続ダンボールの中の世界
この物語は【ダンボールの中の世界】の続編です。読んでいない読者は是非読んでください。
箱の生活が始まってからはじめての朝がやってきた。
ポケーと光輝く球体に欠伸を向けながら、僕は一点を見た。そこにあるのは飼い主が箱に入れてくれたミルクの入れられた皿である。
お腹のすいた僕は皿に近づき、有るのか無いのか分からないミルクの残りをペロペロとなめ回す。
少しだけ水滴がついていたことで水分を補給できた僕は箱の中でも特に日当たりの良い場所に寝転がる。
ポケーと欠伸をかくと、僕はすやすやと眠った。
寝ている僕は夢を見た。お母さんが死ぬ前の飼い主とのひとときだ。僕はお母さんに甘え、お母さんは飼い主に甘える。飼い主はそんな僕とお母さんが可愛いのかお母さんの頭を、喉元を、背中を撫でていく。
飼い主がターゲットを僕に変えると、人差し指だけで僕を優しく撫でていく。
これは僕にとっての幸せな時間だった。優しい飼い主の手が僕をくすぐり、眠りを誘う。
うとうとしはじめた僕は、夢の世界で眠りについた。
目覚めたとき、僕はついに空腹という生物にとっての恐怖を味わうことになっていた。
助けを求めるも薄暗い路地裏に声が響くはずもなく、町の喧騒に僕の声は塗りつぶされていく。
箱の中から外に出て助けを求めたくても僕の小さな体ではよじ登ることもできない。
キュルキュルと鳴り止まない音、何でも良いからお腹のなかに食べ物をいれたい。けれど、お皿のなかに入っていたミルクは底をついていた。
時間が流れていく。1日、2日と流れていく。その間に降った雨の水を舐めながらも僕の体は徐々に細くなっていく。
幼い僕の体は骨に皮がくっついて浮き上がっていた。
この頃になると、少し遠くからお母さんの姿が瞳に写る。懐かしい姿だ。もう少ししたらお母さんの元に行ける気がする。あと少しの辛抱だ。
そんな僕に影が射した。それは何処からやって来たのか太陽を遮る一人の女の子だ。その女の子の背中には赤い箱が取り付けられていた。
じぃーと眺めるように見ていた女の子から、僕に向かって両手が動く。痩せ細った死に体に差し伸べられたのは太陽のように笑う一人の女の子だった。
その日、僕は新しい飼い主の女の子に弱々しくも鳴き声をあげた。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
次回は【ダンボールの外の世界】というタイトルの短編を書こうと思います。