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もし君を助けれるなら  作者: 葉月志貴
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忌まわしき鎖は永遠に


 あれから彼女は少し明るくなった。

 少しでも心の支えが出来たのが良かったのかもしれない。

 彼女を直接的に救う事は出来ないだろう。

 僕には金もないから資金援助も出来ない。

 結局、僕に出来ることは彼女のストレスを少しでも減らすようにしてあげる事しか出来ないのだ。

 こう考えていると自分の不甲斐なさが身に染みるように分かり、正直テンションが下がる。

 僕は少し憂鬱になった気持ちを晴らす為、外に出てみることにした。

 今日は生憎の曇り空。

 しかし、この時期の曇りを僕は1番好きなのだ。

 涼しくあまり小学生達が外で遊んでいないので静かだからだ。

 静かな道を通り、僕は気分転換に店に入った。

 小腹が空いていたので、好物のシュークリームでも買うかな…

 と考えながら店の中をぶらぶらと歩いていると、僕はふと立ち止まった。

 僕の目線の先にはニヤニヤしながら歩いている男。

 忘れるはずが無い。忘れれるはずが無い。

 あいつは僕がいじめられる元凶で、いじめていた集団のリーダーだ。

 あんなクズが何故生きている?

 生きていい訳が無い。

 あいつは絶対殺す。

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!

 僕の中で抑えてた殺意が限界まで膨れ上がった。

 狂気に染まった僕は殺せるチャンスが巡って来た事に喜び、笑い、歩き出した。

 あいつを殺す。

 あいつには今まで僕、いや、俺が味わってきた痛み、苦しみの全てを味わって死んでもらう。

 あと少し、あと少しで殺せる!!

 

 そして、俺は…

 

 憎いあいつから5m離れた位置で止まった。

 アクシデントが起きた訳では無い。自ら止まったのだ。いや、動けなかったと言った方が正しいだろう。

 つまり、僕は憎いあいつに愚かにも恐怖を抱いてしまったのだ。

 膨れ上がった殺意を一瞬で塗り替えた恐怖。

 僕は結局あいつを殺す事は出来なかったのだ。

 あいつは僕に気付くことすら無く、店を出て行った。

 僕は弱いままだった。

 過去に付けられた忌まわしき鎖を壊す事は出来ていなかったのだ。

 絶望に暮れながら店を出ると、雨がポツポツと降り始めた。

 仕方ない、走るか…

 そんな時にふと視線を感じ振り向くと、あいつが僕を見ていた。

 どうやらさっきは気づいていて無視していたようだ。

 

 「よう。久しぶりだな。単刀直入に聞くが、さっき俺に殺気を向けてたよな?あ?どうなんだ?」

 

 「・・・すいませんでした・・」

 

 「あ?聞こえねぇよ!誠意が足りてないんじゃねえのか?土下座しろよ!土下座!」

 

 「・・・貴方様にクズの僕が殺意を向けて本当に申し訳ございませんでした・・」

 

 僕は言われるがままに土下座していた。

 抵抗なんて出来なかった。

 

 「ぺっ……今回だけは許してやるよ。じゃあな。」

 

 僕の頭に唾を飛ばし、グリグリと足で踏みつけてから、あいつは去っていった。

 僕はされるがままにこの屈辱を受けていた。

 

 「クソォォォォガァァァァァ!!!」

 

 憎しみと悔しさが混ざった声は、本格的に降り出した雨の音によってかき消された。

 

復讐…結局は何も生まない物です。

頭で理解していても憎い相手に対して殺意を抱いてしまいます。

僕は恐怖を乗り越え、復讐を留まる心持つ事によって人は進化していけるのではないかと思います。

どうか悲しみの連鎖を断ち切れますように…

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