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死との出会い 佐藤side

拙い文章ですがよろしくお願いいたします。

 2041年冬、北極海航路の開通で世界の物流が大きく変化し、日本は北海道に重要な寄港地である釧路港を有しある程度は豊かになったがそれは名目上にすぎなかった。日本を中心に自律AIの開発でアンドロイド産業が急速に発展したことで多くの仕事がアンドロイドに置き換わったことによる貧困層の増加、そして更なる人口減少が襲い一部の人間から「瀕死の病人」と揶揄されるほどになった日本国。


 人口が減少してなお衰えない活気に溢れる東京渋谷にて、イギリスから特注した黒スーツに身を包み中年の男性にしては艶やかな髪を七三分けに調髪料で固めた私は党員の運転手が手動運転に切り替え党員自らが運転する現代の40年代らしい美しい流動的なデザインがボンネットから透明な屋根を持つルーフ、そして車体後部であるリアバンパーに至るまでの全てに施され、非常に洗練されたデザインをした淡い青色をしたセダンに乗る。


 明るい照明が車内を照らすこの車のドアを開き。座り心地を追求したであろう後部座席のシートに座り込む。透明なリアサイドウインドウから流れる風景に頬杖をかきながら眺めていた。一見何も考えていないように見えるが頭の中は考え事でたくさんであった。なぜならこの数十分後に新宿某所の会場で行われる私が立ち上げた党、新鋭党による北海道救済宣言と有力支持者や記者を交えた会見を大手動画配信サービスで配信する予定なのだ。生まれてこの方公の場で緊張してやまない緊張症であった私は窓から流れる無骨なビル群の景色を眺めてその緊張をほぐそうとし、これからするであろうスピーチの暗唱をしていた。


 私は45歳の佐藤鑑載さとうかんさい、男だ。かつては23歳から25歳まで高校の教師として働いていたが、当時市議会議員になり政治家の道を歩んでいた互い年の幼馴染みの友人から「政治家にならないか?」と誘われ心機一転政治家を志すようになった。友人の助けもあり26歳で市議会議員となってからは持ち前のディベート能力、交渉能力が発揮させたのか日本最大の規模を誇る党「正統民主党」の元で5年で中堅の政治家へと成長し、参議院選挙に当選した。が、正統民主党に対する意義が感じれなくなった私は35歳で離党し5人の友人と共に新党「日本党」を結成し、日本の積極的な改革を訴えていき。そのかいあってか党員数は今では1000人を誇り政権獲得もあともう少しの所までに持ってきた。


 そしてその道を歩む過程で私に生じたのは「野望」だ。この野望はただ政権をどんな手段を行使してでも成すような野蛮な野望ではなく、私が憧れた世界史に誇る名宰相「オットー・フォン・ビスマルク」のように欧州を拮抗状態に持って行ったように私は北極海航路の開通により起きた新世界、旧世界の距離が縮んだことにより激化した北極海の利権争いを始め、10年前の2031年から中国大陸で起きた今でも続いている巨大なおぞましい内戦を解決に導き、この世界を少しでも安定させ、ひと時の平和を享受させることが私の野望なのだ。


 そしてその野望はすぐそこまでに迫っている。衆議院選挙が始まり中盤に差し掛かっている今、多くの国民は我が日本党の掲げる「日本党経世済民政策」に賛同している。


 4ヵ条からなるこの政策は以下の通りだ。


 ・アンドロイド産業が浸透した今、社会保障制度を一気に改革しベーシック・インカムの実現を


 ・従来の都道府県から道州制の導入を


 ・北極海航路の寄港地である銚子港にて先進都市特区の建設、設置を


 ・硬性憲法から軟性憲法への実現を


 この政策を掲げた理由は、先進国の中で行き遅れた国家体制を改革し長年低下してきた国力を底上げしていかなければならないからだ。約50年前に起きたバブル崩壊から未だに立ち直れていないこの国を何とかしていかなければならないのだ。


 一息ついた時にふと視線を感じた私はその視線の先である運転席の方を見る。黒色のセダンの運転席にいるのは日本党の党服である白を基調とした長い裾のあるコートを着て車を運転する男.....私が最も信用する男、筒井がその細い目をバックミラー越しで私をのぞきながら言った。


 「総統、俺たちはやっとここまで来れたんですね」と声音こそ淡々としているものの、バックミラーに映る彼のその表情と目は嬉々としていた。筒井195㎝もの高身長を持つ三十路後半の男で、日本党の古参メンバーの一人である、彼は顔の表情や感情の表現が苦手で不器用だが、人情に溢れ、更に三十路には見えないその美麗なマスクで周囲の人間を惹き込む。初対面の時、私はスパイなのではと疑ったが彼の発揮する実力を見て要らぬ心配をしたと後悔したことがある。そしてその格好の良い容姿と優れた広報能力のおかげか、多くの国民に我々の党について広報し日本党の知名度や支持率の上昇に寄与した重要人物だ。そんな彼がなぜ運転をしているかと言えば、それが彼の要望だったからである。


 日本党広報部部長の肩書を持つ筒井は言う。


 「総統、そういえば、新宿で上手い飯屋があるって同じ広報部の若い党員から聞きましたよ。今度お忍びで行きませんかね?」と筒井はにこやかに言う。


 私は「ああ、今度行こうか」と返事を返した瞬間この平和な状況は突如として終わりを迎える。それは東京のとある広い交差点で起こった。


 対向車線を含め交差点を走る車は十台にも満たず、私の乗るセダンが交差点の中心に差し掛かった時、対向車線を走るボンネットにいかつい大型ガードを取り付けた黒色のSUVが突如として方向を変え、こちらへと向かってきた。筒井はそのSUVを見た瞬間何かに気付いたのか眉を顰め怒気迫る表情をしハンドルを切りSUVを避けようとするが間に合わない。こんな状況に気付かず、のんきな私はそれに気づかず途轍もない衝撃に襲われた。


 私は暗転していた意識の中で微かに聞こえるサイレンと筒井の怒号、そして一つの銃声で目を覚ました。意識が覚醒し目に入った光景は車はひっくり返り、窓ガラスは粉々に割れている悲惨な光景だった。私は腰に付けていたシートベルトに引っ張られるように浮き、マット運動でやった前転を途中で止めたような姿勢になっていた。


 シートベルトに巻かれた腰が痛む、とにかく脱出せねばとシートベルトを外そうと試みる。だが手が届くもののなかなかうまくいかず数回試行した後にやっとシートベルトに支えられていた腰が解放される。左側を見てみると窓ガラスが割れており、ここから脱出しようと匍匐前進で進もうとする。匍匐で進むにつれて天井に巻かれた粉々のガラス片を腕を傷つけていき小さな出血が幾つもできる、多少の痛みを我慢しつつ外へと向かおうとした、外の光が見えた、微かな希望が見えた。だが私は運に見放されたらしく割れた窓から頭を出した瞬間、頭頂部に拳銃の銃口を当てられた気がした。嫌な予感に気付いた私はぴくッと硬直して耳元に鳴ったカチッという引き金を引いたような音がなった瞬間に意識は深い闇に沈んだ。


 

 深い闇の中に沈み切ったとき、私の意識や自我、思考の類の能力が失ったと感じた。自分というものが何かに溶かされていくような、うたかたにきえていくよう.....な.....かんかくが.....あ.....きえ.....る.....


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