もし叶うなら
皆さんは幸せですか?
ヘラヘラと笑いながら僕を蹴ってくる奴。
それを見て見ぬふりをしているクラスメイト。
知りながら蹴ってくる奴に加担する先生。
あれから3年経った今でも脳裏に焼き付き離れない中学時代の光景。
もし叶うなら、その時いた奴を皆殺しにしてやりたい。
確かに見て見ぬふりしてるクラスメイトは関わりたくない一心だったのかもしれない。
だが、同罪だ。
僕は何度も助けを求めた。
だが、全員口も聞いてはくれなかったのだ。
それを無罪と誰が言えよう?
言えないだろ?
よって全員死刑なのだ。
憎い殺したい。
20○○年4月6日
僕はそんな復讐心を胸に高校最後の一学期を迎えたのだった。
僕は今まで関わった人間の殺害計画を立ててきた。
しかし、僕が満足出来る計画は未だに0。
今日も新たな計画を考えている。
もちろん、現在のクラスメイト達はそんな事を考えてるとは知る訳が無い。
なにせ、学校内では不自然にならないようにポーカーフェイスを板に貼り付け、喋る奴も何人か居る。
ただ、それは僕にとって苦痛でしか無かった。
日々溜まっていくストレス。
それを発散する手段は僕には無かった。
ストレスのせいか日々僕の身体はやつれていき、復讐所では無くなっていった。
そんなある日。
「なあ!オンライン人狼ゲームしないか?スマホのアプリなんだけどさ!」
いつも話しかけてくる奴がゲームを誘ってきた。
それはオンライン人狼ゲーム。
騙し合いと推理による言葉で争うゲームだ。
それをネットを介して離れた人と文字で行うらしい。
「まあ、いいよ。」
断る理由も無かったので了承の旨を伝えた。
正直精神的に参ってる僕は何か気分転換がしたかったのだ。
そいつに勧められるままにアプリをダウンロードし、適当に部屋に入るを押してみる。
そこでは素性も分からない奴らが和気あいあいと話し合っていた。
僕も適当に混ざった所でゲームが始まる。
僕がなったのは「人狼」、つまり、毎晩誰かを噛み殺し、生き残るの役職である。
なお、その部屋には人狼はあと1人居り、そいつとは別で会話が出来るらしい。
相方の人狼は僕と同じく初参加らしくルールも分からないとの事。
実に頼り甲斐が無かった。
僕さえ生き残れば勝てるのだ、せいぜい利用させてもらおう。
僕は自分の信頼を得るために相方を礎とした。
進行が居なくなった際に進行を奪う為だ。
結果、僕は全員を欺き続け、僕はゲームに勝利した。僕以外の者を全員皆殺しにしたのだ。
終わった後、全員絶望していた。
信じられた人に裏切られたといった感じだろうか?
これはいい!全員絶望してしまえばいいんだ!
しかし、現在はそうならなかった。
「連絡先交換しませんか?また一緒にしたいので!」
「僕も!」
「私も!」
何故か僕はプレイヤーの何人かと連絡先を交換する事になった。
あんな酷いことしたのによく話かけてくる人がいた。
相方の人狼だった女の子(性別は連絡先交換時に判明)だ。
現在中学生らしく日々頑張っているそうだ。
ちなみに僕が騙した事は何とも思ってないらしい。
彼女は騙した僕に何故か毎日話しかけてきて、悩み相談等をしてくれるぐらい仲良く接してきた。
たわいもない会話が日常と化したある日。
彼女は自分の環境について吐露した。
僕は驚愕した。
毎日行われるいじめ、父親から振るわれる暴力、自分を蝕んでいく数々の障害により、彼女は僕なんかとは比べようも無い程辛い環境に立っていた。
この話をしている時、彼女は泣いているのだろうか?時折返信に遅れが生じていた。
しかし、毎日苦痛を味わっているのにも関わらず、彼女は優しかった。
僕に話す事で僕に重荷を与えてしまい、罪の意識を持たせてしまうのかもと思っていたらしい。
その事を聞いたから余計に分かる、僕に話したのはとても勇気がいる事だったのだと思う。
僕も辛かった時に大人に話したが、かなりの勇気が必要だったのだ。
僕の時はその大人が話を聞くだけ聞いて何もしてくれなかったが、彼女は僕を頼ってくれたのだ。
大人達の様に突き放すな。
手を差し伸べてあげたい!
その時、いじめを受けてから初めて僕に他人を助けたいという気持ちが芽生えた。
彼女の相談に乗り始めてからだろうか?
彼女は僕についても聞いて来るようになった。
僕は彼女に出来るだけ優しく接した。
すると、彼女は僕に好意を向けてくるようになった。
彼女に優しく接し、何でも相談に乗って解決策を出してくれる僕は彼女にとって大きな存在になったのかもしれない。
正直嬉しかった。
しかし、僕はその好意を受け止める事は決してしなかった。
何故なら僕は、決して幸せになる資格等持ってないのだ。
いつかは人を殺す身。
そんな僕に、彼女を幸せにする権利なんて無いのだ。
彼女には辛いかもしれないが、僕は好意に気づかないフリを続けた。
ぎこちない関係が続く中、彼女に僕以外の好きな人が出来た。
しばらくして付き合いだし、彼女は幸せそうだった。
僕は嬉しかった。彼女が幸せで居れる事は僕が1番望んでいた事なのだ。
彼女は毎日に幸せそうに話し、時には惚気、時には明るい声を電話で伝えてくれた。
しかし、世界は残酷で、彼女の幸せはそう長くは続かなかった。
彼女は治療次第では死に至る病にかかってしまった。
読んでくださりありがとうございます。
次回は9月27日更新です。