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僕と彼女のリア充ライフ  作者: 一条二豆
第四章 修学旅行
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第八話 新たなる試み

 ブレーキの利かない体は、俺の意志に反してぐんぐんと加速し、雪上をすごい勢いで滑っていく。このまま木にでも激突したら、大怪我間違いなしだろう。

 後方から千堂たちの叫び声が聞こえてくる。俺を心配してくれてのことだろう。


「俺に構わず先に行け!」

「いや、お前が先に行ってるんだよ武野!」


 余裕があるのかないのか、俺は妙なコントをしてしまった。

 そうしている間にも、千堂たちとの距離はぐんぐんと開いていく。さすがにまずいと思い、俺は上体を徐々にのけぞらせながら勢いを殺していき、意を決して雪に転がり込んだ。


 二、三回転がり、体が打ちつけられる感覚がする。さすがは北海道の雪と言うべきか、体に痛みはなく、むしろ醜態を晒してしまった俺の心が痛かった。


 俺が転がりきったちょうどにカレン先生が颯爽と現れた。彼女の手を借りて、雪を払いながら起き上がる。後からゆっくりと班員がついてきて、再び全員がそろう。

 そして、気を取り直して俺たちはゆっくりとゲレンデに漕ぎ出した。不恰好にはなってしまったが、俺はこの日、ブレーキをかけられるようになろうと必死に頑張った。


 この後、十回以上雪に転がり込むはめになったのは言うまでもない。


 俺はスキー実習一日目、こけた体勢から自力で起き上がるプロになった。




「あー、疲れた…」

「下手過ぎだろお前…」


 スキー実習が終わり、俺は男子更衣室にて千堂と制服に着替えていた。

 更衣室では暖房が利いておりとてもありがたいのだが、スキーウェアについていた雪が溶けて水浸しみたいになってしまっているので、如何ともしがたい。


 そんな中で、俺は声を大にして言いたいことがあった。


「帰宅部の上に今にも倒れそうな体してるくせに、なんで運動神経高いんだ!」

「俺が高いんじゃなくてお前が低いんだよ」


 ザ・正論。異論ありません。


「結局、お前カレン先生に引っ張ってもらいながら滑ってたじゃないか。いい証拠だろ」


 千堂からの慈悲のない一言。全く以てその通りでございます。


 俺があまりに滑られなさすぎて、見かねたカレン先生が、俺に個別レッスンを行ってくれたのだ。俺がカレン先生のポールの端を両手で持ち、その向かい側を先生が持って、お互いの顔が見えるようにして滑っていくという体で覚えるレッスン。周りの目が痛かった…。


 ウェアを完全に脱ぎ、カッターシャツを着ながら千堂が続ける。


「あれ、女子しかやってもらえないみたいだぞ」

「…」


 二の句が継げなかった。俺の心のライフポイントはもうゼロだった。


「は、栄えある個別レッスンを受けられたから別にいいし、お得感あるし、けっ」

「やさぐれんなって…」


 現実から逃げるようにして、俺はズボンを取り出すべく鞄に手を突っ込んだ。しかし、鞄をいくら漁っても、その手がズボンを掴むことはなかった。


「ん?」


 疑問に思って鞄の中を見てみる。俺の額にじんわりと汗がにじんできた。

 嫌な予感を覚え、俺は鞄をひっくり返して中にはいていたものを全て出した。そして、予感通り、その中にズボンはなかった。


「ズボン、忘れた…」


 次に控える小樽観光。

 俺は異国、北海道で制服と体操服という新たなファッションで挑むことになるようだ。

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