第三話 クレープ屋
商店街の途中に、丸亀町グリーンという、小さなショッピングモールのようなものがある。三階建のモダンな建物で、開けた正方形の広場を四方で囲むように店が並んでいる。緑と茶色を基調としたつくりで、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出していて、とてもオシャレだなと俺は思っている。
店が立ち並んでいただけだった今までの風景とは変わって、開けた空間になるので、ここにくるといつも解放感を感じる。
クレープ屋は、その一階のエスカレーターの裏側にひっそりとあった。なんどかこの店でクレープを食べたことがあるが、香川ではここが一番おいしいと思う。俺がほかの店を知らなさすぎるだけかもしれないけれど。
俺と双葉はそれぞれ頼んだクレープを受け取ると、エスカレーターの表側の通りに面した場所にあるベンチに座って食べることにした。
「いやー、やっぱうまいな!」
「そうだね」
クレープを一口齧って、俺は感嘆した。クレープは普段滅多に食べないお菓子なので、その分おいしいと思える。そもそも、俺は甘党で生クリームとかチョコレートが大好きなのだ。それらの要素がぎゅっと詰まったクレープは、俺にとってはまさに夢のようなお菓子なのだ。
「う~ん、クレープうまいわ、おいしい、最高! っと、手が汚れるな…」
ただ、クレープの難点は食べにくいところだろうか。俺が不器用なだけかもしれないが、食べ終わった後、クリームやらソースやらで、いつも手がべとべとになってしまう。
そんな俺を見かねてか、双葉が鞄からなにやら取り出した。
「ティッシュ使う?」
「おお、ありがとう。さっすが女子」
俺は双葉にお礼を言って、ありがたくそのティッシュを受け取った。
女子はハンカチとかティッシュは持っていて当たり前なのだろうか。俺は持つとしてもハンカチくらいなものなのに。
そんなこんなで双葉と時折会話を交わしながらクレープを食べていると、目の前に見知った女子が通りかかった。