第8話 聖女は歓待される
ブルージュ伯爵様の晩餐会には、伯爵様夫妻にお子様たち三人、近隣の国人衆・郷士・土豪などの当主など多士済々。
ご家来衆も、家老をはじめ、そうそうたる顔ぶれで、誰が誰だかわかりません。
伯爵様は、背は高くありませんが恰幅のいい中年で、ご婦人も福福しいほっこりしたお方様です。
お子様は長男次男に、お嬢様。
長男が二十歳、次男が十七、お嬢様は十五と、いいお年頃です。
「うわさの聖女様をお迎えできて、光栄の至りですな。」
「まあ、どんなうわさでしょう?」
「ええ、竜くだきの聖女、青の聖女と領民の中でも、もちきりですぞ。」
「ええ、聖女様におこしいただいて、わが伯爵家も家格があがろうと言うものでございますわ。」
伯爵夫人も抜け目がありませんね。
「しかも、これほど美しい方だとは、思っても見ませんでした。」
あらあら、長男様もお口がお上手。
「聖女様が、教会の聖堂で顕現された奇跡について教えていただきたいのですが。」
「はい?」
「あれは、どのようにして画像を投影していたのですか?」
長男は、訳のわからないことを言っています。
「投影…?ですか?」
「はい。」
「魔法で、絵を写して見せたとおっしゃいます?」
「そうでしょう?オシリス女神像から使徒ジェシカが現れたなどと、子供のようなことを兵士が言っていましたが。」
「言っていましたが?」
「そんな子供だましに引っかかるなど、兵士としての資質にかかわりますね。」
「つまり、私が手妻でもって、兵士をたぶらかしたとこうおっしゃいますのね。」
領主、ブルージュ伯爵は真っ青になって、長男を止めようとしましたが、長男の口は止まりません。
「なんらかの魔法で、オシリス女神像からジェシカが現れるように、奇跡を演出されたのでしょう?貴族としては…」
ぱしゃりと音がして、テーブルにあったコップから、長男の顔に水がかかりました。
「ずいぶんなおっしゃりようでございますね。わたくしが、民をだましてたぶらかしていると?そうおっしゃいますのね。」
「な、なにをなさる!」
「そこまで侮辱を受ける謂れはございません。お顔を洗って出直していらっしゃいまし。」
目に強い意思を載せて、ティリスは長男をにらみつけます。
「いやしかし!」
「貴族としてとおっしゃるなら、民に対して真摯であるべきでしょう。」
「ぐ!」
「うそ偽りで、治世などできようはずもございません。そのような見識でいらっしゃるのなら、あなたは世継ぎとして不適格です!」
「せせ!聖女様!どうか、お許しください、こやつは酒によっているのです。」
伯爵はあわてて長男をさがらせようとしました。
「民を統治するのは、貴族の誠意でありますよ。」
ティリスは、すまして言い放ちました。
長男は、顔から水をしたたらせて、怒りに燃えた目をすえています。
ティリスは、ぱしりと手を合わせて、上空を見据えます。
「女神オシリスよ、願わくば愚か者にその威光を示したまえ。」
貴族屋敷らしく、高い天井からは豪華なシャンデリアが下がっていますが、その上には薄暗い空間があります。
その暗がりが、一瞬にして光に満ち、白くまた黄金に輝く光の中に、さらに輝く金色の翼。
はらはらと舞い散る白い羽根の中から、白い衣の美しい女神が姿を現しました。
『聖女ティリス、神はいつもあなたたちを見ていますよ。』
「はい、申し訳ありません。」
『では、この地に神の祝福を。』
ぱあっと広がる、金色の光。
その実、これ自体にはたいした力を込めてないということですが、まあ、道端で銅貨一枚拾う程度の幸運があります。
「不見識には、真実で答えるべきですね。」
ティリスは、組んだ手を戻して言いました。
『この国の民が、安寧ならばわたくしも安心です。』
女神オシリスは威厳をもって言葉を紡ぎました。
「ありがとうございます。」
女神オシリスは、来たときのように唐突に帰っていきました。
「あ、ああああああああ!」
「女神の波動は感じられましたか?」
心貧しき者には、その波動は重く深く感ぜられるのです。
長男はその場にひざまづき、深く頭をたれました。
「失礼を申し上げました、これほどの奇跡とは、浅学非才の私には理解の外でした。」
「わたくしのインチキではないと、お認めになりますか?」
「も、もちろんであります。聖女様の奇跡に感謝を。」
領主一家は、いっせいにその場に膝を着き、神に祈るのでした。
領主一家のみならず、その場に居合わせたすべての人々が、膝を折り、手を組んで聖印を切りました。
この世界では、神は生きているのです。
信仰を糧に、あまねく世界に君臨するのは、女神でした。
「この場の皆様に、幸多からんことを。」
長男は、ティリスの靴をなめんばかりに低頭し、涙を流しました。
「ね、神様はいらっしゃいますでしょう?」
「か、感動しました。神はいまし、世はすべてこともなし。」
「はい、幸不幸は人の手によるものでございますよ。」
「お、おそれいりましてございます。」
周囲の国人衆・郷士、土豪も恐れ入って、顔の青いものもいます。
若干、肝の冷えた者がいたということでしょう。
いずれ聖人君主というものではなし、脛に傷もあまたあろうというもの。
その行動に、いささか肝の冷えたことでありましょう。
別に良いのです、いささかの悪事など、どこの国にもあることですし。
それによってまつりごとが回るものならば、必要悪というものでもございましょう。
民草のくらしが平穏に過ぎゆくならば、ティリスがどうこう口をはさむようなことはありません。
ブルージュ伯爵さまの治世は、悪くないようですよ、お屋形さま。
「みなさま、国の安寧、このブルージュ伯爵領の安寧のため、微力ながら祝福申し上げます。」
「「「ははあ~!」」」
伯爵始め、国人衆はみなその威に打たれたようです。
「差し出口を申しました、みなさまお赦し下されませ。」
ティリスは、深く頭を下げて微笑みかけました。
実を申しますと、ミケは天井裏からこの様子を見ていて、あらまあお方さまも太い釘を刺しますことと、口元に手をあてていたのです。
子供たちは、おなかも膨れてすでにぐっすり。
アンヌマリーをその護衛に残して、屋敷うちを探っていたのですが、どうやら二重帳簿なども大したものではなくすみそうです。
その後、晩さん会はつつがなく進み、ゆっくりと解散されました。
「このばかものが!国人衆も見守る中で、あの醜態はなにごとか!」
晩餐会の解散後、長男の部屋で、伯爵は言葉も荒く長男を非難しました。
「しかし父上、聖女聖女と持ち上げて、いかがなさるおつもりでしたか。」
「ばかもの、あの方はブルードラゴンすら説得する、正真正銘の聖女である。おまえごときの浅知恵で、どうこうできると思ったのか!」
「いえ…」
「幸い、聖女さまのおかげで、お前の罪は消えたが、醜態にはちがいない、今後は慎め。」
「は。」
「お前は、レジオ公爵さまの、本当の恐ろしさを知らんのだ。」
「?」
「あの方はなあ、国が滅ぶことなど、少しも気にしてはおらんのだ。」
長男は、父親の顔を改めて見直しました。
「だから、山も谷も気にならん、すべては女王アンリエットさまのためしか思っておらん。」
しかめた伯爵の眉間には、言いようのない恐怖が刻まれていました。
あるいは、王宮の庭で見た、おそろしいオークキングの面影を思い出したのでしょうか。
「それがどれほど恐ろしいか、今夜一晩考えてみるのだな。」
そう言って、ブルージュ伯爵は、長男の部屋を出ました。
「この伯爵領を、ドラゴンのブレスで蹂躙されるわけにはいくまいよ。」
とことん保守的な伯爵ですが、それは領土維持には重要なものですね。
しゅたっと地面に降りて、ミケはティリスに声をかけました。
「お方さま、もどりましたにゃ。」
「ミケ、ごくろうさま。」
「はい、二重帳簿などは見てきましたが、租税の上乗せなどはほとんどありませんでした。」
「あら、つまらない。なにか悪事は?」
「はい、軽い密貿易や、わいろ程度ですにゃ。」
「そう、まあなじめそうな方ですものね。よろしい、ここは素通りしましょう。」
「はいにゃ、ベンのことですが。」
「ベンがどうかしましたか?」
「強制的な呪いがかかっておりませんかにゃ?」
「呪い?」
「はい、思い出せない呪い、忘れてしまう呪いですにゃ。」
「なるほど、そこは盲点でした、でも、そうなると、プルミエ師匠さまでないと、わかりませんね。」
「御意にゃ。」
「では、帰るまでそのままで行きましょう。」
「しかし…」
「悪い時は、考えますよ。」
「はいにゃ。」
ティリスは、眠っている二人の肩に布団をかけて、自分も寝台に入るのでした。
翌朝も快晴。
伯爵の長男は、パリカールの横に馬をつけて、次の町まで護衛をすると申し出ました。
軽武装した騎士も、轡を並べています。
「まあ、私は巡礼の途次でございますよ。」
次の目的地は、ブルボネー地方のユリエール子爵領です。
ブルージュからは約一〇〇キロメートルほどの距離があり、途中サン=アマンド=モン=ロンド男爵領があります。
サン=アマンドは、堅実な男爵の評判通り、質素ながら良く統治された領土なので、見聞は不要とお屋形さまから言われています。
ブルボネー地方のユリエール子爵は、名実ともに俗物で、おかねが大好きな方です。
楽しみですね。
伯爵の長男は、けっこう押しが強くてほかしておくと、勝手についてきます。
めんどくさいので、好きにさせることにしました。
のどかな田園風景の中を、のんびりすすむロバの馬車。
かぽかぽという、馬の足音以外にはたいした音もせず、畑の中にいる農民も、のんびりとしたものです。
ロワール川に注ぎ込む、アルノン川に沿って南下するルートですので、川面がきらきら光って気持ちがいい景色です。
「こうしてのんびり行くのが、いちばんですね~。」
「そうですにゃ、お方さま。」
「しかし、このうるさい連中は、どうしたものでしょうか?」
「アンヌマリー、ほっときなさい。」
「おかあさま、とんぼ~。」
「あらあら、ほんとうね。」
全長三〇センチくらいのトンボが、優雅に空を舞っています。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
「なんだと?聖女の巡礼?」
執務机で書類を呼んでいた子爵は、顔をあげました。
ユリエール子爵です。
王都にいたのですが、国元の商売が気になって戻ってきました。
「は、王国の第一聖女が、クレルモンフェランを目指して巡礼に出たそうです。」
「そんなものほっておけばよかろう、金にならんし。」
話しておる間も、太い指でぱちぱちと算盤をはじいています。
「いえ、旅の途次に各領主の館に寄っているようです。」
「なんだ、そこで歓待しているのか?」
「はい、ブルージュ伯爵は、近隣の国人衆や土豪まで呼んだとか。」
「ち!伯爵め、金のかかることをしおって、まあいい、そこそこ食事を出して、寝床を提供すれば良いのだろう。」
「は、献立などはこのように。」
側近の出した書類には、晩餐会のメニューと人数などが書いてありました。
もちろん、概算の予算も載っています。
子爵は、仔細に書類を見て、サインを入れました。
「ま、まあしょうがなかろう。仮にも公爵夫人でもあるしな。」
「は、また招待客はこのリストの通りです。」
「ぐ、こんなに呼ぶのか…」
ユリエール子爵は、意外に多い国人衆に苦虫を噛んだような顔をしました。
「それでも、ブルージュ家よりは少ないのですが。」
「しょうがない、これでいけ。」
「は。」
側近は、うやうやしく頭を下げて下がります。
「ちっ、いらぬことをする聖女だ。」
自分の寄り子の貴族や国人衆が、意外と多いことに辟易している子爵でした。
一方、側近も愚痴が出ます。
「いちいち金に換算されるのはかなわんな、それでも、本人の了承を取っておかないと、後で支出ガ~とか言うしなあ。」
すまじきものは宮仕えと申しますからね。
それでも、子爵は商売上手で吝嗇家なので、資産はたいへん豊かな状態です。
まあ、帝国が攻めてきたとき、一番に逃げたんでしょうけど。
「帝国が攻めてきたときも、軍費の徴収がされる前に、男爵がやっつけてくれたからのう、ま、このくらいはしてやるか。」
子爵は、顎をなぜながらひとり、にやりとしました。
うまく切り抜ければ、今後のおつきあいも儲けにつながりそうだと思ったのでしょう。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
サン=アマンド=モン=ロンド男爵領の領地境に来ますと、のんびりと草を食むウオーターバッファローの姿が見えました。
「あら、立派な子がいますね。」
「ウオーターバッファローですにゃ。」
『ぶも~う』
いきなりティリスは、バッファローの群れに声をかけました。
ついてきたブルージュ家の長男は、なにごとかと馬車を見ます。
『みんなおいで~。』
もう一度声をかけると、のしのしとその巨体をゆらして、バッファローが歩いてきました。
「な、なんだ!」
「平気ですよ、この子たちはおとなしいですから。」
ティリスの声に、長男(いいかげんに名前をつけろよ!)は冷や汗をたらしました。
のっしのっしとやってくる、ウオーターバッファローは、頭の高さまでが三メートルもあって、全長も五メートルを超えます。
「最近は気候が良くて、雨が降らないから過ごしやすいと言っているわ。」
「にゃはは!お方さまがいると、便利でいいにゃ。」
「み、ミケどの。」
「これは失礼したにゃ。」
「さ、お行きなさいな。」
ティリスが首筋を軽くたたくと、ウオーターバッファローは踵を返してもといた場所に帰って行きました。
「南部の領地は、農業が盛んですばらしいですね、おかげで魔物も出てきませんし。」
「は、先祖が森を切り開いたと聞いております。」
「立派なご先祖様ですこと。感謝申し上げます。」
ティリスは祈りの形に手を組んで、目をつむりました。
「お方さまは、本当に信心深い方なのですね。」
長男は、感心したように言うが、ティリスはにこにこと笑って言いました。
「あら、そんなに信心深いものではありませんよ。本当は、シスターもやめるつもりでしたから。」
「へ?」
「還俗して、夫と結婚する予定だったんです。」
「はあ~。」
「それが、ドラゴンなんかが出てくるものですから、聖女なんかに祭り上げられて、散々でした。」
「そ、それは…」
「メルミリアスのやつ、今度会ったら虫歯にいたずらしてあげようかしら。」
俗っぽい聖女です。
「ちょうどいいわ、ここでお昼にしましょう。」
「はい。」
ミケは、テーブルとイスを出して、道端に広げました。
「パンとお野菜~、ピーマン炒め~。」
ティリスは、へんな歌を歌いながら、フライパンをゆすっています。
「おかあさま、ピーマンはやめて~!」
「だめよ、アンジェラ。ちゃんと食べなきゃ。」
「うう~。」
「おのこしは、お百姓さんに悪いでしょう?」
「うう…はい…」
「いい子ね。」
アンジェラは、ピーマン炒めが嫌いらしい。
「私たちの天使は、おねむですか。」
おなかが膨れて、アンジェラはこくりこくりと舟を漕いでいます。
「お方さま、私が。」
アンヌマリーは、アンジェラを抱き上げて馬車に戻りました。
ティリスは、ミケのいれたお茶に手をのばします。
「いい天気が続いて、ほんとうに助かりますね。」
「そうですにゃ、にゃ!」
ミケの髪が逆立ちます。
ぴきいん!と、ティリスも危険を感じました。
「な、なに?何か来る!」
「あ!あれはなんだ!」
護衛の騎士たちが、前方を指さしてわめいています。
「いけません!みなさん集まって!」
ティリスの声に、騎士たちは馬車の周りに集まってきました。
「なにか良くないものがきます!みなさん、抜刀!」
騎士たちはすらりと剣を抜いて、臨戦態勢になりました。
一人長男さんだけが、まだ事態を飲み込めていないようです。
危機感が足りません。
街道の向こうからは、土煙が上がり、そろそろ咆哮も聞こえてきます。
「オーガ?みなさん、オーガです、しかもたくさんいます!」
オーガと聞いて、騎士たちも冷や汗をたらしています。
オーガは、平均三メートル以上の二足歩行の魔物です。
頭の両脇から四本の角を生やし、筋骨隆々とした鬼のような化け物です。
醜悪な顔は、どす黒く染まっています。
「オーガが集まって、怒りの咆哮をあげている。これは異常事態だわ。」
「お方さま、これでは逃げられないにゃ!」
「大丈夫、格子力バリヤー!」
馬車を直径一〇メートルほどの半球形のバリヤが包みます。馬たちもその中にいます。
ミケは、短剣を逆手に構えていますが、尻尾の毛は逆立って膨れています。
「きょ、強敵ですにゃ。」
「ひのふの、はっぴきですか。しょうがないです。」
ティリスの目の前には、三メートルもある土の槍が三本浮いています。
「ランドランサー!」
高速で打ち上げられたランサーは、一キロも打ち上がった後オーガめがけて駆け下ります。
いいいいいいいいいんんんんんんんんん
ごばあ!
はるか前方で、ソニックブームをまきちらしてランドランサーがオーガを捕らえました。
二匹は地面に縫い付けられ、もう一匹は腕がなくなっています。
「ちっ、仕留め損ねたわ。」
「お方さま、舌うちははしたないにゃ。」
「そうかしら?」
騎士たちは、大きな盾を構えて、ティリスたちの前に壁を作っています。
「もう一回。」
ランドランサーは、もう一度成層圏から攻撃を仕掛けました。
今度は三匹中良く縫い付けられたようです。
「ほう、これで五匹は動けないわ。」
土煙も収まり始め、三匹はもう一〇〇メートルほどの距離にあります。
ティリスの魔力では、ランドランサーは三本が限度で、魔力的にはかなりきついのです。
「あなたたち、オーガの討伐経験は?」
「一匹だけなら…」
「そう、かなりきびしいわね。」
ティリスも、自分の魔力があまり残っていないことを自覚しています。
「アンヌマリーは、そこでアンジェラを守りなさい!」
「しかし、お方さま!」
「その剣なら、オーガの皮でも易々と切れます。自信を持ちなさい!」
アンヌマリーは、自分の剣をぎゅっと握りしめました。
腕のないオーガは、怒りに顔を真っ赤に染めて、大声で吼えています。
ティリスは、脂汗を流しながら、それを見つめていました。
「せめて、アンジェラだけは…」
それを横で聞いて、ミケはぎょっとしました。
「一匹は、なんとかしますにゃ。」
「そうね、あたしも一匹ぐらいは…」
なにしろ、オーガの好物は人間、しかも毛の少ない女性や、柔らかい子供は大好物ですから、アンジェラは真っ先に狙われます。
ほら、先頭のオーガの目が、まっすぐにティリスに向いています。
「アンヌマリーは、兜をちゃんとかぶりなさい。顔を出しちゃだめ。」
「はい!」
がしょんと、兜の面を下ろしました。