年が戦争で危篤状態になっていてその青年を助ける為には魂が必要だそれも無垢ではなく君のような立派な魂がね。そして君は青年の回生の素材となり魂を融合してもらい、宿主である青年は行動権や思考権といった生きていく上で必要な権利は全て許可し君は青年の魂の片割れとして思考のみの権利のみを許可する。そういうような契約さ」
「契約については理解したが私の知識は役立つのか?」
「それに関しては気にしなくて大丈夫さ、時代背景は君の所でいう近世らへんで青年は一国の長だ君の手腕を見事に発揮することが出来る」
それを聞いた私は少しの間迷った、ジールの言う話が100%本当とは限らないからだ。融合という聞きなれない単語が不信感を若干助長させるが一息吐いた私は覚悟を決めた。
この契約が嘘でもいい、ただ私はこのチャンスに飛び込むしかない!そうだその意気その気持ちだ!
「その契約乗った!」
ジールは待ってましたと言わんばかりに両手で自らの肩を抱き、そしてその両手を大きく開いて歓喜し喜びに満ちた声で言った。
「ご名答!ボクはその言葉を待っていたよ!契約はこれにて成立だね、まだ聞きたいことがあるのなら今のうちに、ないならボクに近づけばいい」
もう聞くことは無いだろう、ただ進むだけだ。
私は履いていた革靴で再び暗黒の地面を踏みしめた、一歩目はここに自分という存在が居たことを遺すように。二歩目は自分の覚悟を更に固めるように、ジールの目前に迫った三歩目で私は残った私の全てを彼女に託し・・・私はジールによって更なる暗黒へと吸い込まれていき意識をまた失った。