2.
服を着て横たわるアンドロイドは、目をつぶっていると死んでいるようでイヤだが、目を開けているのはもっとイヤだ。見ているこちらに向かってギロッと視線を合わせてくるような錯覚を起こすからだ。
何かの拍子に電源が入ってムクッと起き上がろうものなら、悲鳴を上げて腰が抜けてしまいそうだ。
タカシは、アンドロイドに背を向けて腕組みをする。それでも偽の視線を背中に感じるのだから困ったものだ。
(バラしてパーツごと分けるのに1体1時間。……無理だな、明日の6時までに10体全部やるのは)
彼はもう一度ため息をついて、ボリボリと頭を掻く。しかし、何とかしないと、次の6時からの当番である先輩たちに怒られる。
先日も一人でやって、1体が残ってしまい、四人の先輩に取り囲まれて長々と説教された。
給料がいいだけに逃げ出すわけにもいかないので、先輩たちの言葉を右から左に聞き流すのだが、それにエネルギーを使うのが面倒だし、説教で帰宅――朝帰りが遅くなるのが辛い。
(休んだ政夫と一郎には、焼き肉をおごってもらうかな。一人ずつ、合計2回は食べ放題の所へ連れて行ってもらおう)
タカシは、口端を吊り上げて、ドライバーを手にした。
「さて、全力モードでやりますか」
そうつぶやいて、彼はアンドロイドの方へ振り返った。