死との出会い 佐藤side 2
45歳のイケイケなおじ様は超常存在と遭遇するようです。
拳銃に脳天をぶち抜かれ気を失ったはずの私は謎の浮遊感に襲われた、これはまるで若い時に体験したパラグライダーのような感覚がし驚いた私は目を見開いた。眼前に広がるのは紫色に輝く大河と黒い大地であったのだ、あまりの光景に私の心の内は疑心と驚愕に支配されさらには「地獄に落ちたのだと」思わず考えてしまった。神や霊の類を信じて来なかった私がこんな発想に至るなんて私らしくもない。が、今まで重ねてきた業を振り返っいてみれば地獄に落ちて当然だと思う。
しかしあの世か今生なんなのかわからないこの空間でも時は流れ、そうこうしているうちに大地が迫っていき私は思わず両手を顔の前にクロスさせて防御を図り衝突に備える。が、いつまでたっても予見していた衝撃らしいものはなく恐る恐る閉じた目を開き立ち上がる。推定高度数百メートルから落下した自分の体は恐ろしい程無傷であったが、先ほどまで身に着けていたスーツはボロ雑巾よりひどい有様でありよく見てみるとあらゆるところが引き裂かれて悲惨な状態であるものの原型をとどめているのが唯一の救いだろう。
ここは何処だろうか?
辺りを見渡しても人っ子一人誰もいない空間で私は茫然と立ち尽くす。履いていた革靴で黒い砂が広がる暗黒の大地を踏み込んでいきただ歩き始める、一体ここは何処なんだ?拳銃に撃たれる瞬間まで記憶しているがもしや・・・‘ここはあの世である‘と遂に確信に至った私は硬直し、「死」という現実を突き付けられ打ちひしがれた。だがこの体は既に肉体ではないのか悔恨や悲しみといった感情が湧いてこずただ感じる事が出来たのは胸の苦しみだけだった。
なぜ私は暗殺に対策を練ってきたのにあの日だけ怠ったのか?
「もっと・・・一国の首相としての生を続けたかった。」
そうつぶやいた私は電池が切れた機械のように暗黒の大地へと突っ伏した。
そして‘もう一度国を率いる生を得たい‘という願望を遺して眠った。
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あれからどれだけ気を失っていたのだろうか、気が付けば自分の体は暗黒の地面に覆われていた。しかし微かに砂を掘り起こすような音が聞こえてくる、疑惑でしかなかった微かな振動音が近づけばそれは確信に変わり私は願った‘天使でも悪魔でもなんでもいい!どうかここから出してくれ!‘と。
そう願った瞬間体中に電流とは何かが違うものが流れ、私の体は深い砂の中から一気に引っ張られた。引っ張る力が余りにも強く体が宙を少しの間だけ舞い尻餅をついて着地した。
「おー君まだ自我があるんだねー、こんな魂なかなかお目にかかれないな~」
すると少年のような少女ような中性的な声が私に語り掛けた、その声の先へと視線を向けるとそこにはワンピースを着る少女を象った黒い暗黒のようなシルエットをした‘人外‘と呼ぶにふさわしい存在が居た。
そして少女は口を三日月のようにぽっかりとそこだけを後ろの景色が見えるように開けさせ言った。
「ボクの事を人外だなんて心外だなぁ、まぁ君とは初対面だから名乗らせてもらうよボクの名は闇の精霊ジール、闇魔法のスペシャリストさ」