第十二話 友達
家の前で、中から時折聞こえてくる話し声を耳に入れながら佇んでいると、門の方からレジ袋を下げた端島が歩いてくるのが見えた。
「お前、なにしてんの?」
端島は、俺の前で立ち止まると不思議そうに聞いてきた。
「…外に出てろってさ、いろいろあって」
「ふーん?」
端島は俺の右隣に建てつけられた、カーテンで覆われて中が見えない窓を見ると、また俺の方に向き直った。
「いつ中に入るんだ?」
「わかんね。たぶん、呼んでくれると思うけど」
「…じゃ、俺も待とうかな」
どこかつっけんどんにそう言うと、端島は俺の左隣にどかっともたれかかった。
その顔は俺とは真逆の方向を向いており、その表情は見えなかった。
だけど、俺には端島の気持ちがわかった気がして、少し笑ってしまった。
「優しいな、端島は」
「は? お前のためじゃねえし。単に女子だけのとこに入りたくねえだけだから」
端島はなおもその顔をこちらに向けなかった。でも、だてに三年間一緒にいるわけじゃない。
「出たな、ツンデレ」
「ツンデレじゃねえって言ってんだろ!」
ようやく振り向いた端島に、俺は思いっきりどつかれた。
かなり痛かったけど、少しは気が晴れた気がした。