17.
ニーナが言葉を締めくくった午前2時59分54秒。突如として、Q科学研究所の方から腹に響く地鳴りのような大音響が聞こえてきた。
野次馬たちは、何事かと音の方へ一斉に振り向く。しかし、微笑むニーナはタカシを見つめたまま、何かをつぶやいた。
午前2時59分57秒。研究所の建物全体がグニャリと歪んだ。
その瞬間、タカシの手を握るニーナも、事の成り行きを見守る野次馬も、風景画に描かれた人物のように動かなくなった。
続いて、研究所の中央付近から巨大な闇が出現して、瞬時に建物とその周辺を覆い隠した後、円盤状に四方八方へと広がった。
その闇は、爆発的な勢いで地表を走り、町全体を飲み込む。
闇の拡大は止まる所を知らず、平野、山、日本、海、大陸、地球全体を包み込んだ後、今度は一気に収縮して研究所の建物の中へ消え去った。
この間、わずか3秒。
再び現れた研究所の建物は元の姿に戻っており、外灯の光を受けて夜空の下にボウッと浮かび上がる。
しかし、事故現場にいたニーナ、タカシ、野次馬たち、そしてバイクも血の海も全てが消え失せ、一陣の風が通り過ぎた。
――それは、24時間前の午前3時の光景だった。




