7.
タカシは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして立ち尽くす。
「はあああっ!?」
「はああじゃありません!」
「これは失礼」
とにかく、暴れさせないようにとタカシは懸命だ。
「この世界は1日がタイムループしているのです! 明日が来ないのです!」
彼女が右手の人差し指を上げてそう力説するので、タカシは彼女に両方の手のひらを向けた。
「待て待て、落ち着こう」
「そう言うのは――」
「はいはい。100回目ね」
「87回目です」
「残りは……どうでもいい――いや、やっぱり聞いておこう」
「『まずは落ち着こう』が7回、『落ち着け』が3回、『待ってくれ』が3回です」
「言い方いろいろ変えてごめん。とにかく、落ち着け、落ち着こう、落ち着いてくれ」
「何かの活用形ですか?」
「これ……100回目?」
「94回目です」
「何でまた微妙な……。まあ、なんだな。名前がわからないと話しにくいから、お互い名乗っておこう。僕はタカシ。君は?」
「ニーナです」
「じゃあ、ニーナ。君は、Q科学研究所に連れて行ってくれと言うけど、それとタイムループと何か関係があるのかい? ――ちょ、ちょっと待った。いちいち、『そう言うのは100回目』なんてコメントはいいから」
「言っていません」
「言いたそうな顔、してたよ」
「してません」
「強情だなぁ……。まあいい。で、どういう関係?」
「それは、タイムループの原因となるのが、Q科学研究所の時空の実験が暴走するからです。その暴走が始まるのが午前3時の直前なのです」