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回想4 だから果実が輝くのか

 俺が今の自分の状況について悲観的な考えを持っているのには理由があった。


 俺には将来が心配な妹と、これからも心配な母親がいる。

 俺が生きたフリを続けていたのは、この二人が心配で俺が父さんの代わりに守ってやらなくてはいけないと思っていたからだ。


 父さんが死んで、母さんはもの凄く悲しんでいた。

 俺たちに隠れて泣いている姿を幾度か見たこともある。

 そして俺に気づいた母さんは、ギュッと強く抱き締めてきた。


 妹も父親が居なくて悲しかったと思う。

 小さい頃「なんで私にはパパがいないの」と母親に聞いていた姿を見た時は、俺が代わりに抱き締めて上げたかった。


 そんな二人の姿を見てきたから、例え俺だけでも今ここに居る意味はあったのだと思っていた。

 実際少なからず支えになってあげられたとも思う。


 でも、そうした思い込みが間違いだったかもしれないという気も同時にしていた。

 


 家には家族以外にもう一人だけ住人と呼べる人間がいる。

 その人は父さんの部下だった人で、十年前の俺の誕生日に父さんが仕事で帰らなくてはいけない理由を作った人。

 当時を覚えていない妹も、その事を打ち明けられた母さんも、もちろん俺も、その人を恨んではいなかった。


 でもその人は今も何かと俺たち家族を助けてくれている。

 妹が俺を単に「お兄ちゃん」と呼ばず「だいにぃ」と呼ぶ理由もこの人が遠因だ。

 妹には兄と呼べる存在が二人いたから、自然と俺たちは区別されて呼ばれるようになっていた。

 妹はこの人を信用、いや信頼している。母さんもきっとそうだろう。四人で食事をする時は本当の家族のように楽しそうにしている。


 だからこそ思うことがあった。

 もしかしたらこの人は、他の呼ばれ方をされた可能性が、新しい『父親』に『夫』になれた可能性がある存在だったのかもしれないと。

 母さんは父さんの記憶がある俺に気を使って、再婚という選択肢を捨てたのではないか?

 この人もまた俺を気遣い、父親の代わりを積極的に演じようとはしなかったのではないか?

 だから妹も、もう一人の兄としてしか見なかったのではないか?



 そんな思いに気づいてからは、俺は自分が今ここに居る事が間違いなのかもしれないと思うようになっていた。

 藤咲と出会い、富良乃さんとみのりの想いを知った後も、俺には変わることのない一つの考えがあった。


 ――止まったままの俺たちでは、悲しみは癒せても幸せは得られない……。



回想4 ~ だから果実が輝くのか ~

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