第7話 聖女は三文の得
その後は、獣の襲撃もなく、魔物がやってくることもなかったので、一行はぐっすり眠ることができました。
「ほえ~、ずいぶんしっかり眠れましたね~。」
ティリスは、大きくあくびをしながら小屋から出ました。
地平線からは、太陽が昇ってくるところでした。
「おはようございます、聖女さま!」
隣から、ロヴェルが声をかけてきました。
「おや、ロヴェルさん、お早いですね。」
「商人は、早起きでないと儲かりませんからな。」
「なるほど、早起きは三文の得と申しますからね。」
「なんですかそれは?」
「お屋形さまのふるさとのことわざだそうです。」
「ほほう。」
「こちらで言えば、早起きは三銅貨の得ですかね?」
「わっはっは、それは愉快ですな。なるほど、覚えておきましょう。」
江戸では、早起きして河岸から、商品を運んだものが儲けるからこういうことわざができたんですね。
ティリスは、皮袋から小麦粉を取り出して、ボウルにあけます。
同時にミルクも出して、さっくりとこね始めました。
「それは?時間も止まるのですか?」
「いえ、時間の進みが一〇〇分の一になるんです。」
「それでも、腐らずに食べ物を運ぶことができるのですね。」
「そうです、これは空間魔法のレベルが上がると付与できるそうですよ。」
「ほほう、それはまた…」
きらりんと、ロヴェルさんの目が光ったようです。
「ま、これはプルミエ師匠にお願いしないと。」
「黎明の魔女ですか。」
「あはは、気のいい人ですよ。」
黎明の魔女に対して、気のいい人と言ってのけるティリスに、ロヴェルはあきれたような視線を投げました。
その皮袋があれば、遠くの珍しい食べ物を、腐らせずに運ぶことができる。
その利益は膨大なものが望めるのでしょう。
ロヴェルさんにとっては、よだれの出るような代物です。
そんなことは気にも留めず、ティリスはボウルの中をくるくるかきまぜて、暖めたフライパンに広げています。
フライパンからは、溶けたバターの良いにおいが漂ってきました。
「それは?」
「え?バターですけど。」
「バターってなんですか?」
「え?ロヴェルさんでも、知らないものがあるんですね。」
ティリスは、びっくりして、目を丸くしました。
二十歳過ぎても、その顔は少女のようで、どきどきさせられます。
「これは、お屋形さまが作ってくださった、バッファローのミルクを分離したものです。」
「それがバターですか。」
「そうですよ、なめてみますか?」
ティリスは、スプーンですくって、ロヴェルに差し出しました。
それを受け取って、しげしげと眺めるロヴェルさん。
意を決したように目を瞑って、ぱくりと口に入れました。
「ほわあ。」
出来立てバターの滑らかな舌触りと、芳醇なミルクの香りが口に広がります。
「なんと言うか、言葉にあらわせられない味ですな。」
「けしてまずくはない?」
「そのとおり。」
「ほほほ、それがバターです。」
溶かしバターに、小麦粉を流して、焼き上げたホットケーキに、はちみつをかけて出来上がり。
「さすがに男爵家ですな、そのようなはちみつの使い方は、貴族でなければできませんよ。」
「あら、大富豪のロヴェルさまが、そのような。」
「だ、大富豪などと、私など場末の商人にすぎませんよ。」
「まあ、ほほほ。」
そこへ、子供たちが起きてきたようです。
「おはようございます、ロヴェルさん。」
ベンは、元気に挨拶をしました。
「おお、おはよう。今日もいい天気だね。」
「はい。」
「おはよう、ロヴェルさん。」
アンジェラは、まだ眠そうです。
「おお、姫さま、おはようございます。」
「アンジェラは、姫じゃないです。ひめさまは、アンリエット様ですよ。」
三歳にしては、よくわかっているようなことを言います。
「ははは、実に聡明なお嬢さんだ。」
「持ち上げないでくださいな。さあ、顔を洗ってごはんにしましょう。」
「「は~い。」」
夏の日差しに照らされて、今日も街道はホコリっぽく、気温も上昇しはじめました。
「アンヌマリー、これを。」
ティリスが差し出したのは、草で編んだ麦藁帽子でした。
「麦藁帽子?」
「ええ、日差しがきついでしょう?せっかくのお肌が焼けてしまうわ。」
「いえ、わたしなど。」
「だめですよ、お嫁入り前の大事な体なんですから、陽に焼いたりしたら、もったいないわ。」
「いえあの…」
アンヌマリーにしたら、周りはがさつな騎士たちばかりです。
こんなふうに、女の子扱いなどされたことがありません。
ティリスの言葉に、あたふたしてしまいました。
「いえ、これでは矢が飛んできたときに、防げませんから。」
「あら、そうね、…硬化!これでいいわ、矢の二~三本は防いでくれますよ。」
「お方さま。」
アンヌマリーは、こともなげに硬化の魔法を駆使する、その技術に唖然としました。
聖女とは、どこまで万能なものなのでしょうか。
詠唱もなしに、気軽に使える魔法。人の三倍も永続する魔法。
ティリスの押しの強さに、アンヌマリーは負けてしまったようです。
ヘルムをはずして、麦藁帽子に載せ変えました。
すると、首筋をするりと風が通り抜け、頭が冷えたように感じたのです。
「涼しいです。」
「それはよかったわ。首筋が暑いと、あたまがぼ~っとしますでしょう?」
それはたしかに。そうですね。
「アンヌマリー、どうしてあの縁談を断ったの?」
「え・ご、ご存知で?」
「だれか好きな殿方でもいらっしゃるの?」
「いいいいい」
「言い交わした殿方が?」
「おりません!」
「あら。」
「騎士として半人前の私には、縁談など持ってこられても困ります。」
「あら、あなたは十分にお強いでしょう?」
「まだまだです。」
「あら。」
「お方さまに守られているようでは…」
あ、やりすぎちゃったかな?
「それに、騎士団の中でも、どうしても勝てないものが居ますし。」
「あら、聞いたことがないわ。」
「まあ、内部にことですし。」
「ええ、そうね。あなたの口から聞いていないわ。」
「マキタ男爵家次男の、トキノ=マキタ。」
「あら、マルノのお兄様ね。」
「ご存知なんですか?」
「ええまあ、マルノはウチの家臣ですし。」
「ああ、そうですね。」
「それにしても、次男で騎士団にいらっしゃるのは珍しいですね。」
「本人は、捨扶持で暮らすのに絶えられなかったと…」
「なるほど、気骨のあるお方なのですね。」
「はあ。」
「それで?なかなか勝てないと?」
「はい、騎士団に入ってから、まだいっぽんも取れません。」
「それはたいそうな腕ですね、うちにスカウトしたいくらいです。」
「やめてくださいよ、お屋形さまに鍛えられたらますます勝てなくなります。」
「では、アンヌマリーがうちに来れば?うちのお屋形さまと稽古すれば、もっと強くなれますよ。」
「そ、それは魅力的です。」
「ね?」
「ぶるぶる、そうはいきませんよ、私は騎士団で強くなりたいのです。」
アンヌマリーは、首を何度も振って返事をしました。
帽子が飛んでしまいますえ。
「そうですねえ、陸軍の精鋭たちはレジオに訓練に来て、見違えるように強くなって帰って行きましたね。」
「あ、それですか?陸軍が急に規律正しくなったとうわさの。」
「そうですねえ、では、この巡礼が終わったら、いちど稽古をつけていただきましょうね。」
「は、ありがたくあります。」
こう言われてしまえば、アンヌマリーにはうなずくしかないのです。
鋼鉄のヘルムに比べれば、草であんだ防止のなんと快適なことか。
アンジェラさまやベンも、帽子を貰って嬉しそうに笑っています。
街道は特に問題もなくブールジュに到着しました。
「では、私は先を急ぎますので、これにて御前を失礼いたします。」
「ロヴェルさんも、お気をつけて。旅がつつがなく進みますように。」
「聖女の祝福をいただき、今回の旅は成功したようなものですよ。」
ロヴェルが手を振って進んでいくのを、ブールジュの門前で同じように手を振って、別れたのでした。
「さて、ブールジュ伯爵領です、気を引き締めましょう。」
「はいにゃ、お方さま。」
「ブールジュは、農耕牧畜などが主な産業ですね。」
アンヌマリーは、旅の資料を取り出して読み上げました。
「特に、ブドウの産地でもあります。ここのワインは有名ですよ。」
「それは良いですにゃ。」
「呑みすぎないようにね、ミケ。」
「にゃはは。」
ブールジュの城門は、ひときわ高く、立派な物見の塔の建ったものでした。
「は~、立派な門ですねえ。」
「お方さま、入場手続きを。」
「ええ、そうですね。ではこれを。」
「は、かしこまりました。」
アンヌマリーは、帽子をとって身分証を門番に見せました。」
「こ、これは!全員整列!レジオ公爵閣下の奥方である、みな頭が高い!」
ざっと音がするように一斉に門番が頭を下げるので、びっくりしてしまいました。
「あの、そのようにかしこまらないでください。」
「いえ、王国の宝、青の聖女さまをお迎えして、これに勝る誉はありません。」
門番の隊長さんは、えらく気負っています。
「さようですか?では、入場してもよろしい?」
「ははっ!ただいま伯爵さまの領館へ、ご案内いたします。」
あ~、これは見世物一直線臭いなあと、ティリスは頭を抱えました。
まあ、どこへいっても聖女と言う肩書は、一筋縄では行かないものですが。
「いえ、すぐに教会に参ります。」
「教会でありますか。」
「はい、みなさまお困りの方もいらっしゃるでしょう、まずは教会です。」
「はは。」
ブールジュの教会は、領都の真ん中にありましたが、良く言えば質素、あからさまに言えば古くてガタがきてそうな建物でした。
「これは…」
「いえあの、これは建て替え計画中でして…」
「そうですか、オシリス女神さまへの信仰は、見た目でなく心という現れですね、すばらしいことです。」
ティリスは笑って、馬車を降りました。
アンジェラとベンの手を引いて、教会の門をくぐります。
石づくりの教会の入り口は、ひんやりとして少し薄暗い礼拝堂につながっていました。
礼拝堂のつきあたりには、白いオシリス女神の像が立ち、人々を見下ろしています。
「せせせ!聖女様!」
教会の司祭が走り寄ってきました。
「こんにちは司祭さま、御祈りに参りました。」
「はは、どうぞ前へ。」
「ありがとうございます。」
一行は司祭に促されて、祭壇の前に立ちました。
「これはお屋形さまからの喜捨でございます。」
まずは、金貨の入った袋を渡します。
「ここ、これは!」
まあ、日本でいえば三千万円くらいですかね?
一行は膝まづいて、オシリス女神に祈ります。
すると、女神の額に光がともり、ゆっくりとジェシカが姿を現しました。
薄暗い礼拝堂が、隅々まで光であふれ、神々しく輝きます。
やがて、全身を見せたジェシカは、重々しく口を開きました。
『聖女ティリス。』
ティリスは、手を組んだまま深くこうべを垂れました。
「はは。」
『よくぞ参拝してくださいました、オシリス女神さまは御喜びです。この地に祝福を。』
ジェシカは、両手を広げ、赤い衣をひらひらとたなびかせます。
「ありがとうございます。」
ティリスが答えると、ジェシカはゆっくりと影が薄くなっていきます。
出てきたようにするすると、元に戻って行きました。
司祭の喜びはまさに天上の極楽、その意識を刈り取り、その場にくずれ落ちました。
「あ、司祭さま。」
「司祭どの、しっかりなされ。」
アンヌマリーにゆすられて、やっと目を覚ましました。
門番の隊長も、護衛で着いてきたのですが、あまりの奇跡に目が閉じなくなっています。
「司祭さま、診療所はどうですか?滞ってはいませんか?」
「はあ、その、治癒術師の数が足りず…」
「わかりました、私が診ます。」
ティリスは、ミケに子供たちを預け、診療所に向かいました。
アンヌマリーは、ティリスの後ろから付いてきます。
「ど、どうされたんですか!これは!」
治癒術師の手が足りないどころではない、病人、けが人の数でした。
「なぜか、今月から病人が多くて、治癒術師の魔力が枯渇してしまっているのです。」
「尋常じゃありませんね、とりあえず治療します。できるだけ一か所に集めてください。」
「?」
「エリアヒールを使いますので、ひとまとめにしてください。」
「は、はは!」
司祭やシスターが、病人の寝ているところへ、けが人を集め始めたので、アンヌマリーにも手伝うように言いつけて、魔力を練りこみます。
やがて、ティリスの周りから、白い光があふれ始め、固まった病人けが人を癒して行きました。
「エリアヒール!」
ぱあっと光が散ると、そこにいた全員のけがも病気も治っていました。
「あ~、けっこうくるわ~、ごっそり魔力を抜かれた感じ。」
「お方さま、くちくち。」
「おっと、いけない。」
アンヌマリーに指摘され、ティリスは口を押さえました。
貴族の奥方様なんて、柄じゃないんですよね。
「すごい、あんなにいた病人やけが人が、ぜんぶ治っている。」
「これでよろしいですか?司祭さま。」
「は、あと重症患者が三人ほど、別室に…」
「そうですか、では個別に診ましょう、案内をお願いします。」
「はい、こちらです。」
別室には、荒い息をついて赤い顔をした子供がいました。
「こんなになるまで放っておいたのですか…」
子供はいかにも苦しそうに息をはいています。
「どれ…」
ティリスが覗いてみると、子供の喉は腫れあがって、息が通るのも大変な状態です。
「かなり危ないわ。」
即座に魔力を練ると、咽頭を中心にエクストラヒールをかけます。
すると、子供の呼吸がらくになり、顔の赤みも引いてきました。
「呼吸がしにくくて、チアノーゼが出そうになっていたのです。」
「ち?」
「ああいえ、けっこうです。」
次の患者は、老婆でしたがこの人は、強めのヒールで回復しました。
「おばあさん、食べるものも食べないでいては、体に毒よ。」
「はい、ありがとうございます。」
老婆は、ティリスの差し出した肉の包みを、大事そうに抱えて帰って行きました。
最後の患者は二十八~三十歳くらいの女性。
顔も真っ白で、胸の上下も感じられません。
良く見ると、かすかに上下しているようです。
「こんなに弱っているなんて!」
ヒールの連打に、体力ポーションを飲ませるというコンボ技で、ようやく顔に生気が戻ってきました。
「よかった、間に合ったようですね。」
「はあ、すばらしい手際ですね。」
司祭は、ティリスの治癒術に感心していました。
「司祭さま、治癒術師はどうしたのですか?このような事態にならないようローテーションが組まれているのでしょう?」
「はい、それが…」
「どうされた?司祭どの。」
アンヌマリーは、不審そうに司祭を見ました。
「実はこの教会には、ローテーションが組めるほどの治癒術師がいないのです。」
「なんですって?」
「教国に依頼しているのですが、なかなか派遣してもらえず。」
「それは困りましたね、さっそくお屋形さまにお願いして、教国に支援を依頼していただきましょう。」
「おお、そうしていただければ助かります。」
ティリスは、教会で書面をしたためると、ミケに託しました。
ミケは、影のものにつなぎをつけて、すぐに王都へ手紙を発信しました。
「二~三日で返事がきますにゃ。」
「ではそれまでは、ここに滞在してお返事を待ちましょうか。」
「そうですにゃ。おとどの判断次第ですにゃ。」
教国は、王国の苛烈な行政(登城しなかった貴族に対する報復など。)に、かなり神経を尖らせている様子で、若干引いているようです。
「お方さま、どう思いますにゃ?」
教会に与えられた部屋に落ち着くと、ミケは方眉を上げて聞きました。
「これこれ、そんな顔をしないのよ、ミケ。」
「にゃはは、はい…」
「教国は、やはりメルミリアスをかなり警戒しているのでしょうね。」
「そうなのでしょうか?」
アンヌマリーは怪訝な顔をして聞きました。
「あの脅威が、自分に向いたらと、恐れる気持ちはわかります。実際に退治したことがあるから余計に。」
「ああ、お方さまはあのブルードラゴンと戦ったことがあるのですね。」
アンヌマリーは、冷や汗が出る気分でした。
「まあ、お話をすることができたと言う事ですけどね。」
「お方さまの得意ワザですにゃ。」
「得意ワザと言われてもねえ。説得できたのは奇跡ですけど。」
「にゃはは、お屋形さまが無鉄砲ですからにゃ。」
「そうですね、話がそれました、教国は王国との距離を測りかねているのではないでしょうか?」
「距離ですか。」
「今までは、かなり強気に国交を進めても、ヘルムート王は容認していましたが、お屋形さまには通用しませんからね。」
「それはそうですにゃ、お屋形さまは、宗教が政治に関わることを嫌いますにゃ。」
「坊主はひたすら、神に仕えよとおっしゃいます。」
「教国の在りようが崩れますね。」
「宗教国家自体の存在意義がなくなります。」
「それは、彼らにとっては、恐ろしいことですね。」
「でも、宗教家が金におぼれているのは、見ていて気持ちのいいものではありませんよ。」
「お方さまは、お屋形さまに賛成なんですにゃ。」
「私は、お屋形さまと同意見です。うちの司祭様が金貨を貯めていたのを見て、がっかりしました。」
「切実ですね。」
「だって、私たちには味の薄いスープと固いパンだけで過ごさせたんですよ。」
「切実ですにゃ。」
「食い物の恨み…」
わたわたわた
ティリスはあわてて訂正しました。
「そ、そう言うことでなくて出すね。」
「言いたいことはわかっていますにゃ。」
「そ、それならいいんです。教国は、お屋形さまの要請にどう答えるでしょう?」
「まあ、今のところは素直に応じるですにゃ。」
「ふむ、ではお返事を待つとしましょう。」
こんこん
扉をたたく音がします。
「はい?」
『聖女様、お城から使者さまがおいでです。』
「あら、なにかしら?どうぞ、お通しして。」
『はい。』
「ブルージュ伯爵さまのお使者さま?どのようなことでしょう?」
「はじまてお目にかかります、アルマール準男爵と申します。」
「カズマ=ド=レジオが妻、ティリスでございます。」
「ご丁寧に痛み入ります。わが主、ブルージュ伯爵が、お城にて歓待いたしたいと申しておりますが。」
「左様ですか?今夜はもう子供たちも寝入っておりますので、明日ご挨拶に伺いたく思います。そう、伯爵さまにお伝え願えますか?」
ティリスは、落ち着いた雰囲気で使者に答えました。
「は、かしこまってございます。近隣の貴族名士を集めまして、園遊会など開きたく。」
「そういうことは困ります。うちのお屋形さまも派手なことはいやがりますし、内々でお納めください。」
「は、かしこまりました、そう伝えます。」
「夜分にお気遣いいただき、ブルージュ伯爵様には、よしなにお伝えください。」
「ははっ!」
準男爵は、かしこまって帰って行きました。
「困ったものだわね、いちいちお付き合いしていたら身が持たないわよ。」
「にゃはは、お方さまはめんどくさがりにゃ。」
「めんどくさくありませんよ、あ、めんどくさいわ。」
がたがた!
ミケとアンヌマリーの二人はコケました。
おつきあいいただき、ありがとうございます。