プロローグ ニートが始める異世界生活
初めまして、柊くろはです。初めての作品となるので主人公の苗字は自分と合わせてみようと思い、こんな感じになりました。至らない点も多いことかと思いますが、どうかよろしくお願いします!
「……さ……、……て……。……さん……、……きて……。……もう、そろそろ起きてください、集さんっ!」
突然怒鳴られて俺は飛び起き、そして驚いた。家で寝ていたはずが、驚くほど綺麗な神殿のような場所に寝ており、さらに美少女が俺を揺さぶっていたのだから。
「ふぅ、ようやく起きてくれましたか」
俺と同じくらいの年齢に見える少女は、やれやれと困り顔だ。
「んっと……アンタは?」
「あっ、申し遅れました。私はイリス、女神です」
今とんでもないことが聞こえたような気がしたが、きっと自称とかそんなところだろう。とりあえず流しておくことにした。
「そうか。俺は柊木集、16歳。えーっと……学校は入ってはいたけど、行かずに引きこもってたから学生というよりはニートってところかな。うぜえからもう関わんな、以上」
「はい、知っています。貴方の名前も、年齢も、ニートであることも。そして……そうやって人と関わりたがらない理由も……」
そう言って女神を名乗る少女、イリスは悲しそうな顔で俯いた。どうしてこの子が悲しむ必要があるのだろうか。
「でも、知ってるって言って女神だと信じてもらいたいのかもしれないが、そんなんじゃ女神だって信じることはできないな」
「家族は両親に妹。名前は父が和仁、母が美波、妹が遥……でしたね?」
俺は驚きに目を見張った。コイツは本当に女神だっていうのか。
「ええ、さっきも言った通り女神ですよ? もっとも、貴方は信じていなかったようですが」
「アンタ、心まで読めるのか。分かったよ、信じる信じる。で、その女神様がただのニートになんの用なわけ?」
微笑み俺を見つめる少女をこれ以上疑うことができなかった。家族の名前に心まで読めるときた、ひとまず信じる他ないだろう。
「すみません、こうでもしないと信じてもらえないと思って……。意識しない限りは心を読むことはできないので安心してくださいね? そして、用というのは……非常に申し上げにくいのですが、今日から貴方には更生するまでの間、異世界に行ってもらいます」
しばらく間が空き……
「はぁあああああ──⁉︎」
俺は、思いっきり叫んだ。
いきなり女神に会い、さらに今日から異世界に行けなど、いくらなんでも滅茶苦茶すぎる。ただでさえ混乱していた頭が悲鳴をあげる。しかも今、更生とか言ったような気がする。なんかもう嫌な予感しかしない、帰りたい。
「すみません、私も反対したのですがそのように決まってしまって……。でも、安心してください。柊木さん以外のニートも全て異世界に送り出されていますし、なにより私も同行しますので。」
「えっ……?なに、女神様も来てくれるの?俺と一緒に?」
「はい。天使が同行する予定だったのですが、こちらの数え間違いで同行する天使が足りなくなってしまったので、6人いる女神も全員出ることになりまして……」
女神様まで同行してくれるのは予想外だ。こんな美少女と共に過ごせるのならどんな苦境も乗り越えられるに違いない。
「いよっしゃあ! 女神様、俺行くよ。世界の果てだろうが異世界だろうが地獄だろうが──どこへでも!」
これにはさすがに苦笑いの女神様だが、引いているわけではなさそうだ。
「ふふっ、そう言ってもらえて何よりです。向こうの世界は魔王軍と王国軍の戦いなどもあったりするので、勇者になるも良し、ごく普通の商人や農家になるも良し。向こうでの生活を楽しみましょう! では、いきますよ?」
「あ、ちょっと待ってくれ!」
「……? どうかしましたか?」
俺の声に不思議そうに首を傾げる女神様。
「向こうに行く前に聞き忘れていたことがあった」
「なんでしょうか?」
「今日のパンツは何色ですか?」
「今日は水色です……って何聞いてるんですか⁉︎ もうっ! いきますよ!」
どうやらさらっと聞いてしまえば答えてくれるらしい。そして、女神イリスがパチンッと指を鳴らすと眩い光に包まれた。
目を開けるとそこは──異世界だった。